2季ぶり復帰の吉村紗也香がフォルティウスけん引 日本カーリング選手権優勝が五輪出場への絶対条件
日本代表決定戦へ持ち込む
2026年ミラノ・コルティナ五輪日本代表選考を兼ねた日本カーリング選手権が2月2日から神奈川・横浜BUNTAIで開催される。21年12月に発足したフォルティウスは、今大会を制して9月に稚内で予定されている日本代表決定戦に持ち込むのが絶対条件だ。スキップの吉村紗也香(32)は出産を経て2季ぶりにチームに復帰。悲願の初五輪へけん引する。
昨年の優勝はSC軽井沢
崖っぷちから日本代表の座をつかむ。昨年の日本選手権はSC軽井沢クラブが優勝しているため、フォルティウスに残された日本代表への可能性は今大会での優勝のみだ。1月8日には報道陣に練習を公開。スキップの吉村は3週間後に迫った絶対に負けられない戦いへ、「あとはやるしかない。勝つだけなので、そこのてっぺんを目指して、今できることをやっていくだけ」と気持ちを高ぶらせる。
出産経て復帰後すぐの軽井沢国際でV
吉村は23年12月に長男を出産。23-24シーズンは休養に充て、今季2季ぶりに復活した。カナダ遠征を経て迎えた昨年12月の軽井沢国際選手権。昨年の日本選手権優勝のSC軽井沢クラブや海外チームが出場する中、準決勝で世界2位のスイス、決勝では同5位のスウェーデンを下して優勝した。
「カーリング人生の中でこれだけ休んだことはなかったけど、その中で復帰するって決めて、ここまで状態を戻せたところは自信になりました。自分がプレーすることは、周りの支えがないとできないことなので、その支えがあって今ここに立てていることにすごく感謝してます。この状態までもってきてくれたトレーナーさんにも感謝しています。いろんな意味で覚悟が強くなった」。フィジカルのみならず、メンタル面でも成長し、見事に氷の上にカムバックした。
21年日本代表決定戦でまさかの悪夢「もっと何かできたんじゃないか」
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悪夢は自らの力で払拭する。五輪切符への条件は4年前と全く同じだが、置かれた環境は全く違う。21年日本選手権で優勝。同年9月に行われた北京五輪日本代表決定戦では、前年度優勝のロコ・ソラーレと3戦先勝方式で争い、2連勝からの3連敗。あと1勝で手が届くところにあった五輪切符が、目前でスルリと逃げていった。
五輪を逃したショックに追い打ちをかけたのがメーンスポンサーとの契約終了だ。21年12月にフォルティウスを発足。年間4000万円~5000万円が掛かるとも言われる活動費は他のスポンサーだけではカバーしきれなかったが、クラウドファンディングを行って資金を集め、海外遠征などでチーム力アップを図ってきた。
吉村自身は前回が4度目の五輪挑戦だったが、その時の敗退が一番脳裏に焼き付いている。「残り1試合、勝ったら決まりってところで、その前の段階で、もっと何かできたんじゃないかって終わってみて感じた」。前回とは違う。同じ轍は絶対に踏まないと心に決めている。
高回転ショットを習得中
〝秘策〟も着々と準備している。カーリングはストーンをリリースする時、わずかに横回転を加えて軌道をコントロールするが、より高回転の「スピナー」と呼ぶショットを習得中だ。「今まで、ないと思っていたショットが、回転をかけることで可能になる。ショットの幅が広がった」。この日に試した手応えも上々。試合を左右する勝負どころで使用するつもりだ。
どんなアイスでも対応できるように
今大会が行われる会場はカーリング専用ではなく、多くの観客を収容できるアリーナ施設で、日本選手権は初開催。会場内の気温の変化により、氷のコンディションは刻々と変化する。シートごとのクセをつかむのも頂点を目指す上では必須条件だ。「横浜のアイスはどのチームも経験したことがない中での戦い。どんなアイスでも対応できるように準備している途中。(札幌で)練習試合だとかリーグ戦もあるので、ゲームをやりながら最終調整している。みんなが気持ち良く投げることができた状態で日本選手権を迎えられたら」。1年1カ月先の五輪へのロードはいよいよ終盤戦。チーム名の由来はラテン語で「より強く」。いまこそ体現する。
■21年の日本選手権優勝を経験している近江谷杏菜(35)
「日本選手権での優勝を通過点として、オリンピックで金メダルを目指していく中で、2021年の優勝の時は自分たちが必要としている準備がしっかりとできた状態で、優勝する前からとてもリラックスした状態で決勝戦を迎えられた。その朝のことをすごく覚えている。今回も自分たちの結果が出る前から、ここに向かって準備してきたって思えるような準備を、この1カ月でしっかりと積み上げて、オリンピックで金メダルを獲れるようなチームがするプレーを日本選手権の決勝戦でもできるように、いいイメージを持って準備を進めていきたい」
■22年9月に加入した小谷優奈(26)
「優勝することの価値をすごく感じている。前回のオリンピック(予選)も、私はその決勝にも行けなかったので、やっぱり悔しい思いもありますし、去年の日本選手権も2次リーグで敗退してしまった。そういう悔しさもある中で、今シーズン取り組んできて、いい経験があったから優勝できたって思えるような大会にしたい」
■チーム最年少のフィフス・小林未奈(22)
「試合に出る機会はあまりないかとは思うけど、チームにとって絶対に必要なポジション。私がいたからチームが優勝できたって思ってくれるように、チームに貢献していきたいですし、常にどんなことがあっても私がポジティブに支えていく存在でいたい」