老舗旅館の跡継ぎ候補・小林朔太郎が圧巻フライトで最長不倒【HBC杯ジャンプ】
■HBC杯ジャンプ(1月13日、札幌・大倉山ジャンプ競技場=ヒルサイズ137メートル)
2025年最初の国内ジャンプ「HBC杯」が13日、札幌・大倉山ジャンプ競技場で行われ、男子は1本目に着地で転倒した小林朔太郎(24、雪印メグミルク)が、6位で迎えた2本目に最長不倒の135.5メートルをマークして2位に入った。昨季、ノルディック複合から純ジャンプに本格転向すると、海外W杯初戦となる年末年始の欧州ジャンプ週間で初ポイントをゲット。伸び盛りの新鋭が、1年後のミラノ・コルティナ五輪代表へ名乗りをあげる。
純ジャンプに本格転向したばかりの注目株
ジャンプ界の〝小林〟は陵侑だけじゃない。今季途中にコンチネンタル杯からW杯へ昇格した注目株が、2本目に圧巻のビッグフライトを披露した。逆転優勝こそ逃したが、6位からジャンプアップ。着地後、両手をパンとたたき「悔しいです。慧一さんに優勝を持っていかれたので、1本目ちゃんと立っていれば」と悔しがった。それでも絶対条件に掲げていたチームのワンツーフィニッシュという結果を残し「チーム全体の技術も上がってきて、いい流れにある」と頷いた。
異色の経歴だ。神奈川県出身。父・恵生さんが1887年創業の群馬・草津温泉「奈良屋」の6代目。のれんには「徳川将軍おくみ上げの湯」と記される由緒正しき老舗の温泉宿だ。父が湯守を継いだ小学校に上がるタイミングで、一緒に草津に移り住んだが、ジャンプとの出合いは「母の勘違い」から。校内マラソン大会のような全校参加のイベントだと思ってジャンプ大会にエントリーしたものの、直前に、経験者しか出ないと知ったが「申し込んだからには出します、と母親が言ったために始まっちゃった競技」と苦笑い。でも「楽しかったですよね。ふわふわしてて」と、競技にのめり込んだ。将来的には7代目を継ぐかどうか「まだ分からないです。今はスキーが楽しくてやっているので。好きなようにやらしてもらってるので、自由にジャンプやってます」と、いまは北の大地で夢を追いかける。
父は草津温泉「奈良屋」の6代目
慶大4年時のユニバーシアードでは、複合の個人団体で三つの金メダルを獲得。だが「このままオリンピックに出たとしても、やっぱり目指すのは世界のトップ。どうやったら世界で1番獲れるかな、って思った時に、得意なジャンプを磨く方が近いのではないのか」と、競技転向を決断。昨季は全日本選手権ノーマルヒルでいきなり6位に食い込むと、24年1月のコンチネンタル杯札幌大会で結果を残して同2月のW杯札幌大会に初出場。今春から名門の一員となった。