山本晃大 フォーム変更のきっかけは宮西&正義&金子コーチ 「正義さんと温泉に行って、車の中で…」
勝負の3年目へ 手応え十分の新フォーム
日本ハムの山本晃大投手(25)が勝負の育成3年目となる来季、腕を10センチ以上下げた新フォームで挑む。
今季の終盤から改良に着手し、「自分の中では結構、リリース(ポイント)を下げて、それで空振りが取れるようになりました。球速もちょっと上がったんですよ。これ、良いんじゃないかなと思って、そのまま続けています。(10月の)フェニックス・リーグでも結構、つかめた感じがあったので」と手応えを感じ始めている。
進化を続ける大先輩の鉄腕から学ぶ
シーズン中のフォーム改造にはリスクが伴った。それでも、3人の尊敬する先輩たちに背中を押され、挑戦を決意した。
まず1人目は、今季プロ17年目にして見事な進化を遂げ、前人未踏の400ホールドを達成した宮西。関学大の先輩でもある鉄腕には公私ともにお世話になっており、リスクを恐れず変化していくことの大切さを学んだ。
あらためてリスペクト 「あれだけ結果を残している人ですら」
「宮さん(宮西)が去年と今年、ファームに結構いて、誰よりも走っている姿を見て、あんなに結果を残した人が、あれだけ走っているのに、何も結果を出していない自分がやらないわけにはいかないと、いつも思っていました。今年の4、5月は、辞める(引退する)気でいたと(宮西)本人も言っていたじゃないですか。確かに4、5月は何かそんな気もするかもっていうのは後輩として感じていました。練習の中でも、妙に明るかったり、後輩ともすごいコミュニケーションを取っていて、吹っ切れている感じがあったので。なので、辞める気だったと後から聞いて、やっぱりそうだったんだと。今まであれだけ結果を残してきた人が、そうやって吹っ切れるのがすごい。今年でいえば、(新たに改良した)チャンジアップですよね。宮さん、ファームの試合なんて、ほとんどチェンジアップしか投げていなかったですから。だから、僕も変わらないといけない。あれだけ結果を残している人ですら、変わろうとしている。僕も何かを変えないといけないと、宮さんを見て思いました」
夏場に守護神と急接近 ハッとした一言
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何かを変えないといけない―。頭では分かっていても、どう行動に移せばいいか悩んでいた。そこで、2人目の〝きっかけ〟に出会う。ほぼ同時にチームに入団したものの、今夏まで話したこともなかった田中だ。1軍で守護神を務める先輩が、8月に登録を抹消された際、鎌ケ谷で行動を共にした。そこから交流が始まり、すぐに2人で温泉や食事に行くほど仲良しになった。
夏の終わりのある日。試合後に山本晃が運転する車で食事に向かった。すると、助手席の田中正から「ちょっと、きょうのおまえの試合、見せてみろ」と声をかけられた。突然、始まった2人きりでの〝車中反省会〟。映像を確認した先輩右腕は「何か、変えようぜ」と、核心を突いてきた。
スマホで確認しながらアドバイス
「車の中で、『ちょっと、きょうのおまえの試合、見せてみろ』って言われて、僕のスマホで映像を見てくれて。そこで『何か、変えようぜ』って正義さんから言われて、『何か変えないと、このまま終わっちゃうぞ』という話もされて。『このままじゃダメだぞ』と。僕も薄々、今のままでは通用しないなというのはずっと思いながらやっていて、何も行動できていなかったところで。その後、シーズンの最後の方は腕を下げて投げて、(11月の)ファンフェスの時には正義さんに『どう? 下げて、あれから良くなっているの?』という感じで気にかけてもらいました。優しさもありますし、言いづらいこともはっきり、ズバッと、僕に言ってくれる。正義さんもソフトバンクで苦労して、何かを変えてきたからこそ、僕に言ってくれたんだと思います。本当に感じるものがありました。正義さんはずっと1軍にいる、僕はずっとファームにいる、で夏まで接点が全くなくて、1回も話したことなかったんですよ。まさか2人で休みの日に温泉に行くことになるとは思わなかったです(笑)」
同じタイミングで金子コーチからも助言
3人目は金子2軍投手コーチ。田中との車での会話と全く同じ日に、沢村賞右腕からも同様の助言を受けていた。
「ちょうどその時に、金子コーチとも『リリースをちょっと下げてみたら』という話をしていたんです。これはもう良いタイミングだなと思って。正義さんからは、腕を下げろと言われたわけではないんですけど、正義さんにも『実は、金子さんときょうお話して、ちょっと腕を下げてみたらと言われていたんですよ』って言ったら、『おお、いいじゃん』って賛同してもらって」
勇気をくれた3人 「今だなと」
田中からの「何か、変えないと」という後押しと、金子コーチからの「リリースを下げてみたら」という助言のタイミングがピタリと重なった。
「これだけタイミングが重なるなら、今しかないなと思えた。シーズン中にリリースポイントを下げるのは難しい。けど、金子さんと正義さんから言われたので、今だなと」。宮西も含めた3人から大きな影響を受け、支配下昇格を目指す左腕は新しい一歩を踏み出した。
沢村賞右腕のピッチング理論に感銘
金子コーチからのアドバイスは、具体的で的確だった。
「もともと、そんなにオーバースローでもないんですけど、自分の投げ方は下半身が横回転する。なので、金子さんは『(リリースを)下げるというより、下(半身)に合わせるイメージで』と。腕を下げることを意識して下げちゃうと難しくなるから、そこは意識はせずに、体の回転に合わせるようなイメージでと言われて、いろいろ変えました」
10月のフェニックス・リーグで納得の投球
効果はすぐに実感できた。
「自分でシーズン最初のピッチングフォームと、後半のフォームを見たら全然、違う。10センチ以上は(リリースポイントが)下がっているはず。(10月の)フェニックス・リーグがシーズン最後の登板で、一番良いピッチングができたので、このオフはそれを忘れないように。そのままキャンプを迎えられるようにしたい。来年が楽しみです」
照準は春季キャンプ最初の実戦
現在はすでにブルペンでの投球も行っており、1月からは今年と同様〝チーム宮西〟の一員として合同自主トレに参加する。
「宮さんとか堀さんと、よーいドンで1月スタートじゃ、自分は遅い。そういう立場ではないので。1月の時点で、あの人たちよりもでき上がった状態で行く。 僕ら(育成選手)の場合、2月が大事。キャンプでシーズンが決まっちゃうぐらいなので。来年はラストチャンス。今年はいきなり、最初の紅白戦で先頭打者の有薗にホームランを打たれた。失敗を繰り返さないように、今はキャンプ1発目の先頭打者を抑えるために練習しています」
目標は1軍で、お世話になった宮西や田中と同じ試合のマウンドに上がること。変化を恐れず挑戦を続け、必ず夢の舞台に上がってみせる。