【10年前の忘れもの】②93年夏のエース安井謙一(49)選抜甲子園出場の東海大札幌高へ必勝エール
93年夏の甲子園エースで、札幌新琴似シニアコーチの安井さん=撮影・西川薫
大脇前監督とバッテリー組んで1勝
3月18日に阪神甲子園球場で開幕する選抜高校野球大会に東海大札幌高が10年ぶりに出場する。2016年春に東海大四から校名変更後は初。道新スポーツデジタルでは歴代のOBらから後輩への必勝エールを取材。「10年前の忘れもの」と題して不定期連載でお届けする。第2回は1993年夏の甲子園でエースとして大脇英徳前監督(49)とバッテリーを組み東福岡から1勝を挙げた安井謙一さん(49)。甲子園で初めて見たプレーと、中学硬式の札幌新琴似リトルシニアコーチとして、母校に送り出した教え子たちにエールを送った。(学年は当時、敬称略)
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札幌新琴似シニアの教え子に「夏につながる良い経験を」
昨秋は札幌新琴似OBのエース・高橋英汰(2年)と鈴木賢有捕手(2年)のバッテリーに、八鍬航太朗二塁手(2年)と上田就也右翼手(2年)の4人が中心選手として10年ぶりの甲子園出場をけん引した。当時はレギュラーメンバーではなかった選手ばかり。「控えだった子が、いろんなチームで今、主力になっているのが僕らもうれしい。後輩たちも励みになるし、良いお手本になるんじゃないかな。そう簡単に負けるようなチームじゃないと思うので、目の前の戦いに集中して、先を見るのではなく、1個ずつ、1個ずつで最終的にいい結果、夏につながる、良い経験をしてきてくれれば」と、エールを送った。
「本当に甲子園って揺れるんだ」
93年の甲子園1回戦。エースナンバーを背負って初めて上がった甲子園のマウンド。「本当に甲子園って揺れるんだな、って。相手が東福岡で、男子校で2000人ぐらいかな、全校応援。あの声でうおーってやられたら『すげえなおい』って。(甲子園って)こういうこと、って」。圧倒された。それでも「この仲間と1日でも1分1秒でも長く、みんなと一緒にやりたいっていうのしか、なかった。だから、そのためには勝つしかない。勝たないと一緒にやれる時間が終わっちゃう」。無我夢中で必死に腕を振った結果、3失点10奪三振の完投で7年ぶりの甲子園勝利に貢献した。
1993年8月14日、全国高校野球選手権2回戦・東海大四対東福岡、初戦突破に喜ぶ東海大四の安井(左)と大脇
大脇捕手を信頼「何投げても、絶対」
なかでも全幅の信頼を置いていた大脇前監督の存在が大きかった。1点差に追い付かれ、なおも九回表2死一、三塁のピンチ。安井の決め球、フォークはホームベースの手前でワンバウンドしたが、大脇捕手が止め、三振ゲームセット。「キャッチャーがいいから。もう大好きですもん、俺。この人だったら何投げても、絶対!」。佐々木浩正監督に、夏の甲子園初陣勝利をプレゼントした。「当時、佐々木先生もまだ32、3歳かな。もう自由に。僕らのね、キャプテンがちゃんとしてるから」。その後、大学も社会人も一緒で、いまも家族ぐるみの付き合いがある。
2018年4月7日、93年夏の甲子園を沸かせた安井(右)、大脇の東海大四バッテリー
2回戦・修徳戦で度肝抜かれたセーフティースクイズ
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道勢31年ぶりの8強入りが懸かった2回戦の修徳戦。2試合連続で先発を任された安井は、相手の攻撃に度肝を抜かれた。道内ではほとんど使うチームがなかった、セーフティースクイズ。「知らなかったですから、田舎もんは。4点のうち3点取られました。取られるたんびに『なんだあれ?』って。ウエストしたら引かれる、ゾーンに投げたら、バントする。監督に『どうすればいいの?』って聞いても『ランナーをサードに行かすな』って」。味方の援護もあり延長十二回まで投げ抜いたが、最後は力尽きた。
1993年8月19日の道新スポーツ紙面
南北海道決勝の苫工戦で忘れられない事件
甲子園前の南北海道決勝の苫小牧工業戦。今も忘れられない事件は起きた。2点リードの九回。先頭に二塁打を許すと、山根理広二塁手(3年)が外野からの返球を直接マウンド付近まで持ってきた。そこで山根から「隠し球やるべ」。「めんどくせえな」と嫌がったが、「いいからいいからって(ボールを)持って帰って。そしたら、ランナーがピピッて出ちゃって」。ピンチを切り抜けたのは良かったが「スタンドからメガホンとか投げられながら。学校にも苦情の電話が何百件もきて、校長先生から勘弁してくれ、って俺言われました」と苦笑いを浮かべた。
長女・ひかりさんは野球部マネジャーに
10年前は家族と共に釧路から決勝戦を含め2度甲子園へ応援に行った。当時、中学生だった長女・ひかりさん(東海大2年)は、選抜を見て「甲子園行きたい」と、東海大札幌高の野球部マネジャーに。卒業後は首都大学リーグ強豪野球部のマネジャーを務めている。「まさかのね、まさか娘が、高校、大学の部活の後輩になるなんて、夢にも思ってないから」と頰を緩めた。
2014年8月14日、甲子園・東海大四対九州国際大付戦の応援に駆けつけ、スタンドから声援を送った安井謙一さん(中央)
16年の校名変更後初の甲子園。東海大四時代を過ごした安井さんは「いまだに違和感しかないけど」と苦笑い。今回は3月25日開幕のリトルシニア全国選抜大会に出場するため、応援に行けるかどうかは3月7日の組み合わせ抽選次第。「もう宿は取ってるんですけど、あとは仕事との絡みで。一番いいのは東海が2つぐらい勝って、そっちを見ながら、こっち(新琴似)の試合も見れるのが」。うれしい悲鳴が聞こえてきそうだ。
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