【センバツ】健大高崎の道産子左腕・下重賢慎が魂の136球で10回3安打1失点の完投勝利
延長十回タイブレークの末、明徳義塾に勝利してガッツポーズする健大高崎の下重
■選抜高校野球 第1日(3月18日、阪神甲子園球場)
▽1回戦 健大高崎(群馬)3-1明徳義塾(高知)※延長十回タイブレーク
〝釧根対決〟で1失点も試合は勝利
1回戦屈指の好カードで〝釧根対決〟が実現した。史上4校目の2連覇を狙う健大高崎は、背番号10を付ける釧路出身の最速145キロ左腕・下重賢慎投手(3年)が先発し、10回3安打1失点の完投。下重は1-0の五回に明徳義塾の根室出身・藤森海斗中堅手(3年)に同点打を浴びたが、タイブレークの延長十回に味方が2点を奪うと、最後までリードを守り切って3-1で勝利。自身2度目の甲子園マウンドで初勝利を挙げた。
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延長十回を一人で投げ抜いた健大高崎の下重
雨の中、最後は何度もガッツポーズ
下重が雨中の熱投136球。2点リードの延長十回2死一塁。最後の打者を三邪飛に打ち取ると、マウンドで渾身のガッツポーズを何度も繰り出した。初めて勝利インタビューを受け、「苦しいゲームだったけど、何とか勝つことができて本当にホッとしてます。石垣の状態が良くない中で、自分ができるだけ長いイニングをという思いで投げて抑えられたので良かった」と、182センチ長身左腕の表情が緩んだ。
「やっぱり何かの縁なのかな」
五回に下重から同点の適時三塁打を放ち、ガッツポーズを見せる明徳義塾の道産子・藤森
ともに北海道を離れて夢を追い続けた道産子球児たちが、最高の舞台で雌雄を決した。藤森との釧根対決は、4打数2安打1失点。五回に同点となる唯一の長打を許した。北海道時代に対戦したことはなかったが、「元々知っていたので注意はしていたけど、少し甘く入った球をうまく運ばれたので、そこはさすがかな。甲子園という舞台で戦えたのは、やっぱり何かの縁なのかな」とうなずいた。
エース石垣と佐藤の存在
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〝第3の男〟を返上だ。「2人がいたから成長できた」というのが、同じ健大高崎投手陣の石垣と佐藤の存在だ。エースの石垣とはリトルシニアの北海道選抜からのチームメート。「きょうのおまえの投球なら大丈夫。もうおまえしかいない」と何度も背中を押され、「やってやるぞ!」と、回を追うごとに凄みが増していった。五回の同点打の直後は四球を出したもののギアを一段上げてピンチを切り抜け、追加点を許さなかった。
「自分が1人で投げる」
投手戦で9回では決着がつかず、延長戦に入ることが決まった時も、「抑える自信があったので、まず何とか1点取ってくれっていう思いでした」。延長十回に味方打線が欲しかった追加点を奪い、「監督たちはどう思っていたか分からないけど、自分が1人で投げるっていう思いでずっとやってきた。石垣にはどうしても投げさせたくなかったので、その目標が達成できたので良かったです」。六回以降は被安打1と、最高のピッチングで応えてみせた。
大雨の中、スタンドにあいさつする健大高崎ナイン
秋に自己最速更新、オフに新球習得
さらに今大会には代打要員としてベンチ入りしているが、昨春のエースで新チームでもエース候補だった左腕・佐藤龍月投手(3年)が昨夏に左肘を手術したことでもチャンスは広がった。「佐藤がいた時は自分が裏方のようなピッチャーだったけど、けがをしてからは『佐藤の上を行けるように』という思いがより一層強くなりました」。秋に自己最速145キロをマークすると、オフにはスクリューとフォークを習得。「その球もきょう活用することができたので良かった」と大収穫のマウンドだった。
侍U-15でエースの佐藤を追って
その投球を内野スタンドで観戦していた釧路シニア時代の恩師・橘幸司監督によると、下重と佐藤には因縁があったという。下重は釧路美原中3年時に侍ジャパンU-15の最終選考まで進んだが落選。その時に侍U-15のエースだったのが佐藤で、卒業後は健大高崎に進学するということを聞きつけ、北海道から群馬まで野球留学する大きな理由の一つになった。
勝利に導いた健大高崎・下重(右)がチームメートと喜びを分かち合う
自信となった大きな分岐点
チームにとっても、下重のこれからにとっても、この日のマウンドは大きな分岐点になる。昨夏の甲子園1回戦の英明戦では先発して3回⅓無失点も降板した。
「自分がピンチになっても抑えられるっていう信頼があれば、あの早い段階で代えられることはなかった。その信頼を勝ち取るために練習試合からピンチで抑えるピッチングは自分の中で目標にしてやってきました。(試合の)序盤はダメだったけど、その後で修正できたのは、これからも自信を持っていいポイント。次も強豪だと思うので、丁寧にしっかり投げられるようにしたい。一戦一戦、勝っていって、それがいずれ連覇につながればいい」
大きな殻を突き破った道産子左腕が、快挙達成への原動力となる。
試合詳細はコチラ
■五回2死二塁から右翼越え同点三塁打を放った明徳義塾の道産子・藤森海斗中堅手(3年)
「(最後はネクストでゲームセット)何とかつなげてもらって、僕が返そうとずっと思ってました。打てたのは良かったけど、チームが負けた理由は僕が(一回に)バントのミスをしてしまったから。春夏どっちもまだ優勝を経験していないので夏こそは優勝できれば」
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