《岩本勉のガン流F論》若き2投手の熱投でよみがえった名伯楽のゲキ
■オープン戦 日本ハム5-4ロッテ(3月11日、ZOZOマリンスタジアム)
失点したのが良かった山崎 心配は皆無
先発した山崎。2点を取られたのが、より良かった。実績のあるピッチャーに限って、この時期はちょっとやられた方がいい。今も昔も、そんな傾向がある。
シーズンを見据えた調整は体に染みついている。少々、打たれた方が今後の調整に慎重さが加わる。あとは、爪を隠している部分もあるだろう。ましてや相手は同じパ・リーグのロッテ。山崎に関しては何も心配することはない。
まだまだ本領発揮にはほど遠い古林
来日して初めて実戦のマウンドに上がった古林は打たせて取って1回をパーフェクト。彼は三振から逆算するタイプの投手だろう。だからまだ本領発揮とは言えない。
ただ、1イニングを0安打0失点という2つの「0」をマークしたことは事実であり、今後の調整、登板を楽にしたに違いない。オンザベースで勝負できることも示すことができた。
色眼鏡の「色」が変わってきている
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さあ、胸が高鳴ったのが2人の若き投手。ともにリリーフで1回を無失点の松岡と松浦だ。まずは松岡。支配下を勝ち取ったばかりだ。前回の好投もあり、周囲の色眼鏡の「色」が変わってきている。この日も1死から2連打されたが、「絶対にホームは踏ませない!」といった気合が見て取れた。その通りに後続をきっちりと抑え込んだ。
松岡は去年、おととしと顔がまるで違う。別人のようだ。手にした自信がそうさせる。ボール自体も当然、力強い。投げ終わった後にスピードガンを確認するしぐさがかわいらしく、ほほ笑ましく映る。
圧巻だった松浦のリカバリー 大きな収穫も
もう一人の松浦。松岡と同じく、開幕1軍の当落線上にいる。先頭にいきなり四球を与えた。気持ちは分かる。きれいな投球を見せたかったのだろう。よそ行きも、よそ行き。腕が振れてなければ、体もうまく使えていない。さあ、ここをどう乗り越えるんや! 私はそう心の中で叫びながら、次の投球を見つめた。
セットポジションからのハーフクイック。必死に汗をながしてきた春季キャンプを思い出したのかもしれない。失敗しても悔いだけは残したくない。そんな強い気持ちが伝わってくるようなピッチングを見せてくれた。結果は3者連続三振。これやで、松浦! 「困ったら、三振を取れる」。そう思えるだけでも大きな収穫。実に見事だった。
忘れられない1995年春の2試合連続登板
生き残りを懸けた激しい争い。私も経験した。だからこそ、つい感情移入してしまう。2人の熱投を目にし、現役時代にチームを率いていた上田監督の言葉がよみがえってきた。あれは1995年春。福岡(対ダイエー)で救援に失敗した。3点以上のビハインドで迎えた試合終盤。2死ながら得点圏に走者を置いたシーンで声がかかった。
打席に右打者。秋山さんか、小久保か。あまりの緊張で覚えていない。内角攻めを指示されていたが、攻めきれなかった。当然、ダメ押しのタイムリーを浴びた。試合後、上田監督から叱責(しっせき)を受けた。「そんなんじゃ、使えんで!」
上田監督から最大の賛辞 「やりゃ、できるやないか!」
翌日、同じようなシチュエーションでまた声がかかった。上田監督の「ガンを行かせ!」の声とともにマウンドへ再度、送り込まれた。打席にはまた、秋山さんか小久保。ただ、準備はできていた。前日はナイターで、この日はデーゲーム。手のむくみを抑えるため、前夜の食事を極力、軽めにし、万全の状態で球場入りした。
それだけ、前日の登板を挽回したかった。ガムシャラにインコースへ投げ込んだ。前日と一転の結果。上田監督からの言葉も当然、違った。「やりゃ、できるやないか!」
必ずある分岐点 若武者の今後に期待
そこから私の1軍マウンドに立つ機会が急増した。プロ野球選手にはキャリアの分岐点となる試合、登板が存在する。2人の若者の今後が楽しみで仕方がない。