【一問一答】札幌三上代表取締役GMが今季総括 岩政監督招へいの経緯や来季チーム編成についても語る
北海道コンサドーレ札幌の三上大勝代表取締役GM(53)が20日、報道陣の取材に応じ、今季の総括や新たな役割のコーチの新設、岩政大樹新監督(42)招へいの経緯、MF近藤友喜(23)、MF青木亮太(28)の残留など来季の編成やチームづくりなどを語った。主な一問一答は以下の通り。
―2024年シーズンの総括を
いろいろな方に多くのサポートをしていただきながらJ2降格という結果になってしまったことを、クラブを代表して本当に申し訳なく思っています。その大きな部分の責任というのは僕個人の至らなさ、能力のなさだなと思っています。
当初から本当に難しくなるなという、ある意味、覚悟をする中でのシーズンだったことは事実でした。理由の一つとしては、ここ数年で大卒からうちの主力になってくれていた選手は、今シーズンが始まる前までの2シーズンで徐々に他クラブに移籍をしていくという形になったことから、戦力的な部分として、その穴埋めが簡単ではないというのが、まずチーム方の方です。
一方で経営面を見ても、今のクラブライセンスを維持しつつJ1で戦っていくことに関してポイントになるのは、チームの強化費にどれだけ割合を割けるかというところ。いろいろな観点の中で、その割合を増やしていくことがすごく難しい。今の経営状況の中で、最大限のコストパフォーマンスを出していかなければいけない、という難しさがあった。
この二極の部分を踏まえてスタートということは自覚していましたし、現場にも共有した中で、それでもやっていこうとスタートしていきました。そのぐらい厳しいという認識は持っていました。
それに対してポイントになるのは、今季のスタートというところで言うと、(田中)駿汰などが抜けた最終ラインの安定感をどう構築していくかというところが、一つ大きなポイントとしてあって。同時に小柏も出て行ったわけですけど、攻撃に関しては個の能力を埋めきることはできないけれども、一方でここまでやってきた熟成したコンビネーション、2人、3人、4人というグループで埋めることはできるんじゃないかという対応を考えていました。
具体的には髙尾などが新しくこのチームに入ってくれて。髙尾はそれに違わない活躍を最後の方でしてくれたと思うけど、残念ながらその髙尾も含めてキャンプでケガ人が多く出てしまった。さらに開幕の前日にGKで大きなケガがあったという中で、「DFラインを構築していく」というキャンプをなかなかすることができず、かつ限られた現有メンバーの中で構築してきたものも、開幕前の高木駿のアクシデントなどもあって、開幕からの5試合、特にすることができなかったというのが大きな要因だなと思っています。
キャンプでグラウンドが硬いなどの報道がありました。間違いなくそれは事実としてあったわけですけど、ただ残念ながら、それはここ数年の沖縄の気候からなる状態であって、我々の使ったキャンプ地のグラウンドだけが硬かったわけではなく、沖縄全体の地域の問題としてあった。そこは僕らが変えられない部分でもあるので。じゃあ変えられる部分は何なんだ、というところで、来季に向けては新しい試みをしていこうと考えています。
シーズンが始まっての5試合で、なかなか思い通りにいかない中で、自分たちのサッカーをやり切ろうと思いながらも、次なる選手ということがなかなか使えなかった。チーム力を夏まで底上げをすることができない中で、リーグ(前半戦)を終えてしまった。というのが、前半の大きなポイントだった。結果、皆さんがご存じのように、(ここ7年間で)過去最低の勝ち点の取得というような状況で前期を終えるしかなかった。
後半の巻き返しというところで、そこまでも多くの方にご支援いただきましたけども、さらにそこからパートナー企業を中心にいろいろな形の支援をいただき、その支援の輪が道民、市民、サポーターに広がった。それ以降のホームゲームで、特に勝ちに行くんだ、という雰囲気に関してはすごく大きな力になった。同時に、得た収益というものを中断期間での外国籍選手含め、数人の選手の獲得費用にということで使わせてもらった。新しい選手として大﨑であったり、パクミンギュであったり、白井なんかが少しずつゲームに出てきたなというところが、持ち直す大きなきっかけになったと思います。
なのでホームでつくってくれたあの雰囲気と、そういった現象を生かした中での戦力補強というところで、結果的にもう一度、競争がチームの中に生まれたなと思っていますし、さらにそこを継続していくことがJ1残留に間違いなく近づく一つだろうということを信じて、決断してやってきた。最後の最後、前半戦で取り逃がした分をまかなうまでの勝ち点を後半戦で得ることができなかったという結果が、最終的にこのJ2降格という結果になってしまったと思っています。
―降格決定以降、複数のパートナー企業がSNS等で来季の支援継続を宣言していた。シーズン終了後、どのような反応があったか
非常に温かい声をいただいたというのが、まず事実ですね。誰一人、今季で残念ながら関係を終えようというお話は一つもなく、来季も継続して頑張りましょう、ということと、自分たちは来季も応援するので1年でのJ1復帰を、ということを全社の方々からお声がけいただいて、非常に感謝しています。
僕個人としては、やはり厳しいことを言われることも当然あると思っていますし、それがときには今後のクラブのプラスにもなっていくことだと思っていますので、それも受け入れなければいけないという思いでいましたけれども、皆さんそういうお言葉で。ありがたいと同時に、僕個人にはもっと厳しい言葉もいただくべきなんじゃないかな、というのは個人的には思っています。
―ケガ人対策への新しい試みという話があったが
監督が考える今日のメニューだけではなく、1週間、1カ月のメニューの全体像というものをよく把握した中で、フィジカルコーチが今、明日、今週、どのくらいまでの体をつくっていくべきかということを、しっかりとコミュニケーションを取っていくということを、もっと増やさなければいけないなというのが一つです。
二つ目は、そのコミュニケーションを主としながらも、一方で客観的にデータ等々を見て、このトレーニングがどれだけの負荷になり、どれだけのケガのリスクにつながるか、ということを客観的に見る役割、そういうコーチも必要なんじゃないかなと思っています。
なので、一番最初に監督の考えるトレーニングというものの全体像を出してもらいつつ、フィジカルコーチには監督のイメージをつかんだ上で、しっかりと1カ月先までのコンディションづくり等々のトレーニングメニューをやっていくということを第一にしながら、まだ正式名称は決めていませんけども、パフォーマンスコーチというような役割のコーチを新設しようと思っています。
各選手の状況、疲労度、そういったデータ等々を見て、例えば「今日の練習は60分以内に、この強度の中で収めてください」というような、客観的なものを監督、フィジカルコーチに伝えられるような、パフォーマンスコーチの導入というものを二つ目の打ち手として、現状で考えています。
(人選として)一番可能性が高いのは、その役割を担える人間を外部から招へいしようと思っています。
―キャンプ地のグラウンドの硬さへの対応策は検討しているか
既に今年の10月に、うちのスタッフを派遣させてもらって、現時点での我々が使う金武町のグラウンドの状況というものを把握させてもらっています。グラウンドメンテナンスをやっている方と、キャンプがスタートするまでのグラウンド補修計画なんかを確認させてもらっています。
一方で僕らクラブとしては、普段使っている石屋製菓さんの我々の練習場の状態はすごくいいと思っていますので、管理しているグラウンドキーパーさんにもZoom(ミーティング)に入ってもらって「こういう形で改善できませんか」というような我々の考えは伝えさせていただき、そこからは3週間に1回程度のリポートを現地から上げていただいており、地元の方とも協力して最善の方法を取っていきたいということで、今も続けています。ただ、やはり硬さはあるな、というのは正直なところだとは思いますね。
―岩政氏を新監督にした理由と、期待している点は
最終的には今シーズンで新監督を迎えることを決定したわけですけど、シーズン前から、もっと言うのであれば昨シーズンも含めて、常にミシャのあとの監督というのを考えなければいけないと常に考えていました。
そのときに考えていた大きなポイントとしては、この攻撃的なスタイルを継承できうる指導者であるということ、さらにその哲学というものを曲げないという、そういう強さも併せ持つ人だということを、まず第一に考えていました。
ミシャさんには攻撃に一気に振った中での「サッカーマインド、文化といったものを根付かせてください」という話をしていて、例えば競争だとか緻密さというのは度外視してでも攻撃的なものを、ということをお願いしていたので、次はその攻撃的な要素に、チーム内での競争も起こさなきゃいけないと思っていましたし、緻密さを持たなければいけないなと思っていたので、そのマインド、哲学を曲げない、さらにこういう緻密さと競争という原理をもたらしてくれる指導者ということを、二つ目のポイントとして挙げていました。
三つ目としては、ミシャさんのときも同じですけど、コミュニケーション能力というのをクラブとして非常に重要視しています。僕たちのクラブは本当に皆さんあってのものですので、ただ単に選手とのコミュニケーションだけではなく、メディアの皆さんであったり、パートナー企業の皆さんであったり、当然、僕ら強化部を含めたフロントサイドとのコミュニケーションというのは、絶対に必要な要素だと思っています。
それら三つを大きな柱にして、ここ数年、そのような指導者はいないかとクラブとして探してもらって、今シーズンが始まる前の段階で、実は4名程度に絞らせてもらっていました。
ただ、それはあくまでも今シーズンで(監督を)切り替えるということを決めていない状況の中で、この4名の方にクラブとして興味を持っていた。最終的に夏のタイミングで今季はミシャ監督とやり遂げるけども、これを集大成とする、というクラブの意思を決定したときに、イコール25年シーズンは監督を代えると、初めてクラブとしても決断させてもらいました。そのタイミングでこの4名の候補の監督方とそれぞれお会いさせてもらったりして、改めてサッカーの考え方、北海道に感じる可能性、いろいろな分野で話をさせてもらい、最終的に2名の指導者に絞った中で、岩政さんに決めたというのが経緯です。
じゃあなぜ最終的に岩政さんになったのかを言うと、先ほど言った三つのところを持ち合わせているところ。クラブとして考えていたことの一つとして、なぜこの攻撃的なサッカーをやるのかというのは、北海道に携わる多くの人に「サッカーって何対何の試合が楽しい」って聞いたときに、多くの人が3対1の試合だった。僕らはここ(北海道)で活動していくのであれば、みんなが見たいと思うようなゲームをやりたいというところからまず、攻撃的にということでミシャにやってもらいました。
要するに、北海道の方が求めているようなエキサイティングな試合を今後も見せていくことであったり、それが札幌のサッカーだというふうにしていくことが一つで。もう一つは本当に選手の成長にもつながるなと。このサッカーをするからこそ、もしかしたら他のクラブからは声もかからなかったような、例えば大卒でうちに来た選手も、決して当時から注目を受けた選手ではなかった。こういう選手が成長できうるサッカーだっていうことを信じていたからやってきました。その上には、このサッカーだから勝てるんだ、というのを僕らクラブとしても思っています。
なのでこのサッカーをやる理由が、みなさんが、道民、市民、サポーターが見たいと思っているエキサイティングなゲームだ、預かった選手、一緒にやっている選手も成長できると思っているところまでを、ここまで表現できた中で、最終的に勝てるんだ、日本で勝てるんだ、アジアで勝てるんだ、というふうに僕らは思っているので、それを具現化するために本当に必要な監督は誰なんだって考えたときに、岩政は「このサッカーが勝てる理由だから、自分はこのサッカーをやり、このサッカーを追い求めている」という考え方の指導者なので、この監督ならばそこに向かって、今はまだ「ミシャサッカー」と言われているような部分が、本当の意味での「札幌のサッカー」「コンサドーレのサッカー」って言える大きな一歩になっていくんじゃないか、ということが、最終的に岩政を選定させてもらった大きな理由です。
―中長期的に指揮を執ってほしいという意向もあるか