斉藤伸治 独立L高知からNPB復帰目指す お世話になった2人の〝道産子金メダリスト〟とは…
衰えない闘志 果たせなかった1軍での登板
今季限りで日本ハムを退団した斉藤伸治投手(26)が来季、独立リーグの高知ファイティングドッグスで新たな挑戦をスタートさせる。
「まだ野球ができる体でしたし、NPBの1軍で投げたいという思いが強かったので、このまま野球をやめる選択肢はなかった。高知ファイティングドッグスさんが一番、自分に合っていて、NPBにいける環境もチャンスもあると思ったので、そこに決めました」と新天地を選んだ経緯を明かした。
今オフに戦力外通告 背を押された恩師らの言葉
10月に戦力外通告を受けた後は、すぐに両親や担当の高橋スカウト、大学時代の監督らに相談し「自分がやりきれるところまでやった方がいいぞ」と背中を押された。
プロ4年間は2軍で88試合に登板したが、支配下昇格はかなわず。1軍のマウンドには一度も立てていない。「確かに、自分はまだやりきっていない。ずっと2軍だったので」と熱い思いがくすぶっている。
いつも味方でいてくれた世界一を知る男
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来季、最短でのNPB復帰を目指す斉藤には〝世界一の援軍〟が2人もいる。1人目は、同期入団で1学年先輩の伊藤大海だ。東京五輪、WBCで世界の頂点に立った男は、入団以来いつでも親身になって相談に乗ってくれたという。
忘れられない数々のアドバイス 「もっと関わりたかった」
「大海さんはすごかったですね。1、2軍で(離れていて)会える機会は少なかったんですけど、納会だったり、2軍でエスコンに行った時だったり、いつも向こうから話しかけてくださって。2年目の2月のキャンプ前に、1週間ぐらい大海さんとトレーニングする機会があって、その時にはLINEで『今、やれることをやって、あとは自分を信じていけば、今までやってきたことが勝手に出るから焦らずいけ』と言われて、ずっと心がけています。野球の知識もすごいですし、観察力もすごいので、ここがおかしいよとか、いろいろ教えてくれる。鎌ケ谷でスライダーを教えてもらったこともありました。『伸治、親指がおかしいんじゃない? ちょっと親指(に入れる力を)強くしてみたら』って言われてから良くなりました。本当は、1軍でもっと関わりたかったです」
受け取った〝大海グラブ〟
11月下旬には同期会が行われ、1対1で話す時間をつくってもらった。
「そこでいろいろ話して、『伸治が勝負するなら、道具とか困ったことがあったら言ってよ』って。本当にグローブとスパイクを自分に合わせて、大海さんがオーダーしてくれるみたいで。早速、エスコンのロッカーにあった大海さんのグローブを『伸治、とりあえずこれやるよ』って、いただきました。来年はこれを使うつもりです」。〝大海グラブ〟で、NPBへの道を切り開くつもりだ。
恒例となっている北口榛花との合同自主トレ
もう一人の世界一は、パリ五輪の陸上女子やり投げで金メダルを獲得した北口榛花。共通のトレーナーを介して知り合い、2年前からオフの自主トレを合同で行っている。
取り組む姿勢に感銘 「何事にも全力で真面目」
「北口さんは、本当にすごいですよ。何事にも全力で、めっちゃ真面目。去年の12月は、午前午後、分刻みでいろんなトレーニングをしていました。投てきの人はあんまり走らないらしいんですけど、助走が大事らしく、一生懸命走る練習もやりますし、水泳だったり、ローラースケートだったりもやりましたね」。何事にも代えがたい貴重な時間を過ごした。
共通点が多いピッチングとやり投げ
世界女王のストイックな姿を間近で見て、得られたものは多かった。
「一番、勉強になったのは、人の体を知るということです。北口さんは全て、解剖学的立位肢位に添ったトレーニングをしている。骨格とか、骨から動かすことをめっちゃ意識していて、力の使い方がうまい。少ない力で強い力を出せる。解剖学に基づいて、こうやったらここに筋肉が付いて、力を発揮できるということが理論的に分かっている。上に投げるか下に投げるか以外は、野球もやり投げと結構、一緒なので、そこを僕も勉強させてもらって、投球にもつながりました」
首にかけた金メダル 激励の言葉も
高知での再挑戦を決めた後にも顔を合わせ「最近もまた一緒にトレーニングして、いろいろ教えてもらいました。オリンピックの話も聞いて、大変だったらしいんですけど、結果を残して。北口さんも人としてすごいです。金メダルもかけてもらいました。『次、決まって良かったね』って言ってもらいました」と励まされた。
大願成就へすべてを出し切る 「やるしかないです」
独立リーグの給与面は当然、NPBには及ばない。それでも来年1年間は「野球に全振りします」と、他の仕事はせずに人生を懸ける覚悟だ。
「本当に1年勝負です。まだ勝負できると思うので。自分の可能性とか伸びしろを信じてやっている。そこがなくなったら本当に終わりだと思うので、自分を信じてやるだけです。ファイティングドッグスの方には『全力でNPBにいけるようにサポートするから、一緒に頑張ろう』と言ってもらいました。やるしかないです」。日本最高峰の舞台に戻り、1軍デビューを果たすことが、支えてくれる全ての人への恩返しだ。