ファイターズ
2024/12/08 18:15

大渕スカウト部長の〝名物〟新人選手紹介全文

新入団選手の紹介をする大渕スカウト部長=撮影・桜田史宏

真剣に、かつユーモア交えて説明

 日本ハムの大渕隆GM補佐兼スカウト部長が8日、エスコンフィールド北海道で行われた「2024年度 新入団選手ウエルカムイベント」で、毎年恒例の新人全選手紹介を行った。真剣に、ときにユーモアやエピソードも交えながら、選手のプレースタイルや人柄をファンに説明。自信を持ってプロの舞台に送り出す8人に、エールを送った。全文は以下の通り。


「われわれスカウトが、1年間スカウティングをして獲得した新しい選手たちをご紹介します」

フォトセッションに応じる(前列左から)浅利、柴田、藤田琉、清水大、(後列左から)川勝、山縣、山城、渋谷

 

野球の申し子かもしれない

ドラフト1位、柴田獅子、投手、野手、福岡大学付属大濠高校。一言で言えば、彼は野球の申し子なのかもしれません。投げては、バランスの良いフォームから繰り出す正確無比な投球は、スケール感だけでなく美しささえ感じます。一方、打撃は荒々しく、常に本塁打を狙う大胆なスイングは野性的かつ本能的です。慣れない守備も柔軟にこなす能力もあり、将来は先発ローテーションからショートのレギュラーまでが見えてきます。これまで、大谷2世、二刀流などと周囲からは騒がれてきましたが、われわれにはむしろ、柴田獅子という新しいタイプの唯一無二の活躍を期待してしまう選手です。ドラフト会議の入札2回目。テーブルで私は、『おそらくソフトバンクとの一騎打ちになりますよ』と言うと、それまでくじ引きは絶対しないと断言していた新庄監督が突然、『柴田くんなら俺が行く』と立ち上がりました。結果はこの通りで、人生は人との縁だなと痛感します。縁と言えば、西鉄ライオンズ好きなおじいさんからいただいた名前は、獅子と書いてレオ。近い将来、背番号を変える活躍をしたあかつきには、レオと改名しておじいさんに見せるのも良いかもしれません。そして、獅子は伝説上の生き物です。どうぞファイターズの伝説の選手となれるよう、素晴らしい活躍を期待しています。頑張ってください」

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令和のシンデレラボーイ

ドラフト2位、藤田琉生、投手、東海大学付属相模高校。今年の高校生投手ナンバーワンは、右が柴田投手なら、左は藤田投手。われわれはその2人を獲得することができました。とはいえ、藤田選手はこの春までは、指名をされない可能性すらありました。それがこの6月、フォームを少し変えてから急成長。激戦区神奈川を勝ち抜く原動力となり、甲子園でも活躍、堂々日本代表のメンバーに選ばれるなど、まさにわずか3カ月の令和のシンデレラボーイとなりました。身長198センチは、外国人選手と並ぶ、リーグトップの身長です。驚くのはその体を操れる操作性と、手先の器用な巧緻性にあり、140キロ後半の速球を放りつつも、カーブ、スライダー、チェンジアップと多彩な変化球を制球できる能力は、並大抵ではありません。聞けば、ご両親は実業団まで進んだバレーボール選手とのこと。サラブレッドの血を引き継ぎましたね。本日は彼が小さい頃からのキャッチボール相手を務め、その後親身にサポートしてくれたお兄さんもこちらに駆けつけてくれました。家族の応援を糧に、そしてこれからはここにいるファイターズファンの応援を糧に、ぜひ活躍してくれることを願っています。頑張ってください」


本格派ど真ん中の投手

ドラフト3位、浅利太門、投手、明治大学。186センチ88キロ。真上から投げ下ろす角度のある直球と落ちる球で、三振が奪える、いわゆる本格派ど真ん中の投手です。アマトップクラスの潜在能力だと誰もが評する一方で、ドラフトイヤーの今年は防御率3.21、イニング以上の四球を出すなど不調でした。実質、戦線から外れる屈辱も味わいました。それでも持ち前の研究熱心さでフォームを修正し、秋のシーズンには見事四球を減らし、防御率0.84、奪三振率は15.2と、真っすぐで空振りを取れる本来のスケール大きな投球を取り戻しました。特にドラフト指名された以降の試合では、気が楽になったのか、6打者中4人を三振に取るなど、堂々としたその投球は来シーズンが非常に楽しみです。地道なトレーニングを通じて、休まず続けて出たこの結果、ドラフト前の調査書には彼らしい努力についての記載がありましたので紹介します。『私にとってプロ野球は人生の目標であり、憧れ、希望、そして努力の象徴です』。どうぞこの気持ちで頑張ってください」


マイペースさも重要な武器に

ドラフト4位、清水大暉、投手、前橋商業高校。昭和の人気野球漫画、タッチのモデルとなった、前橋商業高校からスケール感あふれる、右の本格派投手がやってきました。今や190センチ以上の投手は珍しくないのですが、体重96キロ、骨格が太く肉付きの良いこの体はすでにトップ選手と見間違うほどで、今年の高校生ナンバーワンのアスリート体型だと私は思います。ご覧の通り、ユニホーム姿が非常に映えています。もちろん投球はまだまだ未熟ではありますが、直球は最速149キロ、曲がりの良いカーブ、フォークももっており、将来は先発ローテーションを担ってほしいと期待しています。心配は、あまりにもマイペースなところでしょうか。ドラフト直前、われわれがブルペン投球を視察に行ったとき、すでに雨が降り出しているにもかかわらず、ルーティンに集中してばかりでなかなか投げてくれないときには、われわれとは縁がなくなるではないかとヒヤヒヤしました。とはいえ、マイペースさは投手には重要な武器となるはずです。自分の速度で着実に、またこのエスコンフィールドに戻ってきてください。頑張ってください」


ドカベンの殿馬がやってきた

ドラフト5位、山縣秀、内野手、早稲田大学。清水投手同様、昭和の人気野球漫画、ドカベンの殿馬がファイターズにやってきました。殿馬と言えば、ピアノの腕が超一流。その音楽センスで奇想天外、体操選手のような守備を見せるキャラクターです。昭和世代の我々には、山縣選手の個性的でアクロバティックなプレーは、その殿馬を思い出させるのです。事実、山縣選手は小さいときに体操を習っていたそうです。ピアノに至っては、殿馬はショパンの別れの曲を得意としていましたし、山縣選手も同じく、ショパンの幻想即興曲を人前で披露したことがあるのです。課題は打撃です。ドラフトを意識した春は打率.366で、リーグ4位と健闘しましたが、秋は.238と失速してしまいました。さあ、ここは殿馬の代名詞、秘打・白鳥の湖を参考にするときかもしれません。ちょっとふざけすぎてますね(笑)。ということで、まるで殿馬の紹介となってしまった感はありますが、母校・小宮山監督はオジー・スミスと称し、本人はロッテで活躍した小坂誠さんが目標とのこと。どちらにしても個性溢れるプレーでプロ野球ファンを魅了してくれることを期待しています。頑張ってください」

ドラフト5位・山縣秀は〝リアル殿馬〟の守備職人 特技はピアノで学業優秀 起業に関心も


ギリギリでアピール、滑り込んだ

ドラフト6位、山城航太郎、投手、法政大学。150キロのボリュームある直球と縦のスライダー、フォークボール、一つ一つのボールはプロでも十分通用しますし、元野手だけに、けん制やフィールディングもうまいと、担当スカウトが早くから推薦していた選手でした。彼は運の良い選手かもしれません。高校と大学の監督の間では、『山城は野手でプロに行かせよう』という話になっていたはずなのですが、大学での監督交代のどさくさに紛れて初練習でしれっと投手チームに行ったのが、投手・山城の始まりでした。本当は投手がしたかったんだそうです。大学最終シーズン。それまで実績も経験もわずか。素材は良くても指名には決め手に欠けていました。そんなドラフト会議のわずか5日前、公式戦で初めて5回を投げ初勝利。ギリギリでアピールできたのです。そして、ドラフト当日にもありました。山城選手は支配下指名でなければ社会人に進む予定でした。ファイターズは支配下5人でドラフトを終了する予定でしたが、急きょもう1名必要ということになり、そこに滑り込んだのが山城くんでした。調査書にはこんなコメントもあります。『プロ野球はアマで活躍した人が活躍できる場ではなく、入ってからが勝負の面白い舞台』。さあ、プロに入ってしまいました。この面白い舞台で、君らしく存分に活躍することを願っています。頑張ってください」


大きく自由に育って

育成ドラフト1位、川勝空人、投手、生光学園高校。南は沖縄県石垣島をルーツに持つ天然素材です。ご覧の通りの体格と風格、最速153キロのパワーピッチはライオンズ・平良選手を思わせます。それもそのはずで、おじいさん、おばあさんが平良選手と同じ石垣島出身とのこと。高校時代、筋力トレーニングをしたことがないのにこの体ですから、プロの環境でしっかり鍛えたらと思うと楽しみしかありません。夏の大会はサヨナラ負けで涙。ドラフト指名されたときも号泣し、エックスで世界中に配信されました。次の涙はこのエスコンフィールドの胴上げ投手の時、というのはどうでしょうか。1軍には高校の先輩、武田コーチが君を待っています。おおらかで正直な性格。大きく自由に育ってほしいと思います。頑張ってください」


祖母は元横綱北勝海・八角親方のいとこ

育成ドラフト2位、渋谷純希、投手、北海道帯広農業高校。こちらは北から、北海道帯広から来た天然素材です。おばあさんが元横綱北勝海の八角親方といとこということ。初めて見たときから骨格の太さや筋量の多さ、そして182センチでありながら足の大きさは31センチなど、体のつくりがちょっと違うなという強いインパクトがあった選手です。確かに球速や実績に突出したものはないのですが、わずか1カ月の間に、20奪三振以上のゲームを2回達成するなど、何か見えない能力を持っている投手ではないかと、放っておけませんでした。練習は1人黙々タイプ。静かですが燃える情熱を持った青年が、この北の大地で躍動し、ファンを熱くする姿を期待してやみません。頑張ってください」

【一問一答】育成2位・渋谷純希 山城のサザン熱唱暴露「いきなり『歌、歌います』って」


昨年は野手、今年は投手が多い指名に

「以上が今年の新入団選手8名となります。昨年は野手が多くて、今年は投手が多い指名となりました。今年も身長が高く、平均185.5センチ。投手のみに限ると、187センチとなり、数年後の投手王国の夢を見ています。そこに堅守の遊撃手を加えたこの2024年ドラフトが、史上最高のディフェンスドラフトだったと、そういうふうに言えるような年になってほしいと思っています。どうか皆さまからも、彼らの成長を時に厳しく、時に優しく、見守っていただければいいなと思っています。応援よろしくお願いします」

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