【検証・札幌J2降格②】連係構築の遅れと点取り屋不在が招いたミシャ政権ワーストの得点数
第2回は「得点力不足」
北海道コンサドーレ札幌が9シーズンぶりのJ2降格となった要因を検証する連載の第2回は、得点力不足に泣かされたチームの攻撃面について取り上げる。
今シーズンの得点数は第37節終了時点でリーグワースト3位タイの42得点。1試合の平均得点は1.14点だった。もちろんミハイロ・ペトロヴィッチ監督(67)が指揮を執ったシーズンの中ではワーストで、前任者である四方田修平監督(51、現横浜FC監督)が守備戦術をベースに戦っていた17年の1試合平均1.15点(34試合39得点)よりも下回る数値となっている。
昨季はリーグ3位の56得点、1試合平均はミシャ政権下で最多の1.65点だったが、今季はマイナス0.51点と大幅に減少した。その原因として考えられるのが、攻撃面での連係構築に時間がかかったこと、そして攻撃の柱となるストライカーの不在だ。
主力選手の流失
まず攻撃面での連係構築だが、これには前回触れた負傷者の多発が大きく絡んでいる。昨夏にMF金子拓郎(27、現ベルギー1部コルトレイク)、昨季終了後にMFルーカス・フェルナンデス(30、現C大阪)、FW小柏剛(26、現FC東京)という攻撃の主力選手が抜けたチームにとって、新加入選手たちの戦術理解を深め、札幌のサッカーには欠かせない複数の選手が連動する戦い方を全体に浸透させることが必要不可欠だった。
近藤の負傷で浅野が右WBでプレー
だが、チームに負傷者が続出したこともあって戦術の浸透は思うように進まなかった。金子、ルーカスが抜けた右ウイングバック(WB)の後釜として期待されたMF近藤友喜(23)は、キャンプこそ一度も離脱することなく乗りきったものの、開幕戦で負傷して約1カ月間の戦線離脱。復帰後も本職ではない左サイドで起用される試合もあるなど、右WBの定位置確保まで時間を要してしまった。
その間、本来であればシャドーとして起用したかった昨季チームトップ12得点のMF浅野雄也(27)を右WBに起用せざるを得ず、ゴール付近のポジションから遠ざかったために今季初得点が生まれたのは開幕から約2カ月が過ぎた4月のことだった。
ドリブル突破できる選手の不在
ミシャサッカーで重要なポイントの一つは、相手陣内のドリブルで数的優位をつくること。1対1で仕掛けて突破することで相手のマークをずらしていき、ギャップをつくって生じたスペースを活用しながら、細かくパスを繋いで崩していく。昨季まではよく見ることができた光景だが、今季序盤戦はドリブルではがせる選手がピッチ上にいなかった。
守備の態勢を整えた相手の前で怖さを感じさせない〝各駅停車〟のパスが繰り返され、結局シュートまで行けずにボールを奪われるというシーンが何度も見られた。近藤が右WBのレギュラーに定着したことにより、ようやく相手をドリブルではがせる選手が出てきたが、入れ替わるように、浅野や2年前のチーム得点王・MF青木亮太(28)、昨季7得点のMFスパチョーク(26)らが相次いで負傷離脱。フィニッシャーが不在となったチームは、得点力を上げることができないまま長いトンネルの中でもがき苦しみ続けた。
今季の開幕スタメンは0トップ ストライカータイプの4選手は…
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そしてもう一つの原因は、チームを代表するようなストライカータイプの選手が現れなかったことだろう。小柏がチームを去ったことに伴い、札幌は19年から20年途中まで在籍していたFW鈴木武蔵(30)を期限付き移籍で獲得。加入3年目を迎えたFW金健熙(キム・ゴンヒ、29)、2年目の飛躍が期待されたFW大森真吾(23、現北九州)、札幌U-18から昇格のFW出間思努(19)と、FW登録ながら左サイドを主戦場とするFW菅大輝(26)を除けば、センターフォワードタイプは4選手でシーズンをスタートさせた。
しかし、金健熙が前年から続いたグロインペインの影響でキャンプの全期間を別メニューで調整。攻撃の軸として期待された鈴木はキャンプ中に負傷し、出間も開幕1カ月前の練習試合で肉離れ。残った大森は練習試合でゴールを量産していたが、開幕直前の練習試合で相手選手と接触して負傷。福岡との開幕戦は先発メンバー表に「FW」の文字が載ることがなかった。
武蔵は開幕から出場18試合無得点
19年のチーム得点王だった鈴木の今シーズンは苦しみの多いものとなり、開幕から出場18試合連続で無得点。札幌復帰後のリーグ初得点は7月下旬の第24節・浦和戦まで待たなければいけなかった。
13得点をマークした19年の鈴木はシュートの成功率が12.9%だった。海外へ移籍した20年は4試合出場で5得点するなど成功率は驚異の21.7%というものだったが、今季は第37節終了時点で9.2%という数字にとどまっている。
前回在籍時のようにFWアンデルソン・ロペス(31、現横浜M)というもう一人の点取り屋や、効果的なパスを配球し続けたMFチャナティップ(31、現タイ1部BGパトゥム)に代わる選手がいなかったことも大きい。チーム事情で1トップとしてポスト役を期待され、持ち味である相手DFの裏へ抜ける動きが多くなかったという背景もあるが、決定的なシーンでシュートミスをする場面も多く、思うような輝きを放てなかった。
夏の移籍で3人のFWが加入も
4人だったFW陣に、夏の移籍市場でジョルディ・サンチェス(30)、アマドゥ・バカヨコ(28)、白井陽斗(25)という即戦力FWが加わったが、彼らも大きくチームの流れを変えるまでには至らなかった。中でも、活躍への期待が大きかった分、失望感を強くさせてしまったのが2人の外国人だろう。
ポーランドリーグで得点を量産していたサンチェスは、190センチの恵まれた体格で1トップとしての活躍が期待されたが、チーム戦術への順応に苦しみ、夏場に行われていた紅白戦では、主力組はおろか、サブ組にも入れないという日々が続いていた。
バカヨコも190センチながら足の速さにも自信があり、三上大勝代表取締役GM(53)からはカウンターの際に大きな威力を発揮してくれると期待されていた。サンチェスと共に途中投入された10月のアウェーG大阪戦では、1点ビハインドで前掛かりになる相手に対して何度もカウンターのチャンスがありながらゴールに向かう積極性を見せられず、シュートは互いに0本だった。それ以降、2人は公式戦のベンチ入りからも遠ざかり、J1残留へ向けての補強としては失敗に終わった。
FW登録選手の得点が少なかった
開幕から23試合連続でFW登録選手の得点が「0」という不名誉な記録もあった。FW陣が奪った得点の合計は37試合でわずか8得点(菅の得点除く)。「得点=FW」という時代ではないにせよ、点取り屋不在が札幌の根幹である攻撃的なサッカーの機能不全に陥った原因の一つとなったことは間違いないはずだ。《第3回に続く》