〝もう一つの選抜甲子園〟来年5月5日開催へ 東西の選抜チームで1試合限定の交流試合
道内から2選手を推薦
日本高校野球連盟は6日、来年5月5日に阪神甲子園球場で軟式選抜大会を行うことを発表した。大会名は「全国高校軟式野球選手権大会70周年記念 春の軟式交流大会 in甲子園」。1試合限定のため、全国の加盟校から東西の選抜チームを結成して行われる。歴史的な大会に北海道高野連からは、秋季全道大会優勝の登別明日・尾崎佑成主将(2年)と今夏の選手権代表の北海道科学大高・白浜琢磨主将(2年)が推薦された。
昨夏全国4強の登別明日・尾崎主将「憧れの場所」
〝もう一つの選抜甲子園〟がついに実現する。2021年からは全国高校女子野球選手権の決勝が甲子園で開催されるようになったが、軟式高校野球の公式戦が甲子園で行われるのは史上初だ。選抜チームはそれぞれ選手25人に、監督、コーチら4人と記録員の合計30人。昨夏の全国高校軟式選手権4強入りに正捕手として貢献した登別明日の尾崎主将は、「まだ甲子園で自分が野球できるのが実感なくて、すごいワクワクと、ちょっと緊張もありながら。甲子園はテレビで見たことしかない、高校球児の憧れの場所」。
「心からうれしかった」北海道科学大高の白浜主将
北海道科学大高の白浜主将も「小さい時から野球をやってて、テレビでよく見る場所でしたし、実際に選ばれたことを聞いた時は、本当に心からうれしかったです。逆にちょっとプレッシャーと言いますか、自分がどうできるのかなと。それが今のモチベーションになって、冬のトレーニングは頑張れます。本当に今は楽しみでしかない」と甲子園の土を踏む日を思い描く。
以前から開催を望む声
これまで軟式の聖地は1981年から夏の選手権が開催されている兵庫県の明石トーカロ球場だったが、以前から関東の指導者を中心に選抜甲子園のように春の全国大会開催を望む声があがっていた。
登別明日の葛西健太郎監督(51)は、「今まで夏一本の全国大会だった。たった1試合の交流戦ですけど、もう一つの全国大会が開催されることによって秋の結果が春につながる。秋が終わって、夏一本は結構きつい。秋にどれだけ結果を出しても夏まで10カ月。軟式も硬式のリズムに追い付いてきた。冬のモチベーションにつながるので、それを目指す子供たちが増えてくれれば」と大歓迎だ。
硬式で選抜甲子園優勝の健大高崎・石垣とは同郷の尾崎
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尾崎主将は登別出身。小学時代は幌別ベアーズの内野手だった。今春に行われた硬式の選抜甲子園で優勝した健大高崎(群馬)の道産子右腕・石垣元気(2年)とは同郷で、何度も対戦した経験がある。「小学校の頃からちょっと飛び抜けてたので、甲子園での活躍はやっぱりさすがだなと思ってたし、自分も少しでも追いつけるように頑張っていきたいと思ってました」。かつての球友と活躍の場は分かれたが、共に全国制覇という目標に情熱を持っていることに変わりはない。
1点の重み違う 過去に延長五十回も
軟式野球の魅力について尾崎主将は「1点の重みっていうのが特に硬式より強いスポーツ」と話す。2014年に行われた全国高校軟式選手権の準決勝では、中京(岐阜)と崇徳(広島)が対戦して0-0の展開が続き、4日間合計で延長五十回を戦ったことがある。初日から延長十五回のサスペンデットゲーム(一時停止試合)を繰り返し、4日目の延長五十回に中京が3点を取って勝利した。この試合が現在の高校野球で採用されている「投手の1週間500球までという球数制限」や「延長タイブレーク」の設置へとつながった。
軟式でも全国大会に行けるんだ
北海道科学大高の白浜主将は当別出身。「高校で絶対野球をやりたいと思っていたけど、いろいろ上下関係とか、坊主とかもそうですし、硬式にボールが変わるっていうのも怖いなって。高校に軟式(の部)があるのは知らなかったけど、新聞で科学大が全国大会に行ったって、全道優勝したというのを見て『全国大会に行けるんだ』って思って、ここしかない」と進学を決めた。
甲子園での経験を最後の夏につなげる
チームからはただ一人の選出だが、貴重な経験を無駄にはしないつもりだ。「周りの選手から刺激を受けて自分の実力にもつながると思うけど、それを自分だけのものにしないで、ちゃんとチームに落とし込みたい。それが自分の役目、役割。チームのためにも、この大会で勉強したい」。
甲子園といえば、試合を終えた球児がベンチ前で土を集めるシーンが定番だが、「そういうの持って帰って来ちゃうと、なんか思い出になっちゃう気もする。実際に行ったら欲しくなっちゃうのかもしれないけど、今は特に考えてない」。春はしっかりと経験することに集中し、それをチームに還元した上で最後の夏につなげる。
軟式を知ってもらうきっかけに
道内の競技人口低下に歯止めをかける―。2007年に17校が出場した夏の全道大会は、今年は6校のみ。北海道科学大高の大友宏記監督(41)は「先代の監督が頑張ってこられて、秋の大会をつくってもらった。春の大会もないので、秋が本気で勝負できる大会になった。(選手の)モチベーションも違う。何より高校の軟式を世の中の人に知ってもらうきっかけにもなる。それが一番」と期待を込める。
東日本選抜のコーチとして帯同する予定の登別明日・葛西監督も「5年後、10年後、甲子園ではないかもしれないけど、選抜大会につながる第一歩」。軟式関係者の思いを集結し、何としても大成功に導く。