札幌大谷が秘策 プレミア王者・大津封じの鍵は初戦先制点のFW真浦【全国高校サッカー選手権】
千葉の市原市内で調整
全国高校サッカー選手権1回戦(29日、柏の葉)で9年ぶりの勝利をつかんだ札幌大谷は、31日に行われる2回戦の大津(熊本)戦へ向け、千葉県の市原市内で調整を行った。1回戦の寒川(香川)戦で後半13分に先制点を決めた〝英雄〟、FW真浦劉(3年)は今大会を最後に競技生活を引退する。まだ仲間とサッカーを続けるためにも、今季のU-18プレミアリーグ王者から全国大会2戦連続のゴールをもぎ取り、ジャイアントキリングを成し遂げる。
「難しいけど勝てないこともない」
劇的勝利の翌日にもかかわらず、ハーフコートでのミニゲームやPK練習など、約90分に渡って精力的に汗を流した。ミニゲームで真浦は2セットともトップの位置でプレーし、得点感覚を研ぎ澄ませた。
寒川戦の前には大津の1回戦が行われていたため、直接そのすごさは肌で感じ取ることができた。「自分たちの攻撃の部分では、相手の両センターバックどっちともうまかったし、でかかったし、速いですけど、どこかに抜け目はあると思う。その一瞬の隙を見逃さないで、そこを突くことができれば何本かチャンスはあると思う。そこをしっかり決めきれれば、難しいゲームではあると思うけど、勝てないこともない」。今年の高校世代ナンバーワンからも十分勝利はできると宣言した。
勝負強さに定評ある真浦
北海道大会決勝の旭川実業戦でも1-1から決勝弾を決め、4年ぶり優勝に貢献。勝負強さには定評がある。先発した寒川戦は後半13分に左クロスからの豪快ヘッドで先制弾。「(クロスは)速くて、低くて。相手も出るに出づらいボールで、キーパーも取れない位置で、 結構ドンピシャのクロス。あのゴールがなかったらPK戦にもなってなかった。 チームに貢献できたと思うので良かった」と、自身でも会心の一撃だった。同39分にベンチに下がると、その2分後に同点に追い付かれてしまいPK戦ではベンチでは祈るように勝利を見届けた。
指揮官「勝てる展開があるとしたら…」 起点潰しながら打ち合いに持ち込む
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王者に真っ向勝負を挑む。清水隆行監督(49)は「僕の感覚だとカテゴリーが違う。高校生じゃない。もう1個上」。大津と1回戦で戦った福井商業は6-3-1の布陣で守備を堅めたが、0-4で敗退。「自分たちでボールを持つ時間をつくらないと多分80分は耐えられない。ゴール前を堅めて守備をするのもあるんですけど、やっぱり能力が高いからそれでも失点すると思う。だったらボールを出す選手に時間を与えない。プレッシャーをかけにいかないと、精度の高いボールが入ってきちゃう。失点しないのも無理だと思う。勝てる展開があるとしたら、先に点を取って、イメージとしては4対3とか、そういうゲームじゃないと逆に勝てないと思ってる」。打ち合いに勝利の可能性を見いだす。
真浦に期待するのは攻撃より守備
そこでカギになるのが、真浦の存在だ。指揮官は「フィジカル的な部分とか、速さとか、あとは守備の貢献がすごく高い。僕、彼には実はあんまり得点を期待してなくて。プレスをかけるのが速いし、連続でプレスをかけられる。1回行って終わらないで、もう1回行くとか。後ろ(の選手)からすると、彼がいるとありがたい」。真浦の前線からのプレッシャーで、相手の起点を封じることに期待する。
学業も優秀 家族の夢のためにも
真浦の学校の成績は部内でトップ。学年全体でも10番以内だという。中学卒業後は公立校の受験も考えていた。「最初は、高校もサッカーをやらないつもりだったんですよ。でも親への感謝っていうのがあって。親にとって高校での夢だったんですよ、この舞台が」。また、五つ上の兄・黎さんは道大谷室蘭に進んだが、腰椎分離症で選手を諦め、最後は応援団長としてチームを鼓舞した。「選手権の舞台が、兄ちゃんの夢でもあったし、家族の夢でもあった。そこをかなえれたっていうのは、一つ親孝行できたかな」。思い残すことはない、あとはできるだけこの舞台で戦えるように全力を尽くすだけだ。
まだまだ終わらせない
3年生のほとんどは進学して競技を続ける予定だが、真浦は大学に進学しても競技生活はこれが最後だという。だからこそ「サッカー以外のことでも、みんな仲良くて、楽しいメンバー。このメンバーと一日でも長く一緒にいたいので、大津戦も点を決めて、頑張って勝ちたい」。名前の由来は三国時代の英雄の一人、劉備玄徳から。自らのゴールで王者を倒し、全国で名を挙げる。