ファイターズ
《ハム番24時》3月15日

この日は、昨季限りで現役を退いたソフトバンク・和田の引退記念試合だった。開始の2時間半ほど前、主役のレジェンド左腕が日本ハムベンチ付近にやってきた。歩み寄ったのは同学年の森本外野守備走塁コーチ。2人とも表情は柔らかく、温かい空気に包まれた。
NPBでプレーした〝松坂世代〟の最後の1人だった。森本コーチにとっても特別な存在。「去年、(和田が引退を表明して)十分に悲しみに浸って、さみしさに浸った。本来は引退してゆっくりできるはずが、この試合があることで、運動をやめるんじゃなくて、肩を作らないといけなかった。そのあたりは老化防止で良かったんじゃないかな」と冗談を交えてねぎらった。
もし、かなうなら現役最後のボールを近くで体感したかったそう。「打席に立つのは役者として不十分な清宮くんなんですけど、僕が立ちたいぐらいだった。大事な試合なので、それはできない…」とちょっぴり悔しそうだった。
久しぶりに再会してどんな言葉を掛けたのか、尋ねると快く教えてくれた。「現役のときって朝起きると、いちいち確認作業があるんですよ。肩、首、腰は…と動かして、きょうは大丈夫だと。僕は引退して何も気にする必要がないと分かったとき、うれしいようでさみしくもあった」と実体験を紹介。続けて「彼はまだ、それを味わっていないんだよね。だから『きょう一日、楽しんであとはのんびりゆっくりしてよ』と伝えました」。野球がつないだ縁。同じ時代を過ごしてきた仲間だからこそ、分かり合える感情がきっとあるのだろう。