春高バレー初陣の女子・旭川志峯が〝甲子園カルテット!?〟の活躍で全国初勝利だ
1回戦で強豪・八王子実践と激突
春高バレーこと、全日本バレーボール高校選手権が来年1月5日から東京体育館で開幕する。11月の北海道大会で初優勝した初陣の旭川志峯は、1回戦でインターハイ8強の強豪・八王子実践(東京)と激突する。中学時代に全国大会を経験した選手がほぼいない〝非エリート集団〟が、虎視眈々(たんたん)と番狂わせを狙う。
戸村主将「北海道1位の自信持って」
創部21年目で歴史を塗り替え、士気は高まっている。相手は東京第2代表で、10年連続47度目出場の伝統校。OH戸村由那主将(3年)は「初出場の私たちにとっていきなりの強豪だけど、絶対に勝つという強い思いで八王子実践に対して自分たちの戦い方を最初からやっていければ勝てると思う。北海道1位で初出場できた自信を持って、思いっきり戦っていくしかない」と意気込んだ。
1年前から会場に近づける対策実施
〝甲子園モード〟で大舞台の環境にも慣れさせた。常に大歓声が鳴り響く東京体育館の雰囲気は北海道大会の比ではない。観客席は何階層にも重なり、コートでは同時に何試合も行われるため、各校の応援による歓声や笛の音などは隣接するコートのプレーにまで影響する懸念がある。それを克服するため、1年前からYouTubeに公開されている高校野球の甲子園でのブラスバンド応援動画をコートの四隅に置いたスピーカーから大ボリュームで流した中で練習を行ってきた。戸村主将は「観客や会場の大きさ的にも、(大会前に)想像しててもそれを超えてくる。緊張感も違うと思うけど、そこで(練習が)できるのはすごい貴重」と、しっかりと対策を行った上での本番を待ち望む。
1991年夏の甲子園で登板した父
チームをけん引するのが〝甲子園カルテット〟だ。福田まどか監督(47)が「今年のチームは戸村で成り立っている」と絶大な信頼を置く戸村主将の父・薫さん(50)は、野球をしていた高校時代に旭川工業の2年生エースとして1991年夏の甲子園に初出場。自宅には甲子園球場の土や、記念の皿、背番号が今でも飾ってあるという。「父からは、日頃からスポーツに対して技術面だけじゃなくて気持ちの面や人間性のことをずっと言われているので、そこは大事にしてます」と、尊敬する父の教えをもとに成長を遂げてきた。
主力だった兄たちがプレーした聖地 それぞれが大舞台の雰囲気を体感
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さらに北海道大会最終日の準決勝、決勝でチーム最多36得点をマークしたMB山保ななみ(3年)の兄・亮太さん(国学院大2年)は、同校が校名変更前の旭川大学高で22年夏の甲子園で投手兼外野手として活躍。守備の要、L広川春音(2年)の兄・稜太さん(仙台大2年)も亮太さんと同じ代で、主将を務めながら遊撃手としてチームをけん引した。また、OH能登姫菜(2年)の兄・嵩都さん(23、オイシックス新潟)も同校卒で、その3年前の夏の甲子園でエースとして活躍した。
3人とも兄たちの甲子園でのプレーは現地で直接応援。全国レベルで戦う選手たちの強さや応援の迫力は体感しており、今もその記憶は鮮明に脳裏に焼き付いている。
MB専念で全国大会に集中する山保
同じ全国の大舞台に向け、ポイントゲッターの山保は北海道大会ではOHを兼任していたが本来のMBに専念して挑む。「自分はバックに入らないで、フォワードしかないので、その分、点数を取らないといけないポジション。1本目上がって、2本目を自分まで持って来てもらって、そこから1本で決めきれるようにブロックアウトの練習とか、高いブロックに対してどうやって決めきるか」と、大黒柱としてさらなる攻撃力アップを目指している。
次は自分たちの番だ
広川は「(兄は)ずっと甲子園っていう目標を持って、もう野球だけの人生みたいな感じで。家に帰ってもご飯を食べながら寝てしまったり、野球ノートを書きながら寝たりとか、野球に懸けてるって感じで。遊ぶ暇もなくて、甲子園だけを目指して小さい頃から頑張ってきてたから、(応援した時は)感動したし、かっこ良かった」。目標に向かって努力し、大舞台で活躍する兄たちを間近で見てきた。今度は自分たちが高校バレーボールの〝聖地〟で躍動する番だ。
旭川実業時代に春高を経験した指揮官
○…旭川志峯の選手たちは初めての出場だが、就任6年目の福田監督は自身の江別中央小時代から全国の大舞台を何度も経験している。江別第三中時にはJOC北海道代表の主将を任され、旭川実業では2年時に当時代々木体育館で2年生以下の選抜大会として行われていた春高バレーに出場。3年時にはインターハイ16強、国体では5位。東北福祉大卒業後は白樺、江陵でも監督を歴任するなど、経験は豊富だ。
「春高って高校生のバレーボーラーにとって憧れの舞台。あそこにたどり着くまでの努力もそうですし、あの場で私たちはできたんだっていうのは、今後の人生の頑張る糧になる。うち(旭川志峯)でやってきて良かったと思う一つにもなる。そういうのがあるのが伝統校。うちは本当の意味でここから」と新たな歴史をつくりだすつもりだ。
最後は気合と根性 力の差はない
今年で指導者生活20年。指導の土台は守備からのチームづくり。その上で「最後は気合と根性」と言い切る。「やっぱり同じ高校生なので、強い気持ちを持ってた方が最後は勝つと思っている。うちの良いものを出せたとしたら、全然(八王子実践とも)互角に戦えるんじゃないかな。確かに名のある実績のある高校ではあるけど、そんなに力の差はないと思っている。(選手には)出るだけじゃなくて、全国で勝つレベルを求めているので、傍から見ればジャイアントキリングなのかもしれないけど、私はそれを一発狙っている。本当にそういうところでできることは光栄。最低2試合はしたい」と、勝利への執念をにじませた。