【プロになった道産子球児たち 指導者の目線】高校編 ⑧北照・上林弘樹監督「可能性ない」はずだった高橋幸佑
間近で見てきた3人のプロ選手たち
北海道から誕生したプロ野球選手の学生時代を見てきた指導者に話を聞く企画「プロになった道産子球児たち 指導者の目線」。高校編第8回は北照の上林弘樹監督(45)を紹介する。上林監督は同校のOBで、高校同期には1997年のドラフトでヤクルトから3位指名を受けて同校初のプロ選手となった大脇浩二さん(45)がいる。大学卒業後に指導者となり、同校の部長を経て2017年1月に監督に就任すると、24年ドラフトでは監督として初めてのプロに左腕・高橋幸佑投手(18)を中日5位で送り出した。上林監督が間近で見てきた大脇さんの学生時代、部長だった時にプロ入りした斎藤綱記投手(28、現中日)、入学時に無名だった高橋のそれぞれ転機となったものとは―。
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教え子のキャンプイン
教え子のプロ初キャンプがいよいよ迫ってきた。沖縄へ出発する前日の1月29日、高橋から「明日から沖縄に行きます。移動日です」と連絡があった。「侍ジャパン(U-18)に行くときにも言ったけど、とにかく誰よりも早くグラウンドに入れって。しっかりあいさつをしようと。高校生らしく、新人らしく、フレッシュにやってこい」と送り出した。
驚きだった同期のドラフト指名
同校からのプロ入りは高橋で13人目。第1号の大脇さんは、上林監督にとって「親友。(大阪府)高槻市出身で中学から一緒に来たんです」。今で言う野球留学だ。一番印象に残っているのは3年夏の南大会1回戦の室蘭大谷戦(現道大谷室蘭)。大脇さんは「4番・遊撃」で上林監督が「6番・捕手」。「左ピッチャーやったんで、(大脇さんは)狙ってホームラン打ってくる」と言って、宣言通り右翼芝生席へ運んだという。ドラフト指名時には、「最初みんな『はあ?』みたいな感じやった。何言ってんの、みたいな。でも今から記者会見やるからっていうので、みんな『えっ!?』ってなった」。ヤクルトではケガに苦しみ1軍での出場はないままに引退したが、今も交友関係は続いている。
中日でもストイックで有名な斎藤
昨季限りでヤクルトの捕手だった西田明央さん(32)が引退し、現役最年長OBは中日の斎藤投手となった。「去年の暮れは来られなかったけど、(オフは)毎年ここに来て練習をして帰りますね」。期間中は毎朝8時前から午後1時過ぎまで練習すると、「札幌のジムに行くんで」と、スケジュールはいつもびっちりだ。「ストイックなんですよ。中日でも有名みたいですよ」。高校時代も冬の間、学校から約4キロ離れた旭展望台への走り込みを欠かさないなど、まじめで練習熱心な性格は当時から変わらない。
転機は3年時夏の小樽潮陵戦だった 変わらなかったスカウトの評価
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斎藤は1年秋の明治神宮大会、2年夏の甲子園と、早い段階で2度の全国のマウンドを踏んだ。3年春には全道優勝もしたが、「満身創痍だった。膝も肩も」。最後の夏は調子が上がらず、小樽支部予選の代表決定戦では小樽潮陵に2-2の七回に満塁弾を浴びるなど一挙7点を失って無念のコールド負け。上林監督は「ある意味、あれは斎藤にとっては転機になった。じっくり自分の体を鍛える時間にもなったと思うし、休むこともできた。あれからすごい自分で練習するようになりまし。元々練習するタイプだったけど、あれから黙々と走って、1人で黙々と練習していた」。夏が終わってもスカウトからの評価は変わらず、オリックス5位でプロ入りを果たした。
トレード移籍で地元・日本ハムへ
22年11月には、地元・日本ハムへトレードで移籍。23年5月10日ソフトバンク戦に移籍後初登板し、プロ2勝目をマークするも、直後の6月には再びトレードで中日へ移籍。上林監督はすぐに連絡を取ったところ、「良いタイミングでセ・リーグに移りました」と落ち込む様子もなく、前向きな姿に安堵したという。24年は中継ぎとして自己最多56試合に登板するなど新境地を切り開いている。
高橋はプレドの硬いマウンドで覚醒
高橋は札幌で生まれ、神奈川育ち。「斎藤以上に(プロの)可能性はない」と思っていた。しかし、いい意味で予想は裏切られた。体ができあがり始めた2年夏には最速140キロ弱。秋季全道の舞台となった札幌・大和ハウスプレミストドームで覚醒した。「マウンドも硬いし、やってくれるんじゃないかと思って。結局、試合には負けたけどMAX143キロを出した。ちゃんとこの冬を越えれば145、6キロは出る」と確信した。
横浜の選手たちに絶賛され自信に
3年春に侍ジャパンU-18代表候補合宿に招集。その時には145キロに到達。「ジャパンの合宿の最終戦が横浜高校で、投げた後に横浜の選手が今年見た中で一番良い左だよ、ジャパンでも自信を持っていけよ、みたいなことで声を掛けられてた。横浜育ちだし、やっぱり憧れもあるじゃないですか。自信を持ってジャパンの合宿に入って、そのまま行ったらちょっと目立った」。知名度は一躍全国区。最後の夏は甲子園に届かなかったが、北海道関係では上位指名の5位で中日入りした。
どんな先輩を見るかは大事なところ
偶然にも2人の現役OBが中日に集まった。「この前も2人で焼き肉に行きました、って連絡があって。斎藤がいるのが大きかった。斎藤はとにかく練習するので。誰につくか、どんな先輩を見るか、というのは大事なところ」。3月8、9日にはエスコンフィールド北海道で、日本ハムとのオープン戦が予定されている。「斎藤が来ると思うので、生徒たちを連れて見に行こうかなと。年末、高橋に『じゃあ3月8日のオープン戦な』って言ったら、『分かりました』って言うから、『来るわけないやろ、おまえはナゴヤ球場やって』」と、愛あるゲキを飛ばした。心の中では〝北照リレー〟の結成を待ち焦がれている。
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