梅林優貴 ムーキー・ベッツと過ごした奇跡の3日間! 「今、おまえのフォームで直せるところが何点かある」
来日していたドジャースのベッツ(右)と会食し、記念撮影する梅林=本人提供
大谷と1、2番コンビを組むあのMVP男とコラボ!
日本ハムの梅林優貴捕手(26)が、来日していたドジャースのムーキー・ベッツ内野手(32)から3日間、合計3時間超のマンツーマン打撃指導を受けていたことを明かした。
18年にはメジャーでMVPを獲得し、昨季は大谷翔平投手(30)と1、2番でコンビを組んでワールドシリーズを制したスーパースターとなぜ出会い、いかにして濃密な時間を共有することになったのか。詳しく聞いた。
共同通信
心躍る1本の電話 「マジか!ってなりました」
奇跡は、1本の連絡から始まった。ベッツが来日する19日の朝、知り合いのドジャース関係者から、「東京都内に練習ができる広めの室内練習場はないか」と相談を受けた。要望に合う練習場を数カ所教え、流れで「誰が練習するの?」と聞くと、返事はまさかの「ベッツだよ」
「僕は、スマホのフォルダに、ベッツの動画をいっぱい入れているぐらい好きなんですよ。バッティングフォームのスロー映像とかも入れています。マジか!ってなりました」と心が躍った。
逃してなるものか! 千載一遇のチャンス
憧れの選手に会えるかもしれない。梅林は迷わず動いた。「もちろん、相手はトップスター。絶対に迷惑はかけないから、一目見せてくれってお願いしました。そしたら、手伝いみたいな形だったら大丈夫と言われて」。施設への連絡など雑務も引き受け、いよいよ対面の時を迎えた。
練習後に受けた食事の誘い 「ご飯に行くか」
成田空港からホテルを経由し、来日してすぐに練習場に現れたベッツ。梅林は「マジでベッツや…」と驚きながらも約10分、ノッカー役を務めた。すると、終了後に思わぬ声がかかる。「僕が練習場を手配したことを伝え聞いていたみたいで、『ご飯に行くか』となって」。ベッツ、ブリアナ夫人、関係者らと6人で食事を共にすることになった。
さすがはスーパースター! 「何でも聞いて」
当然、会話は英語。当初、話に加われなかった梅林は「マジで何を言っているか全く分からない。朗希とか、翔平とか、そのへんは分かるんですけど、そこしか分からなくて。場違いだったかなと思った」と落ち込みかけた。
しかし、不安は杞憂(きゆう)だった。ベッツから「何か聞きたいことあったら何でも聞いて」と優しく声をかけられ、「最初は奥さんもいたので、あんまり野球の話をしない方がいいのかなと思ったんですけど、バッティングの話を少し聞きました」と、意を決して質問した。
鎌ケ谷の自主トレ中、打撃練習に向かう梅林
夢のような時間 合同自主トレの誘いも!
ここから、ベッツとの関係が急加速する。
「めっちゃしゃべって、めっちゃ教えてくれたんです。ベッツから『どんなバッティングをしているか見せてくれない?』って言われたので、僕の映像を見せて。そしたら、『今、何点か、おまえのフォームで直せるところもあるし、全部、丸っと変えることもできる。どっちが良い?』って言われて」。梅林は「丸っと変えられるなら、話を聞いてみたいです」と即答。すると、「あした(20日)、一緒にバッティングしよう」と〝合同自主トレ〟に誘われた。
濃密な2時間 「ウメが行けないなら違う場所にしよう」
この記事は有料会員限定です。 登録すると続きをお読みいただけます。
20日の練習場はすでに用意されていたが、梅林には行けない場所だった。しかし、ベッツが「ウメ(梅林)が行けないなら違う場所にしよう」と会場を変更した。
「(午後)2時ぐらいに始まって、ノックを20分ぐらいやって、そこから1時間半、僕のバッティングを見てくれました。ベッツから言われたのは、これまで聞いたことがない話だった。今まで日本で言われていた基本の、もう1個先みたいな話。例えば、(スイング中に)バットを離さないのは何でなのかとか、なんで肘を入れて打つのかとか、そのへんの話を細かくしてくれて、実際にダメな動きと、いい動きのレクチャーもしてくれました」と熱血指導を受けた。
目からウロコの〝熱血授業〟
「ベッツはマイナー時代から、やっている練習が一緒らしい。ボールに集中するスイングと、体の動きに集中するスイングに分けて練習するらしくて。スイングだけに集中していたら、(ボールを打つ)ポイントがズレちゃうと思うんですけど、それは関係ないらしいんですよ。スイングが良ければOK。フリーバッティングでもゲームでも、いい打球じゃなくても、良いスイングができたらOKっていうのを維持しているから、ずっと波がなくいけるって言っていました。僕は19年頃からのベッツのスイングを実際にスマホに入れていたので、ベッツにも見せて、『僕には変わらないように見えるんですけど、何か細かいことは変えていますか』って聞いたら、『変えていない』と。 じゃあなんで、マイナー時代からやっている練習を続けられたかという話をしていた。2018年にMVPを取っているんですけど、その年のオープン戦はほぼ打てなかったらしいんですよ。でも、MVP。『最初は打てないこともあると思うけど、メンタルをぶらさなければ絶対に打てる日が来るから』という話をしていました。本当にそこの1点でした。メンタルをぶらさない。説得力ありすぎですよ」
世界一の技術論 動画を見返し徐々に理解
ただ、世界一の打者からの技術的な教えは、簡単には理解できなかった。「めっちゃ教えてくれたんですけど、ほぼ理解できなかったんですよ。やってみろって言われても、全然できなかったです。スタッフに、『日本の野球なめられるぞ』って言われるぐらいできなくて」
それでも、梅林は諦めなかった。マンツーマン指導の様子は全て録画していた。翌21日は1人で鎌ケ谷に足を運び、映像を見返しながら練習を繰り返した。「その時の会話も、もう一回、全部を聞き直して、めっちゃ練習しました。そしたら、あ、こういうことかって何となく分かって」。コツをつかむと、どうしてももう一度、ベッツに見てもらいたくなった。
〝補習〟も快諾 会見までの空き時間で
再び関係者に連絡を取り「どうしてもまた一緒にやりたい」と懇願。「22日はベッツが小学校で野球教室をしていたので、そこに来てと言われて、そこの控え室に行きました。そこで、またベッツにめっちゃ教えてもらって。野球教室が終わって、会見までの空き時間が10分ぐらいで、その間ずっとバッティングの話をしてくれて」
ベッツにおごったマックのポテト 連絡先交換も
ここまででも十分すぎるほどだったが、ベッツの優しさは規格外だった。「『この後どうする? バッティングする?』って、また誘ってくれたんです。ぜひ、お願いしますと言って。この日も僕が行けない場所だったんですけど、また違うところに取り直してくれました。会見後に移動したんですけど、ベッツは車がなかったので、僕の車の助手席に乗せました。急いでいたので、昼ご飯はコンビニに行こうってなったんですけど、ベッツが『マックあるか』と。それでマクドナルドに行って、僕がベッツにポテトをおごりました(笑)。そのまま練習場所に行って、まずはノックを打って、『おまえノック下手すぎるから代われ』ってなって(笑)。その後また1時間半、みっちりずーっと僕のバッティングを指導してくれて。内容は細かいので言葉では難しいんですけど、本当にすごい話をしてくれて。最後、帰り際に、これからも僕の打撃の動画を送っても良い?って聞いたら、『もちろん良いよ』と言ってくれました。ベッツが使っている海外の連絡用アプリをすぐに入れて、別れ際に連絡先を交換しました」
返信に大感動 梅林を「兄弟」
梅林はすぐに、ベッツ夫妻にそれぞれ感謝の連絡を送った。ベッツからは「bro! You can always send me videos and I will always help you! Good luck this season! I’m always 1 text away so feel free to text me any time!(兄弟! いつでも動画を送ってくれていいし、いつでも助けになるよ! 今シーズンの幸運を願っている! いつでも気軽に、連絡してきてね!)」と返事が届いた。
夫人からは「彼から教えてもらうのはすごい貴重なことだから、いろいろ吸収してくれたら私たちもうれしい」と励まされた。
梅林がベッツ夫妻に贈った箸セット
「素晴らしさをみんなに知ってほしい」
「とにかく、ベッツの素晴らしさをみんなに知ってほしい。本当にすごい良い人で、僕なんて日本の中でも誰も知らないぐらいの選手なのに、メジャーリーガーのトップの人が親戚を教えるぐらい、めっちゃ真剣に教えてくれたんですよ。練習中は、僕のためにティーを取りに行ってくれたり、ドリル用の椅子をダッシュで取ってきてくれたり、僕が打ったボールを普通に拾ってくれた。あんなにすごい人なのに、当たり前のように僕のために動いてくれるんです。何でもない質問にも真剣に答えてくれて、こんなことってないじゃないですか。 本当に想像もできなかった3日間でした」
これ以上ない経験 さあ2025年シーズンへ
奇跡を生かすも殺すも、自分次第。梅林は〝ベッツの教え〟を起爆剤に、レギュラー奪取へ突き進む。