■12月4日、札幌・宮の沢白い恋人サッカー場
北海道コンサドーレ札幌を運営する株式会社コンサドーレの三上大勝代表取締役GM(53)が、先月30日に決まったJ2降格、この日正式発表されたミハイロ・ペトロヴィッチ監督(67)の退任について、報道陣の取材に応じた。一問一答は以下のとおり
―J2降格という結果を率直にどのように受け止めているか
数多くのサポートを今シーズンもいただき、かつ夏のタイミングで、自分たちの立ち位置からさらなる支援というものをパートナー企業などからいただき、それを追い風に道民、市民、そしてサポーターがさらに力を貸してくれました。にもかかわらず、最終的にJ1残留という最低限の目標を達成することができなかったことに、非常に大きな責任を感じています。
―降格決定後、選手やスタッフ、ペトロヴィッチ監督と何か会話したか
残念な結果になりましたが、降格が決まった時点で残り2試合ありました。その中で「自分たちが最低限やらなければいけないことを、やっていかなければいけない」ということ、それが支援していただいた方々に唯一僕らがお返しできることであり、結果的に今後の自分たちにもそれが生きる、そしてそれがひいてはクラブの力になっていく、その礎になるということを肝に銘じて、残り2試合、しっかりとやれることをやっていこうと、話をさせてもらいました。
その後、残念ながら広島戦は難しいゲームになり、結果も出なかったということを含めて、改めて残り1試合に対する思い、そういったものは出していこうということで。分かりやすく言うと、最後、勝敗というものは必ずあるでしょうけども、勝敗うんぬん抜きに、ミシャの、札幌のサッカー、これをしっかり表現する。これが最低限自分たちがやらなければいけないことで、その上で、J1というステージの中で勝って、爪痕をしっかり残して、次の自分たちのステップに生かしていこうという話を、その後にもしました。
―9シーズンぶりのJ2ということで、かなりショックを受けているサポーターもいると思う。一方で(広島戦で掲出された)横断幕に「この情熱は揺るがない」という言葉もあるなど、これからも応援していこうという人も多い。改めてサポーターにメッセージがあれば
残念ながら来季はJ2ということになりましたが、ここまでクラブが何とかJ1で安定して戦い、ここまでクラブが大きくなってきた要因に、サポーターの力が非常に大きかったと本当に思っています。
そして今シーズンも、どのような状況の中でも信じて、自分たちが何ができるかということを、皆さん自身が考えて、行動に起こしてくれた。それはクラブとして大きな力だと思っていますし、非常に感謝しています。一方で、今のクラブの経営的な部分やチーム編成というものは、すごく難しいと僕らは認識しています。
だからこそ、引き続きサポーターの皆さんの支援をいただきながら、明日以降も進んでいかなければいけない。支援をいただくためにも、クラブとしては透明性を持って状況を説明し、そして理解していただき、皆さん方を少しでも仲間として取り込んでいき、難しいクラブ経営や来季の戦いなどを乗り越えていくことを一番に考えてやっていきたいと思っています。サポーターには率直に、その思いを伝えさせていただければと思っています。
―先ほどペトロヴィッチ監督が今シーズン限りで退任するというリリースが出た。札幌に残してきたものに対する思い、そして今後の関わりなどについて
リリースの文面でもお伝えしましたが、そもそも7年前に、ミシャに是非このチームを率いてほしいという思いがあったのは、このクラブが北海道にとって、より存在意義があり、かつチームとしても道民、市民、サポーターにさらに楽しんでもらえる内容で、実際にピッチに立つ選手が成長し、何よりもサッカーを楽しむことを文化として根付かせたい、そういったことで、7年前にミシャに話をさせてもらいました。
この7年を通して、ミシャから我々クラブに、そういうものをしっかり与えてくれたことは、すごく大きなものだと思っています。
リリースでもお話ししましたが、トップチームだけではなく、アカデミーのフットボールの今のスタイルも含めて、すごく大きな貢献があったと思っています。なので、ピッチ上のスタイルを、しっかり継承し、さらに自分たちなりのプラスアルファを出していく。そういったベースをミシャがつくってくれたことはすごく大きいです。
一方で、ピッチ外のところでは、本当に人として、選手、スタッフだけではなく、フロントを含めた社員に対しても、常にクラブとしてどういう方向で行くべきなのか、それこそ父親のように全員に接してくれて、人としての在り方、時には厳しいプロとしての在り方、そういったものを背中を通して見せていただいた。この7年間でフロント、選手、そしてスタッフ、数多くの関係者が彼の背中を見て、感じたものがあると思っていますし、それを残してくれたことは、本当にミシャのもう1つの大きなクラブへの貢献じゃないかと思っています。
―新監督についての報道もある中で、ペトロヴィッチ監督が残した札幌らしさを、新監督も踏襲したスタイルをつくっていくのか、それとも新監督のスタイルにペトロヴィッチ監督のエッセンスを入れていくのか。戦術的な方向性は
まずはどのような監督になるのかということで、我々クラブは複数の候補者と、ここまで面談などさせてもらいました。
共通して言えるのは、まずミシャと築いてきた攻撃的なスタイル、思考、思想を揺るぎなく持ち続けられる方、ということが一番大きな条件です。その上で、ミシャがここまでやってくれたスタイルに、今後クラブとしてさらに競争ということと、さらなる緻密さというものを付け加えていきたいと思っています。
なので、ミシャの築いてくれた攻撃的な要素、これをしっかり踏襲しながら、かつ競争と緻密さというものをプラスアルファできるような方に、次を任せたいと思っています。
―サポーターが気になっているのは、どれだけの選手が残るのか、J2を戦い抜く上で、補強を含め、どういったチーム編成で、前述の方針に持っていくのかということ
ひとつは、1年でJ1に復帰することを、最優先に考えなければいけないと思っています。
一方で、クラブ経営という観点で言うと、本当に簡単な状況ではないと。この10年投資を繰り返しながら、その芽を刈っていくような中で、クラブのサイズを大きくしていこうというスタンスでやってきみしたが、残念ながら2、3年前から、その刈り取ることが、そこまでできていない。残念ながらコロナがあって、そこからいろいろなことを考えながらやってきましたけれども。なので、一方ではそのクラブ経営という難しさがあります。
ただ、1年でJ1復帰することを一番に考えながら、クラブ経営に向けたこともやっていくことが、すごく重要だと今は思っています。
―2年後にシーズン移行を控えているため、来年は勝負の1年になる。クラブ、チームとして目指していることは
クラブというものは、今までどおり北海道、札幌があってのクラブだと思っています。なので、我々としては、この状況下でお話しするのは何かおかしいかもしれないですけど、あくまでもプロサッカーチームを運営する〝だけ〟の会社、クラブではないということは、変わらずに持っていきたいと思っています。
その上で、我々はスポーツ、フットボール、サッカーを通して地域に貢献したい。じゃあ貢献するために何ができるのかと言ったら、魅力的なフットボールを見せていくことと、やはり国内最高峰と言われるリーグで戦っていくことが、地域の皆様方へ国内最高のスポーツを見る機会や、いろいろなものに寄与できるのではないかと思っています。そういった意味で、北海道に貢献していくことを大前提に、だからこそ国内最高峰であるJ1リーグにこだわっていかなければいけない。そのステージに戻れるように、今よりひとつ、ふたつ強くなって戻ってきたい。そう思っています。
―最後の柏戦が終わり、ペトロヴィッチ監督にどんな言葉をかけてあげられると今思っているのか
クラブとしては、まずは本当にありがとう、と。今回残念な結果になりましたけど、本当にありがとうという言葉しか、今の時点では思いつかないです。
―一緒に過ごした7年間は、三上さんにとってどんな時間だったか
この7年間ミシャと過ごす中で、フットボールの魅力と、選手はいくつになっても成長することが、本当に可能なんだということ、フットボールというものが地域にいろいろな影響を与えるんだということを、改めて感じさせてもらった。本当に人というものがすごく大切なんだという、原点を改めて気づかせてもらったことが、すごく強く印象に残っています。
―今シーズン、どんなところが難しくて、降格につながったと思っているか
まずは大前提として、非常に難しいシーズンになる、という覚悟を持っていました。クラブ経営という観点で考えたときに、この先もこのクラブは、どういう形であれ、絶対存在させていかなければいけないという中で、将来に向けて、できる限りのことをチームに投資してやっていこう、という方針でやっていました。
半面、昨年まで活躍した中心選手を、何とか引き留めようと思いましたが、もう一方ではクラブの経営的な観点、そういった判断から、移籍も容認せざるを得ない。その上で今季を戦う時点で、厳しいシーズンになることは、すごく感じていました。
できる限りの対応、対策、そしてリスク管理をイメージしながら、現場とも共有した上でシーズンをスタートしましたが、残念ながらさらにケガ人の多さが重なり、開幕から自分たちが思うフットボールのスタイルを出すこと、結果を出すことができなかった。これが、残念ながら大きな降格の原因のひとつになってしまった、とクラブとして感じています。
―三上さんは来シーズンも同じ立場でチームを率いるのか
自分としては、責任の取り方を、当然自分の中で持っています。
ただ、自分自身の立場で、例えば株主の方やパートナー企業の方にお伝えする中で、皆さんがどう判断するのか。責任の取り方として、辞める、もしくは続けるというのが、たぶん大きな選択肢だと思いますが、僕がどう考えているかは、今は申し訳ないですがお話しできません。僕自身の考えは、今後皆さんにお伝えしていこうと思っています。
それを決められるのは株主の方や、パートナー企業の方なのではないかと思っています。
―当初は今季の黒字化という目標を掲げていたが、現在の決算見通しは
まだ何とも言えませんが、方向性的には、今お話があったとおり、何とか今年黒字を必達する中でのJ1残留ということで進めてきました。
そういう形で進めながら、夏のタイミングで、残念ながら当時のその立ち位置などから、やはり優先すべきこととして、赤字を出すことをなるべくしない中で、まずはJ1残留にプライオリティーを置くべきだと。
言葉を換えると、絶対黒字から、それは目標に変えつつ、赤字覚悟でもJ1残留に向けてやっていくことに方針転換をしました。
その上で、パートナー企業に協力してもらいながら、補強だとか、または選手がさらにやる気を起こすような、モチベーションにつながる要素にコスト投資をしたが、残念ながら結果は出ませんでした。そういった形で行っているので、最終的には若干の赤字になるのではないかと現時点では思っています。
―1年でのJ1復帰を目指していく中で、来季の強化費をどのように想定しているか
今、様々なシミュレーションをしている中で、複数パターンがあります。基本的に今季のベースとなる選手を維持しながら、継続したサッカーのスタイルで戦っていきたいと思っていますし、それがJ1に1年で返り咲く大きな要因になると思っています。この複数パターンの中から、どのような形でやっていくのかを、経営陣含め、今いろいろと相談している中で、状況に合わせた最大のチームづくりをやっていきたいと思っています。
―ペトロヴィッチ監督との7年間で思い出に残っていること、札幌に残してくれたことは
ピッチの中で言うと、本当にサッカーって楽しいよね、どんな立場でもサッカーができることに幸せを感じなければいけないよね、ということは常に言っていただいていて。その裏にあるのは、勝手な僕の想像ですけど、ミシャ自身が若い頃、国内での戦争とか、そういった環境を経験し、サッカーができる本当の幸せを、誰よりも感じている1人なのだと思っていて。
だからこそ、その言葉はすごく響きましたし、奥深いと思っていたので、その思いは選手にも伝えていたし、ただ単に「サッカーって楽しいよね」という言葉だけじゃないよ、ということを、僕らは受け止めていた。そういったものはすごく大きなものだということと、やはりどんなときでも自分の哲学というものを曲げない。
結果として正解だった、不正解だったという、結果が出る世界に我々は生きていますが、だからといって自分のフィロソフィーを曲げることなくやっていく、その強さの大切さを本当に学べたな、というのがふたつ目にありました。
―ペトロヴィッチ監督との契約を今季限りとした理由は
先ほどもお伝えしたように、まずクラブに攻撃的なサッカーを含めたものを根付かせることが、ミシャに対する大きな期待のひとつとしてありました。
おかげさまで、今シーズンまでにようやくアカデミーにしても、トップと類似するスタイル、指導方法、そういったものを落とし込むことができたという手応えがあったのが、ひとつ大きなものです。
もうひとつは、このスタイルから次なるステップにクラブが進むためにも、ミシャという本当に偉大な、尊敬する指導者からクラブは一旦卒業し、引き続きそれをベースにしながら、先ほど言ったような競争だとか、緻密さを付け加えていく段階に入ったのではないのかというところから、今シーズンまでは、約束通りというか計画通りにミシャにお願いした中で、いずれにせよ来シーズンからは、別な指導者を据えて、クラブとしてまた成長していきたいと、判断したという状況です。
―ペトロヴィッチ監督が契約満了となるのは、今季の成績が良くなかったからという意味ではない
はい、そうですね。クラブとしては、今シーズンが始まる前から、それもひとつ、一番大きな可能性あることなのではないか、というシミュレーションをした上で、スタートはしていました。
―先日、次の監督については数日以内に決めるという話をしていた
今クラブとして言えることは、数日前まで数人の候補者がいたが、一本化した状況です。
―先ほど「競争と緻密さ」という話をしていたが、緻密さとは具体的にどういうものを求めているのか
これはミシャ監督が足りなかったとか、悪かったということではなく、ミシャに求めていたのは攻撃的な部分、そのマインド、やり方を含めたものをお願いしていましたし、その通りやってくれていました。それを相手チームがある中でも、表現できるところまで来たと思っています。
ただ、継続してその形に持っていくところで言うと、リスク管理と言われる立ち位置、他の選手の攻撃に関わっていない選手の立ち位置や、逆にカウンターで行くときの成功率を上げるために、どういった立ち位置が必要なのかとか、そういったフットボールにおける部分での緻密さということで、僕は今表現させてもらいました。そういったものがもう1つ約束事として、この攻撃的なものがベースにありつつも、そういう約束事がもう5つぐらいポイントとしてあると。
この攻撃力をさらに生かすことができ、数字的に得点数は大きく変わらなくても、失点数が大きく変化し、結果勝ち点3、もっと言うのであれば、皆さん方に見せていきたいと思うフットボールのスタイルにも近づいていけるんじゃないか、という思いで、そのように考えています。
―その面というのは、新しい監督との面談の中で、三上さんの方から伝えているのか
はい。5項目、監督にクラブとして考えている諸条件があるので、複数の監督にそれらを全て当てさせてもらい、それぞれの指導者の考え方を聞いてきて、これは、という方に、先ほどお伝えしたように、先日一本化しました。
―J2で戦う来シーズンも、ホームゲームは全て札幌ドームで行うのか
基本的にはその方向でクラブとしては考えています。
―「基本的には」ということは、もしかしたら一部は他会場で、と考えているのか
例えばルヴァン杯という大会は、今シーズンから変わったわけですが、札幌ドームがどうこうではなく、元々我々クラブとしては北海道にあるクラブという認識でいるので、できる限り札幌以外の地方でも開催できないのかというのは、常に考えさせてもらっています。
ただ、残念ながらリーグ戦の規定を考えると、道内には現時点で札幌ドームしかないという中で、もしルヴァンとか、そういった大会で多少そういった規制緩和があるなら、地方開催なども、クラブとして検討していきたい思いは常に持っています。そのため、今は「基本的には」という言葉でお答えしました。