日本ハムの〝奇跡の社長〟 小村勝球団社長が語るチームのこと、ファンの存在 新入団選手と必ず交わす約束とは
リーグ優勝に懸ける思いなどを話した日本ハムの小村球団社長
単独インタビューで語った熱き思い
日本ハムの小村勝・球団社長兼オーナー代行(59)が2月26日、北海道政経懇話会の2月例会で、「Challenge With Dream/ファイターズの挑戦」と題して講演した。
登壇前には道新スポーツデジタルの単独インタビューに応じた。大病を経て変化した日々の生活、心に深く刻むファンサービスファースト、悲願のリーグ優勝に懸ける思いなどを熱く語った。
生存率50パーセント未満からの職場復帰
昨年6月、くも膜下出血で倒れた。生存率が50%を下回るほど重い症状だったというが、約14時間もの大手術は大成功。後遺症が残ることもなく、職場に復帰することができた。一時、生死の境をさまよったが、復帰後はよりパワフルに活動している。
「(復帰後は)変わりましたね。もっとゆっくりしたらと思われるけど、逆に助けてもらったので、死ぬまで働かなアカンなと。一回、死んでるようなもの。前より忙しい」
就任2年目で達成したCS地元開催
昨季は優勝こそ逃したものの、2年連続のリーグ最下位からジャンプアップの2位と躍進した。エスコンフィールド北海道で初開催となったクライマックス・シリーズ(CS)のファーストステージでは激戦の末にロッテを撃破した。
2024年10月14日、CSファーストステージ3戦目でロッテに勝利し、ファイナルステージ進出を決め、新庄監督(右)をベンチで迎える小村球団社長(左)
「CSで感じたのは北海道でできて良かったということ。エンターテインメントとはいえ、勝つことが重要だなと。(2023年まで)連続最下位だった。それが2位。CSの成功、非成功はエスコンに持ってこられるか。利益は出ているが、チームに還元して、勝って、北海道でCSをやる。それを2年目でできた。うれしかった。やって良かった。お客さんへの最大の還元は勝利。本当は日本シリーズまで行きたかった。1試合でも多く(エスコンで試合を)見てもらいたい。プロスポーツの、エンターテインメントの保守本流」
新庄監督が注力する選手のモチベーションアップ
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悲願のリーグ優勝&日本一の奪還を目指す2025シーズンの開幕が刻一刻と迫る。今季は各ポジションで激しいレギュラー争いが繰り広げられている。チームは春季キャンプを終え、1、2日には台湾シリーズも開催された。
「ここまで順調すぎて怖い。(大きな)けが人もいない。(ファンの)みんなの期待値もどんどん上がっている。2位の上は1つしかない。新庄さんがいつも言っているけど、この世界に入ってくるだけで野球がめちゃくちゃうまい。あとはモチベーションをどう上げていくか。チャンスを与えていくか」

ノーアウト走者なしで響いたチャンステーマ
エースの伊藤やベテラン捕手の伏見、一発長打が魅力の今川ら、近年、道産子プレーヤーの台頭も目立つ。
「北海道は温かい。ほかのエリアより。かつ、(活躍選手が)地元の子となると、盛り上がりは違う。印象的だったのが、CS2戦目の七回。(私設応援団の)闘将会がランナーのいないノーアウトからチャンステーマを流した。闘将会の会長と話したんですけど、それまでなかなか点が入らなくて、モヤモヤな展開が続いていた。(七回表を終えて)0―2だった。このまま終わるのかな。そこで(ロッテ先発の)小島が2つ四球。そこから1点を取って、(1点を追う九回に)マンチュウ(万波)のホームラン。(延長十回には)浅間のサヨナラ。その夜、会長と僕の家で深夜2時頃まで飲んだ。やっぱり、ファンの方々の後押しなんですよ」
肝に銘じるファンあってのプロ野球
球場でもキャンプ地でも、ファンとのコミュニケーションに熱心だ。ファンサービスファーストを自ら率先して行っている。
「やっぱり回らないと分からない。声を聞いたり。ご指摘もある。それの方が多いですかね。(春季キャンプ中の)名護でもあった。『喫煙所に、なんで水を置いてない』と。たぶん、いたずら防止で置けないのかな。でも気づかない。ファン目線は大切。何事も、これでいいってことはない。実は新入団の選手が(契約の)サインをする時に言っているんです。全員に。『きょうからプロ野球選手です。1つだけお願いがあります。ファンを大切にしてください。ファンがいて、あなた方は仕事ができる。僕らの興業も成り立つ』と。名護でもキャンプインの前にスタッフ、みんなの前で話した。北海道など全国から、たくさんお越しいただいている。調整に影響が出ない程度にファンサービスをしてほしいと。サインが無理なら、手を振って応えたり、笑顔を返すとか」
1月19日、千葉・鎌ケ谷で行われた新入団選手お披露目会であいさつする小村球団社長(中央)