【10年前の忘れもの】④準優勝時のエース・大澤志意也(27)選抜甲子園出場の東海大札幌高へ必勝エール
「神宮のリベンジ」に成功した甲子園最後の勝利
準優勝した10年前のセンバツ甲子園エースの大澤さん=撮影・西川薫
2015年センバツ準優勝に導いた絶対エース
3月18日に阪神甲子園球場で開幕する選抜高校野球大会に東海大札幌高が10年ぶりに出場する。2016年春に東海大四から校名変更後は初。道新スポーツデジタルでは歴代のOBらから後輩への必勝エールを取材。「10年前の忘れもの」と題して不定期連載でお届けする。第4回は2015年のセンバツ準優勝のエース大澤志意也さん(27)。甲子園では決勝までの5試合中4試合で先発完投するなど、北海道勢52年ぶりの決勝進出の原動力となった。(学年は当時、敬称略)
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昨秋、2年連続同カードとなった北海との全道決勝は、直接見届けた。前年の決勝にも応援に駆けつけたが4-8で逆転負け。自身が登板した14年秋の決勝でも、北海に1点差で競り勝って甲子園出場を確実にしただけに「やっと、って感じ。ずっと北海に負けてきてたので。やっとだな、っていうのと、ここからどこまで行けるかな、って楽しみだった。神宮もすごく良い試合をしていたので、その調子で甲子園でもやってくれれば。もっともっと、自分たちの色を出してくれれば」とエールを送った。
2015年4月1日、選抜高校野球決勝を戦った東海大四と敦賀気比のナインが記念の写真撮影。前列中央が大澤
一番記憶に残る準決勝・浦和学院戦
5試合通算で554球、北海道中を東海大四フィーバーに巻き込んだ。その中で一番記憶に残っているのは、準決勝の浦和学院戦。前年秋の明治神宮野球大会2回戦で、0-10の六回コールド負け。実は神宮大会では、プロで使われる硬いマウンドと軸足の右足が擦れて生じる激痛を我慢しての登板だった。「もう痛くて痛くて。でも投げなきゃいけないからと投げていたけど、今までそんな感じになったことなかったので」。5回⅔を投げ14安打10失点。「準備不足も、経験不足もあった」。悔しさを糧に冬の厳しい練習を乗り越えて春を迎えた。全ては浦和学院を倒すために。
2015年3月29日、選抜高校野球準々決勝・健大高崎戦で最後を締め、1-0勝利に貢献した大澤
準々決勝の健大高崎戦を制してついに
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1回戦から2試合連続完投勝利すると、準々決勝の健大高崎戦では五回から5回無失点。1-0の勝利に貢献した。ここまで23回で自責2。絶対エースとして、準決勝の浦和学院と対戦が実現した。試合は開始早々の二回に先制を許した。その時マウンドでは「実力差があまり埋まってないかな」と弱気の虫が頭をもたげた。だが、直後に自らの同点適時打などで逆転に成功。「そこからとんとんとんと、うまく向こうもはまってくれて」。六回には再び大澤がスクイズを決めて追加点を挙げた。
右打者にはスライダー、左打者にはチェンジアップ
投げても、右打者にはスライダー、左打者にはチェンジアップ、左右に広いと言われる甲子園ゾーンを目いっぱいに使って組み立て、三回以降は1点も与えない圧巻投球。2点リードの九回2死一、二塁。長打で同点のピンチも、最後の打者をスライダーで中飛に打ち取り、ゲームセット。「最後の1球は、すごく覚えてる」。甲子園での最後の勝利の瞬間が、いまも鮮明に脳裏に焼き付いている。
2015年3月31日、選抜高校野球準決勝で浦和学院を破り、ガッツポーズする大澤
小・中・大 各世代の指導に携わる
東海大を経て、社会人野球の三菱重工Eastでプレーしたが22年シーズン限りで現役引退。23年春から札幌の保険代理店に勤務する傍ら、野球の指導者を志した。昨年から札幌学生2部の北翔大で投手コーチとしてベンチ入り。同時に東海大四の9年先輩が結成した少年野球チーム「札幌イーストフォースジュニア」では小学生を指導する。さらに今年1月からは、会社の先輩で、14年の南北代表として大澤と一緒に甲子園に出場した元武修館の主将・千葉祐也さん(28)が中学硬式の札幌中央リトルシニア監督に就任。大澤もコーチとして指導陣に加わった。「小学生が一番、伝え方が難しい。でもそこができれば中学生、大学生でも教えられる、言語化ができるようになる」。悪戦苦闘しながらも、充実した日々を過ごしている。
「北海道の高校で甲子園に出て活躍する姿見たい」
2024年10月24日、秋季全道高校野球の決勝で母校の応援に駆けつけた大澤さん
北海道に育ててもらった恩返しの気持ちがある。元々教員になって野球を教えたいという思いがあった。だが東海大ではリーグ戦との兼ね合いで、教職課程の実習を積み残した。三菱重工を退社する際には「学校にあと2年通おうかと思ったけど、野球との関わり方にはいろいろある」と個人の指導を中心に活動を始めた。「将来的には、僕が少しでも関わった選手が、北海道の高校で甲子園に出て活躍している姿を見たい。今、道外に行く選手が多くなってきているので、ちょっと寂しい。なんとか北海道の高校に残ってやってくれたらうれしい」。北海道の高校が再び甲子園の頂点を争うような強豪になる、その手伝いがしたい。準Vエースが未来の甲子園戦士育成の夢を思い描く。
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