スノボ・ハーフパイプ期待の星 15歳の道産子・工藤璃星が12月6日にW杯デビュー
演技構成はシニアでもトップクラス
今季のスノーボードハーフパイプW杯が12月6日に中国・シークレットガーデン大会で開幕する。今季は2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪へ向けたプレシーズン。今年2月のユース五輪で、史上最年少金メダリストに輝いた札幌出身の工藤璃星(15、TOKIOインカラミ)が、今季からW杯出場への年齢制限が解け、デビュー戦を迎える。演技構成はシニアでもトップクラス。初陣初Vも視野に入る。
年齢制限クリアしやっと「ワールド」に
スノーボード界期待の星が、いよいよ世界最高峰の舞台に飛び出す。2022-23シーズンの全日本選手権で初優勝するなど、23-24シーズンの全日本スキー連盟(SAJ)が設定したW杯派遣基準はクリアしていたが、年齢だけは自分でもどうにもできなかった。
「やっとワールド(杯)に出られるようになった。成績を残してオリンピックに行くのが夢だったので、ちょっと近づいてきた。オリンピックに出るために、来週ぐらいから本気でやってかないといけないから、緊張感はちょっとだけある。ワールド(杯)に対しての緊張はないけど、オリンピックに出るためにここで成績を残さなきゃいけない、というのは、少し感じてます」。見据える先は、1年3カ月後の大舞台だ。
実戦でまだ見せていないフロント1080(動画あり)
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唯一無二のルーティンを追い求めている。26日までの19日間、オーストリアで行われたSAJの合宿で、多い日に1日60本滑り込んで最終調整。現時点で思い描く決勝のルーティンは、フロント1080→キャブ1080→フロント900→バック540→フロント720を予定していたが、フロント1080はまだ実戦未投入だ。「キャブ・テン(1080)はあるんですけど、一生懸命回って着地した感じだった。テン、テンをつなげられたこともなかったけど、今回のオーストリアで初めてできて、ちょっと自信をつけられた。どこかでちゃんと決められれば」。全て決まれば表彰台は確実。「表彰台よりも優勝です」と目を輝かせた。
【動画】オーストリア合宿で成功したフロント1080→キャブ1080(本人提供)
選手生命脅かされる大ケガ乗り越え
昨年5月の米国遠征中に右足大腿(だいたい)骨を骨折し、腓骨(ひこつ)神経も断裂。同10月に神経をつなぎ合わせる再手術を行い、完治しないままシーズンを迎えたが、ユース五輪で史上最年少金メダルを獲得。2連覇に挑んだ全日本選手権でも3位に入るなど、しっかりと結果を残した。オフには「完全に治ってないので、今まで以上にフィジカルのトレーニングを入れた。学校に行って病院にリハビリしに行ってフィジカルトレーニングとか、結構ハードでめっちゃ疲れるような日々でした。スノーボードはブーツを履いてれば気にならなく練習できてはいるけど、日常が結構辛いです。空港とか歩いていたら、1人でずっこけたりするから、恥ずかしくて」。一時は選手生命も脅かされる大ケガだったが、競技への情熱が体を突き動かしている。
北京五輪金メダルの平野歩夢と同じ所属先に
W杯出場解禁に合わせて、5月には2022年北京五輪金メダルの平野歩夢(26)と同じ所属先に決まるなど、期待度は高い。さらに札幌北白石中を卒業する来春には、平野の母校でもある新潟・開志国際高の運営法人が来春開校する通信制の開始創造高へ進学する予定。9歳の冬、テレビで見た平昌五輪の記憶が鮮明に刻まれている。「女子とか男子とかも全部見て『自分もここに立って、目立ちたい』って思って。そこから、より気持ちが強くなった」。中でも「最後、ショーン・ホワイトと歩夢くんが、どっち?どっち?ってなってる時が、一番印象に残ってる。自分もドキドキしてた。ほんとにどっちか分からなかったから面白かったです。録画して何回も見た」。今度は自らがその舞台に立つための挑戦が、いよいよ幕を開ける。
■プロフィール 工藤 璃星(くどう・りせ) 2009年8月28日、札幌市生まれ。北京五輪男子ハーフパイプ金メダルの平野歩夢らを指導していた父・佳人さん(56)の影響で、3歳で板に乗る。19年2月の全国ジュニア選手権ハーフパイプ小学3年の部で初優勝。20-21シーズン、女子最年少となる11歳で高校生以下のナショナルチームに選ばれる。23年3月の全日本選手権で初出場初優勝。24年2月のユース五輪で史上最年少金メダルを獲得。憧れの選手は18年平昌、22年北京五輪金メダルのクロエ・キム(23)。スポンサーはYONEX、FLUX、SMITHなど。スタンスはレギュラー。身長152センチ。家族は両親と妹。