高校野球
2025/02/18 12:00

【10年前の忘れもの】①日下部憲和(72) 準V以来の選抜甲子園に挑む東海大札幌高へ必勝エール

監督と部長で8度の甲子園を経験した日下部憲和さん=撮影・西川薫

校名変更後は初の甲子園

 東海大札幌高が北海道代表として3月18日に阪神甲子園球場で開幕する選抜高校野球に10年ぶりに出場する。前回出場の2015年に準優勝を遂げた同校は、16年の校名変更後は初の出場となる。開幕まであと1カ月となり、道新スポーツデジタルでは「10年前の忘れもの」と題して企画をスタート。歴代のOBから後輩への必勝エールを取材し、不定期連載をお届けする。第1回は15年の準優勝時に部長を務め、現在は大学の東海大札幌で顧問を務める日下部憲和さん(72)。1977年1月から2018年春まで系列の中学、高校で指導し、同校11度の甲子園出場のうち、監督と部長で8度を経験した。今回はエールをもらいながら、春と夏で一つずつ思い出に残る試合を振り返ってもらい、そこにまつわる秘話も語ってもらった。(学年は当時、敬称略)

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監督と部長で8度の出場経験

 故郷・長崎から札幌へ来て48年。校名変更前の東海大四時代から同校の歴史はほぼ知り尽くしている。年配のOBからは「ヨロシク、哀愁」の締め言葉で知られている名物指導者だ。18年春の高等部退職後は、高校より50メートルほど高台にある系列の大学、東海大札幌の野球部で後進の指導にあたっている。10年ぶりの甲子園出場には、「長かった。準優勝から、中々かかったかな」と一言。そして自らの経験から「夏と比べてね、バタバタ感はないですよね。早め早めにいろんなことを準備できる。やっぱり上位を目指してほしい。決勝まで5試合になると思うけど、一戦必勝で、できれば頂点に立ってもらいたい」。あの時、あと1勝で届かなかった全国制覇に期待を寄せている。

監督と部長で8度の甲子園を経験した日下部憲和さん

 

監督初陣での甲子園初勝利に男泣き

 思い出に残る夏の試合は、春夏通じて6度目の挑戦で甲子園初勝利となった1986年の1回戦だ。対戦相手は当時、野球王国と言われた四国・香川の尽誠学園だった。相手のエースは伊良部秀輝投手(2年)。1点ビハインドで迎えた九回裏に先頭の5番・大村巌(2年)が値千金の同点ソロアーチ。〝伊良部撃ち〟に成功し、サヨナラ勝利を引き寄せた。

 82年までの5年間は前任の三好泰宏監督の右腕として4度の甲子園を経験し、満を持しての監督初陣だった。試合後のお立ち台では「僕にとってより、学校にとっての初勝利だったのでね」と、男泣きした。

1986年8月12日、東海大四の逆転サヨナラ勝利につながる大村の同点弾が道新スポーツの一面を飾った

 

打撃と足で伊良部攻略

 当時の事は、何を見ないでもスラスラと出てくる。「苦しい展開で、九回表を終わった時点で1点差で負けていた。5-6で。ところが起死回生の大村巌の同点ホームランが出て。大村はまだ2年生。3年生に森本、稲村の3人でクリーンアップを打っていた。一番飛ばすのは大村だったけど、その2人も非常に良い打撃をするし、日高っていうむちゃくちゃ足の速いのがいた。1番打者で、伊良部をかき回したんです。伊良部から4安打。2番バッターのキャプテン柳谷の足も速かった」。最後は日高がサヨナラの二塁内野安打を放って劇的勝利をもぎ取ることに成功した。

衝撃だった中学生の大村厳と盛田幸妃

 その大村との出会いは甲子園初勝利から2年前まで遡る。翌春に体育科を新設することが決まっていて、日下部顧問は中体連の地方大会を視察しに稚内へ出向いた。そこで1人の中学生の打撃に衝撃を受けた。「ホームランを打ったんです。軟式で。当時は今ほど飛ばないボールで。びっくりしました。全道大会には鹿部からも、函館有斗(現函大有斗)に行った盛田幸妃も出ていた。盛田くんも欲しかったけど、キャプテンがうちに来てくれました」。入学後は大村1人だけが上級生の中に入って練習し、その春からすぐにベンチ入りした。

1986年8月11日、夏の甲子園1回戦で九回先頭の東海大四・大村(右)が尽誠学園の伊良部(左手前)から同点のソロ本塁打を放つ

 

ロッテで再会したかつてのライバル

 初勝利した甲子園には後日談があるという。翌年は南大会2回戦で駒大岩見沢に惜敗したが、3年生となった大村が秋のドラフトでロッテに6位指名された。当時は、「付属で優秀な子は東海大学へ進学していた。僕も卒業生だし。でも大村は『プロに行きたい』の一点張りで。(当時ロッテ監督の)有藤さんも札幌まで来たんですけど、僕は立場上、会えない」。さらに「それで(ロッテ)1位が伊良部ですよ。前の年に甲子園で戦った。甲子園2回戦は前橋商業に負けたけど、五十嵐というエースが後に社会人を経由してロッテに入ります」。甲子園で戦った選手たちと同じ道を進むこととなり、不思議な縁を感じたという。

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