プロ野球
2024/12/29 06:00

北海高で春夏甲子園出場の江口聡一郎がくふうハヤテ入り パニック症候群と向き合いながらNPB目指す

くふうハヤテに入団が決まった北海OBの江口。パニック症候群と向き合いながらNPB入りを目指す=撮影・西川薫

軟式チームに所属しトライアウト合格

 北海高で2021年に春夏連続甲子園に出場した道産子・江口聡一郎外野手(日本大3年)が、来季からNPBの2軍リーグに所属する球団・くふうハヤテに加入する。高校3年夏、パニック症候群を発症しながらも甲子園で活躍。日大進学後は日常生活にも苦しみ2年春に野球部を退部。その後、軟式チームに所属して今年11月のトライアウトに合格した。大学は退学手続き中で、来秋のドラフト指名を目指し、新天地で再起を図る。

 病魔により一度は諦めたプロ野球への道を、バット1本で再びこじ開けた。トライアウトでは、フリー打撃で10球中3本の柵越えをマーク。球団スタッフから特別に追加の打席が与えられ、そこでも右中間フェンスを直撃する当たり。実戦形式の3打席では2打数1安打1四球と結果を残し、合格をたぐり寄せた。くふうハヤテでは球団創設元年の今年のドラフトで、江別市出身の早川太貴投手(25)が育成ドラフト3位で阪神入り。「早川さんも北広島から阪神に入ったので、その波に乗っていければ。野手1号を狙いたい。もちろん1年で勝負していくのはチームの方針としてある。長くても2、3年。年齢的にもそのぐらいが勝負」。完治は難しい病に向き合いながら、覚悟を持ってプロの世界へ飛び込む。

北海高時代の江口

 

処方された薬を服用して甲子園出場

 苦難の道のりを歩んできた。北海高2年の7月に血行障害の「右胸郭出口症候群」を発症して握力は激減。一時は右手で箸を持てないほどだったが、手術と2カ月のリハビリを経て、秋の全道からベンチ入り。決勝の旭川実業戦では、0-0の八回に現ロッテ・田中楓基投手(21)から決勝のソロアーチ。センバツ甲子園でも2安打をマークした。ところが、今度は夏の大会中にパニック症候群を発症した。動悸や吐き気に腹痛、感じたことのない恐怖が江口を襲った。症状が悪化すると、家から出られなくなるなど、日常生活も困難な状況で、優勝した南北海道大会の1回戦は先発フル出場も、以降は欠場。「5番・右翼」で出場した甲子園では「病院で処方された薬を服用しながら」1安打をマークした。

2020年10月11日、秋季全道大会決勝の旭川実業戦の八回表2死、本塁打を放った北海の江口

 

日大野球部は2年春に退部を決意

 日大進学後も症状は治まらず、ほぼ練習に出ることなく2年春に退部を決断した。その間、約1年野球から離れていたが「心のどこかで、まだ野球は諦めきれない、というのがあった」という。そんなとき、発足直後の軟式チーム・東京ユニコーンを見て心引かれた。「草野球チームなんですけど、ラプソードがあったり、ウエートの数値を毎月測ったり、パフォーマンスアップを目指すのがコンセプトのチームだった。俺、ここだったらもう一回、野球できるかも。やるなら本気でやりたい。軟式からNPBに行ったら面白い」と、東京ユニコーンに加入。「ほぼゼロに落ちた」という体力づくりから取り組むと、今年に入り、硬球での練習を本格的に再開。独立やクラブチームのトライアウト受験を決意し、最初のトライアウトが11月のくふうハヤテだった。

心の支えになったのは同じ病を抱えたプロ選手

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