コンサドーレ
2025/01/28 18:10

深井一希ロングインタビュー「選手としての終わりが近づいている。その中でも何とかやりたい自分がいる」

今季に懸ける決意を熱く語ったMF深井=撮影・松本奈央

 北海道コンサドーレ札幌のMF深井一希(29)が、道新スポーツデジタルのインタビューに応じ、ケガと向き合う現況や今季に懸ける決意を熱く語った。前十字靱帯(じんたい)断裂など両膝合わせて5度の手術を乗り越えた〝不屈の男〟は、ピッチの上で生き様を示すつもりだ。

両膝合わせて5度手術〝不屈の男〟

ー沖縄1次キャンプを過ごして
「個人的には去年の終わりぐらいから膝の状態が悪くて、キャンプの始まりと同時にどれぐらいできるんだろう?という不安を抱えていた。スタートは思ったよりできる感覚があったけど、途中から膝に水が溜まってきた。その後はチームと別メニューになりましたが、熊本キャンプから徐々に合流できると思います。チームは監督が代わって、やりたいサッカーをみんなが少しずつ理解して、試合を通して前進しているのが見えます」

ーキャンプ序盤はミニゲームにフリーマンで参加するなど順調だった
「フリーマンから実戦に近い練習に入って調整していたのですが、対外試合が始まる頃から膝に水が溜まりだした。そこはもう少しコントロールしてやらなければいけなかった。僕はこれだけケガをしていても、プレーしたい気持ちが強くなってしまう」

ー焦ってはいけない気持ちとプレーしたい気持ちの折り合いを付けるのは難しい
「一回全体練習に入ると、やっぱり抜けたくない。入って抜けてを繰り返すのは印象も良くない。毎年、毎年、葛藤しています」

ー膝の手術は計5回。乗り越えるたびに強くなる印象
「前十字靱帯だけで言えば5回ですけど、手術は12、3回受けている。そのたびに周りからのサポートや応援が励みになっています。周囲の人のために何とか復活したいし、期待に応えたい思いが強くなる。ケガはもちろんマイナス面が大きいけど、人としては一回りも二回りも成長できるのかなって思います」

ー若い頃はケガを成長の糧にしようと思える。今はどうか
「若い時は回復も早いし、復帰した直後も支障なくプレーできる。年を重ねるというよりも、僕の場合は(手術の)回数を重ねると徐々にもろくなってくるし、痛みも残る。ここ何年かはすごく苦しいシーズンになっています」

ー日常生活に支障は
「出ます。階段が痛い。やることをやってから動かないと、日常生活で結構な痛みが出ます。そんな状態でプロのレベルでプレーするのは、かなりの覚悟が必要です。ある程度『これが自分なんだ』って割り切らないと精神的に持たないことがある。階段は上るときと降りるときで痛みが違いますし、体は厳しいです」

1試合でも多くピッチに立ちたい

2019年10月26日ルヴァン杯決勝、後半アディショナルタイム、同点となるヘディングシュートを決める深井(中央)

 

ー痛みを抱えていてもピッチに立つ。その姿に胸を打たれる
「チームが契約してくれている以上は、自分のできることをやりたい。今年で30歳。練習を含めて、少しでもサッカー選手としてピッチに立てる時間を増やしたい。状態が良いときは、こんな自分でもまだまだできるという自信がある。なるべくコンディションをしっかり整えて、1試合でも多くピッチに立ってクラブに貢献したい」

ーこれだけ多くのケガを乗り越えたサッカー選手は類を見ない。客観的に自分をどう見ているか
「自分で言うのもなんですけど、本当によくやっているなって思います。この姿勢はきっとサッカー以外にも通ずると思っている。上手くいかないときも逆境に立たされたときも、それでも僕は前を向きます。そんな姿勢を、若い選手や物事が上手くいってない人に見てもらえたら嬉しい。前十字靱帯は1回でもケガをするとサッカー選手として致命的だけど、僕は5回もやっている。同じケガに苦しむ人たちにも勇気や希望を与えられる存在になりたい」

2017年4月8日札幌ドーム、スタンドに掲げられた〝不屈の男深井一希信じて待っている〟の横断幕

 

ー前十字靱帯は1度で選手生命の危機に陥る。何度も乗り越えられた要因は
「僕の場合は若い時に2回やっている。まだまだ上を目指したいという気持ちが強かった時期だったので、それが乗り越えられた1つの要因になります。若い時に2回も乗り越えられた経験があるので3、4、5回目となったときも、その頃の経験や気持ち忘れず、なんとか前を向こうという思いが強かったですね」

ー大ケガを何度も乗り越えて今なおプレーしている。ピッチに立つ時間は奇跡的と感じる
「5回目のときは担当医から『治るか分からない』と言われました。その状況からピッチに戻ることができたときは、いつも以上に嬉しかったです。自分の中でもチャレンジすることで、奇跡を起こせたなって思えて、すごく感慨深いものがありました。手術する前は、週に1回は膝から注射器2本分の水を抜いていた。結局、そのままではダメなので手術したのですが、精神的にも肉体的にも参りました。一切、膝が曲がらないから。自分の足じゃないみたいで、ぼっこ(棒の北海道弁)でした」

絶対に治すと覚悟を決めている

ーアスリートは大ケガの後、体を元通りに戻すことが難しい。違う体になったことを受け入れて、目指すパフォーマンスの方向性を変えるか
「その考え方はあくまでもデータや周りの声だと思っている。僕は僕。自分は元通り、今までのプレーをしたいと思っている。上手くいかないかもしれない挑戦だとしても、それは他人の声。僕は絶対に治すと覚悟を決めている。選手としてひたすら上にいきたいし、まだまだ上手くなりたい。その気持ちしかありません」

ー監督が代わった。岩政監督のスタイルは

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