来季から北海道コンサドーレ札幌の監督に就任することが決定した岩政大樹新監督(42)が12日、札幌市内で記者会見を行った。一問一答は以下の通り。
―(冒頭、自ら)
皆さん、こんにちは。岩政大樹です。この度、僕が常日頃から大好きだったサッカーをしていた、北海道コンサドーレ札幌に監督として来ることができて、非常にうれしく思っていますし、興奮しています。
ミシャの後という、非常に大役だと思いますが、自分にとっては、これ以上ないチャレンジだと思って、ここに来ました。これまでの札幌のサッカーを継承しながら、でもそれを継承するだけではなく、前進させていきたいですし、自分はそれができると思っています。自信を持って選手たちと新しい札幌をつくっていきたい。これから(付き合いが)長くなるといいなと思っていますので、よろしくお願いします。
―監督就任への経緯、決め手になった点は
まず今年、僕はベトナムのハノイFCで指揮を執っていて、そのときに自分の中で非常に良い内容、結果を得られました。次にどういうチャレンジをするかと考えており、日本に戻る選択も、東南アジアに残る選択もありましたが、その中でまず日本に帰ってきてチャレンジをしようと。
どのクラブでもいいわけではなくて、帰るのであれば、自分がハノイでやっていたサッカーに似ているところ、同じようなマインドや、同じような哲学、戦術的にも近いところでやりたい気持ちがありました。それがないと、なかなか選手を入れ替えたり、戦術を組み直したり、あとはマインドをそこに変えていくというのは、結構時間がかかってしまう。次のクラブがそういうクラブであれば、日本に帰りたいと考えていました。
ご縁あって札幌の方とお会いすることができて、そこからこういうお話をいただきましたので、であればもう日本に帰ろう、日本のクラブでやろうと決断しました。
―具体的に監督就任の話があったのはいつぐらいか
具体的にはごく最近まとまった話ですが、一番は僕のハノイでのフットボールをちゃんと見ていただいていたということが非常に大きくて、そのフットボールを一緒にやろうと言ってくださったこと、そして札幌がやってきた攻撃的なサッカーをぶれずにやってほしいということ。それであれば、先ほどの経緯のところでも話しましたけれども、僕がやりたいことに非常に合うクラブだと思っていましたので、札幌から(オファーが)来るのであれば、札幌に行こうと。
もともとその話をしている段階で、自分で決めていましたので、優先順位をつけながら、自分としては一番トップで札幌を考えて話をしていました。
―先ほど「継承」と「前進」という話があったが、具体的にどういった部分を継承して、どういった部分を塗り替えていきたいか
(継承については)まずはミスを恐れないという精神、マインドですね。これを持たせるまでが意外と大変です。プロの世界はすぐ目の前に結果があって、ミスをして負けてしまえば、翌日の職を追われるかもしれないという中で、攻撃的なマインドでサッカーをするというのは、植え付けるまでに相当な時間がかかると思っています。
その前にはいろいろな失敗も必要だというところがありますが、このクラブはもう何年も継続してきたところがありますし、それは他のクラブを見渡しても、そんなにないですよね、そういうクラブ。
そういう面で、ぜひそこは継承したいところですし、僕もそういうマインドをハノイでつくってきましたから、そこは変わらずにやっていこう、ということです。
変えていくところというか、変えるどうこうよりも、やっぱり攻撃的なフットボールをつくるために大事なことは、その監督がいかにオリジナルのフットボールを、自分の中で確信を持って進められるかということだと思うんですね。
ミシャ監督はもうミシャ監督なりのオリジナルがあって、あれは他の監督でまねしている人はいますけど、ミシャ監督は誰のまねもしていませんよね。
僕も同じマインドで、僕は誰かのまねをするのが大嫌いな人間なので、僕は僕でオリジナルで考えたものをハノイで実践して、それを持ってここに来ましたし、そこに行ったら、たまたまというか、ミシャのサッカーも参考にしていましたので、似ている部分もありますが、ただ違う部分もありますし、そこは変えるというよりも、このサッカーで僕は戦っていこうと思っています。見てくださる方は、徐々に似ているところがあるなと分かってくださると思いますので、ぜひそれを楽しみにしていただきたいと思います。
―キャンプではどういうふうに選手たちに学んでもらい、吸収してほしいか
毎日毎日選手の顔色を見ながら、選手たちの心理に入り込みながら、チームをつくっていくということの繰り返しなので、もうそれは選手と顔を合わせたときにしか、最終的な答えというのは言えないことがあるものです。
いずれにしても、もう既にミシャ監督の長年やったことで植え付けられたサッカーというのは間違いなくあって、それは先ほども言いましたけれども、なかなか他のクラブで植え付けるのは難しいことなんですね。それはおそらく、僕が入って驚くほどありがたいと思うことだと思っています。
それを継承しながらも、自分がどのようにしていくのか、それを選手たちには、変わるものと変わらないものを、明確にしながら伝えなければ分かりにくいと思いますから。
その手法は今いろいろ準備していますが、自分なりに続けるべきものと、少し変わっていくな、というものが明確になってきていますので、それを伝えながらチームをつくっていくということですね。
―来季はJ2での戦い。どうやってこの1年を戦い抜き、その先にどんな目標を持っているか
まずどのように戦うかというのは、自分たちには自分たちの哲学があり、自分たちのフットボールがあるんだという自信、確信を植え付けることができれば、そこから派生する相手への対策は、おのずと見えてくると思っています。それはミシャ監督がつくったオリジナルのフットボールもそうで、相手に対して変わるものは、ほとんど少なかったと思います。
僕も同じような考えでいて、自分たちがこのフットボールをやれば、例えば相手がこうしてくればこっちがあって、こうしてこないのであればこっちがあるよ、ということが準備されているものを「戦術」と、僕は言っていると思っているので、その理屈をちゃんとまとめた上でチームをつくれると思っています。それをまずはつくり上げるということですね。
その上で、相手への対策は1試合1試合、ちょっとずつ変わってくるところも提示しながら、対策していくことを同時にやるところですが、割合的には自分たちのフットボールをぶつけることの方が強くなると思いますし、そこが僕が鹿島で(監督を)やってきたときから変わったところ。ハノイに行って自分が、成長と言っていいのか、変化と言っていいのか分かりませんが、違うところだと思っていますので、ここでも同じようにやりたいと思います。
具体的な目標は、当然J1昇格がありますが、天皇杯やルヴァン杯はカテゴリーが関係ないので、誰にでもタイトルを取るチャンスがありますし、札幌もタイトルというところまで是非持っていきたいと思っていますので、来年それが取れればいいですし、その先でも狙っていきたいと思います。是非このクラブにタイトルをもたらしたいというのが、僕の目標としてあります。
―札幌はこれまで練習を全公開してきた。練習公開のスタイルをどう考えているか
もうフルオープンですよ。(報道陣の)皆さんに来ていただいて、サポーターの皆さんにも来ていただいて。あとは、僕はなにげに北海道につながりのある指導者たちが、各カテゴリーにいらっしゃるので、皆さんにも来ていただいて、コンサドーレのサッカー、北海道のサッカーというものをみんなで語っていきたいと思いますし、それを引き継ぎながら、継続的にやっていきたいと思っています。
なので、これからの変化も、選手たちがつくり上げていくものも、きっと楽しいものができていくので、それを是非楽しみにしていただきたい。ハノイで僕がピッチ上から見せられたようなサッカーが、日本で本当に表現することができれば、皆さんを驚かせたり、楽しませたりすることができると思うので。
当然ハノイのときとは、選手が違いますから、違うものになるとは思いますが、マインドや、ピッチ上の躍動感というのは、同じものを目指していきますので、それをぜひ楽しみにしてほしいと思っています。
―三上GMからはどのようなことを求めていると言われたか
ぶれずに攻撃的なサッカーをつくってほしいということと、それを一緒につくろうという話もしましたし、自分がハノイでやってきたサッカーを、三上さんはじめ強化部の方々にずっと見ていただいていたので、そのフットボールをやろうと言ってくださったのは大きいですよね。
それを見ずにお話してくださる方々、チームもありましたけど、やはりそこが僕の中で大きなポイントで。鹿島のときの僕のフットボールとは違うものでしたし、それをつくり上げることができたことの自信で、僕は日本に帰ってくるという思いがありますので、そこを継続的に追いかけてくださったこと、そしてそれを札幌でも一緒にやろうと言ってくださって。言葉というよりも、札幌と近いものがあるというのは、そこを見ていれば分かることだと思うので。
言葉としては、攻撃的なものを継続するのは当然ありますけど、結局僕たちの世界は言葉で「攻撃的なフットボールをつくります」と、大体どの監督も言いますから。でも、それを落とし込めないと意味がない世界なので、ここでもそれを実現したいと思っています。
―ハノイで行っていた岩政監督オリジナルのサッカーはどういうものか
話はいくらでもできますが、監督として僕が表現するわけではなく選手が表現するもの。ピッチで表現することで、初めて価値が生まれる仕事だと思っていますので、それが表現できるようになったときに「これだよ」と、皆さんにお伝えしたいと思っています。
言葉でいうと、自分が今フィットしている言葉は「プログレッシブである」ということですね。プログレッシブとは前進ですね。先ほど最初のコメントのときにも、前進という言葉を使いましたが、ミシャのフットボールも前進させますし、フットボールでも観点でも、前進を常に目指していくということ。それはミシャのサッカーがすごく躍動感を持ってやっているときもそうだったと思いますし、この前の最終節もそうですね。皆さんが見ているときに、どんどん前進していくようなサッカーを見られて、そのときはすごく楽しいなって、みんな思っていたと思います。ハノイでやっていたサッカーは、ディテールが違ったとしても、すごく似ていると思っています。
じゃあ具体的に前進するって、どういうふうに?ということを自分の中で整理してきたところで、プログレッシブという言葉はすごく自分の中でもすっきり落ちているんです。アグレッシブとも違い、もうちょっとみんなが前進しながら、かつ流動的に動きながらサッカーをしていくという絵で、チームをつくっていました。
―来季に向けてのチーム編成の最中だと思うが、岩政監督から強化部に対して何かリクエストしているか
まず大前提として、僕の仕事はピッチ上で行うことであり、選手を指導というより、選手たちと一緒にチームをつくることだと思っています。もともとこれは鹿島であろうが、ハノイであろうが、ほとんど選手の補強の部分は、僕は口出しすることは、あまりありません、というのが大前提です。
ただ、当然監督ですから情報は入ってくるし、相談されます。基本的に僕は、今の札幌には(良い)選手がいると思っています。(移籍で)抜ける噂もいろいろ出ていますけど、そもそも抱えている選手たちは、人数的にもたくさんいますし、高卒1年目のMF原もいますが、それ以外のほとんどの選手は、もうしっかりプロとして何年もやっている選手たちですよね。かつ、グループで同じ絵を描いてサッカーができれば、十分に活躍できる、結果を出せるメンバーがそろっていると思っています。
ただ、メンバー表を並べると皆さん分かると思うんですけど、ちょっとポジションによって人数のばらつきが今はあると思いますから、リクエストを出しているとしたらそこですね。
バランスを整えて、それによって競争をさせたいというのが、僕のひとつのテーマとしてあります。例えば(チーム内で)ゲームをやっても、ポジションバランスが6人いるところと、3人いるところだと、同じような負荷になりませんから、競争がしづらいというところがあります。そこのバランスを整えたいですね、という話はしていますが、基本的にはそこはもうクラブにお任せしているということですね。
―沖縄キャンプに向けて、選手たちにはどんな準備をしてほしいか
今回J2に降格するというタイミングで、選手たちにはいろいろな思いがあると思いますが、僕はとにかく、さっきの編成の話もそうですが、北海道コンサドーレ札幌のために戦いたい、このクラブを救いたい、このクラブをJ1に上げて、さらにその先へ、という思いがある選手たちと仕事をして戦いたいと思っています。
シーズンに入る頃にはだいたいみんな「今年頑張ります」と言うんですが、それを本当に、心の芯から思って、思い続けられる選手というのは、今の段階で本当に「北海道コンサドーレ札幌を救いたい」という選手でないと持ち続けられないと思っていますので、そこが大きなカギになるシーズンになる。そこをオフの間もしっかり胸に刻みながら、帰ってきてほしいというのが大きなところです。
その上で、どういうフットボールをやりたいか。結局僕たちの現場って、選手たちには良いことはいくらでも言えるんですが、ピッチ上で選手たちが「確かに」「なるほど」と思ったときに、初めて選手たちはついてくるものだと思っていますので、その表現されるサッカーを楽しみに、ワクワクしながら、前向きに集合日に来てくれればいいです。「岩政さん、そんなことねえな」って思うこともあるかもしれませんが、そこでついてきてほしい、っていうことだけあれば、なんとかなると思っていますが。
これまでのミシャ監督のサッカーからさらに前進させるわけで、そのまま真似事するわけでもないですし、かと言って大きく転換するわけでもないので、同じような攻撃のマインドを持ちながら、新しいものをつくり上げていこうね、というところは伝えておきたいですね。
―ミシャ監督時代は、超攻撃的でありながら、守備とのバランスを取る難しさがあったように感じた。岩政監督は攻守のバランスをイメージをどう考えているか
これは言葉で言うと、誰でも言える言葉になってしまうんですけど、現代サッカーで言うと、攻撃と守備というのは、そもそも分かれるものではないんですよね。
ミシャ監督のフットボールは攻撃的だと言いますが、守備にも当然明確なミシャ監督オリジナルがあって、それと攻撃をつなげたときに失点が増えてしまったり、逆に言うと、その守備のやり方だからこそ攻撃で点が取りやすくなったりするところがあります。ですから、攻撃的なサッカーをしたいからといって、攻撃ばかりトレーニングしても攻撃的にはなりません。
その守備のボールの奪い方がどのような奪い方になるから攻撃がどのようにスタートして、攻撃の仕方がどのようになるから守備がどのようなスタートに入るか、ということが全てつながってサッカーは行われていくので、そういう面では相手がボールを持っている状況の守備のところで、失点が減るような状況は自然に生まれると思っていますし、それがそのまま攻撃の得点にもつながるというのは、全部セットだという考え方です。
ただ同時に、サッカーの中盤での局面で、パスワークを含めていろいろな楽しい局面はありつつも、サッカーというのは点取り合戦だということも、同じぐらいの割合で大事なところだと考えなければいけなくて。じゃあ点は、どこで入るんだというと、ゴール前で入るわけですね。そこは僕が選手のときに一番こだわっていた局面だったりします。
そこに対しては、戦術をどのようにつくるかとか、攻守のつながりをどうつくるかと。また別の側面で、ゴール前をいかに固くするか、あるいはどのように相手のゴール前にいかに入っていくか、というところも、ここはもう1つの局面として大事なところだと思っています。ここも攻守両面で、ゴール前のところでどのような形で最後の局面を迎えるか、ということもやります。
これもあんまり説明するとすごく緻密になってしまうので。選手たちに緻密にサッカーをしてほしいというわけではなくて、僕は緻密な準備をしますけれども、選手たちにはピッチ上でトレーニングしてうまくなったらこうなりますよって、後から分かるものだと思うので、そのぐらいでいいと思っています。
でも皆さんもそういうことを少しずつ見ていただければ。今のサッカー、本当にこういうものを指導者がかなり理屈でちゃんと持たなければいけない時代になって、そのつながりがどうとか、この局面でハイプレスでこう行ったらミドルがこうなって、その後ゴール前にこうなって。この局面を分けて考えると、うまく行かないんですよ。それが全てまとまったものを、ひとつパンと提示できるものが大事であって。
すみません、話が長くなりました。こんな話が大好きなので、いつまでもしますので、こういうものも毎週の皆さんとの話でも、いつでもしたいなと思います。北海道の皆さんとサッカーをどんどん語り合って、僕も皆さんから(の話が)参考になって、それを変えていくこともあるでしょうし、今の僕の考え方もそれが全てだと思っていませんし。
僕が鹿島を離れたのはまだ1年前ですからね。もう遠い昔のように感じますが、そこから僕はハノイでやって、(東京)学芸大でやって、今年は非常に良い年を僕は過ごすことができたので、指導者としては自信を持ってここに来ていますが、おそらく札幌の選手と関わることで、変わるものもあるでしょうし。ここでは僕もどんどん変化させながら、学びを繰り返しながらつくっていこうと思っています。全体像はそんなイメージです。
―札幌の選手というのは、岩政監督の目からどのように映っているか
昨年対戦もしていましたし、昨年は特に圧倒的な攻撃を有していましたので、対戦するときは非常に難しい相手で、結果的に勝つことはできたんですが、ものすごく嫌な相手ですし、選手たちが楽しそうにサッカーをしているなと。で、やれることがどんどん増えているな、というところを、いつも感じていました。
なので、ここに来ると選手たちが成長する、ってみんなが感じるのは自然だろうなと見ていましたし、僕もミシャ監督を「指導者になりたいな」と思って見ていた存在でした。
今シーズンの全試合をずっと見ていて、一巡したので今2巡目を見ているんですが、その中でイメージで語られているものもやはり多くて、言葉が一人歩きしたり、やり方が一人歩きしていることがたくさんあって、それをちゃんと分析して、なぜ選手たちが結果が出ないときには、結果が出ていないのか、結果が出始めたのはなぜなのか、その辺りをちゃんと突き止めて、来年に生かしたいと思っています。
選手たちがこれまでやってきたことがゼロになったり、変えなきゃいけないとかいうことではなく、僕が見ている限り、この前の最終節の話を先ほどしましたが、選手たちがすごく良いサッカーをしているときには同じような現象が起こっていて、それがなぜ起こっているのかの整理によって、再現性というのは変わってくるんですね。
いかに分析が大事か、ということですが、それを基にすれば、やっていないことをやろうじゃなくて、やれていることを何度もやれるようにしようという入りで、行けそうな気がしています。
これまでを見ている限り、すごく良いものをみんな持っていると思いますし、まだ皆さんがあまり試合で見ていない選手たちにも、かなり期待できる選手たちがたくさんいるので、その選手たちを焚きつけて、もうここまでできるようだったら、次はこうなるよ、って見せながら、今のZ世代と呼ばれている子たちをいかにマネジメントするか、すごく大事なポイントになるので、その子たちをいかに伸ばして、皆さんが驚くような選手にしていくかということを、まず考えています。
―鹿島での現役時代は常にタイトルを狙うようなチームだった。いわゆる常勝軍団と、そうではないチームの差はどういったところか
これは常に永遠のテーマですね。言葉では全て説明ができなくて、でも言葉にしないと受け継がれなくて、という繰り返しだと思うんですが、結局つくり出している言葉で言えば、日常って話になるんでしょうけども。日常の空気感が、どのような空気感かによってかなり大きく変わります。
これを空気感と言うと、すごく空虚に聞こえますが、皆さんの会社でいいなって思う空気感ってありますし、ここはダメだなって空気感ありますよね。それをつくり出しているのが何かというと、日常のそれぞれの考え方、接し方だったり。サッカーの世界でいうと、勝ち負けがついたときの立ち居振る舞いだったり、各局面でのみんなの文化みたいなものがつくり出すものであって、それが最終的に勝負強さにつながるわけですね。
じゃあこれをどうやってつくるんだ、というのは僕もずっとテーマなわけですけど。そこは僕もまだ勝ちきったというのは、この前学芸大が(関東3部参入戦で)勝ちきれたんですけど、それ以外はそんなにたくさん勝ちきった経験が多いわけじゃないので、指導者としてこれは今、僕のひとつのテーマではあります。
ただ自分なりに考えていることは、これってゴール前のこだわりって言い方になれば、もっと細かく設定ができますよね。そうしたら選手たちも「ゴール前のこだわりって何なの?」という、これも言葉にすればいろいろ整理されていきますよね。
じゃあゴール前のこだわりってどのように守るの、じゃあそれってどのようにトレーニングするの、というのを、どんどんかみ砕いてトレーニングをつくって、選手たちと接して繰り返すということなので、日常をつくるため選手たちにメンタリティーの声掛けもしていくと思いますし、ゴール前の話もするでしょうし、中盤のつくりの話もするでしょうし、それらをディテールを詰めていって、勝つ確率を上げていくということしか最終的にはないと思います。
僕もいろいろトライしている最中の指導者です。特に若い子たちのマネジメントの仕方、自分なりに鹿島を離れてこの1年、サッカー的なところもそうですけど、やはり組織を動かすということなので。札幌はたくさん若い有能な選手たちを抱えていますが、その選手たちが、たぶん近年はクラブが期待をかけているほど活躍してくれていないと、おそらく皆さん思っています。
なのでその選手たちが活躍すれば、今補強が何だって周りに言っていますけれども、選手たちが20%成長すれば、それが補強になりますから。それを目指すということがまず第一ですし、それが実際に叶えられれば、今よりも20%上のチームになったら、昇格するでしょう、というのが、僕の基本的な考え方なので。
それが結果的に勝負で勝ち続けることにつながったら、だんだん常勝になってくるんじゃないですかね。
―北海道という土地のイメージと、札幌サポーターのイメージは
僕も選手のときは、試合で来たぐらいしかなかったんですが、引退して解説者をやっている頃に何度か来ることがあって。当時はチャナティップ、僕はタイではジェイって言っているんですけど、あいつは僕のタイのときのチームメートでしたから、あいつとジンギスカンを食べに行ったりもしていましたし、テレビ局に出させていただいて、札幌の戦術分析をさせてもらったりしたこともありました。その辺りが札幌って、北海道と街も含めて面白いクラブだなって。優しくて、面白くて、温かくて、すごく一体感のある街クラブだなという印象があります。
で、それがないと攻撃的なフットボールってつくりきれないと思うんですよね。これって誰かがやろうとしても、例えば良いサッカーをして負けた試合がありますと。そのときに批判の声ばかりが増えて、それに押し倒されるような人たちばかりが周りにいたら、いくらやろうとしてもやりきれないですよね。
やりきれているというのは、北海道という土地柄がさせているのだと思っていますし、札幌というクラブが哲学を持ってこれをやり遂げてきたということが大きかったと思っています。
そういう面では、これから逆に言うと試されていて。ミシャ監督だからできたのか、札幌だからできたのかということが試されているんだと思いますから、僕もその一翼を担わせてもらう立場として来ましたが、一緒にこれをつくりあげて、この後継承ができて、さらに発展させることが、前進させることができたら、これが本当の北海道コンサドーレ札幌のサッカーになっていくんだと思います。ミシャのサッカーということではなく、北海道に根付いたサッカーになっていくように、これから頑張っていきたいと思っています。