《岩本勉のガン流F論》周囲に刺激を与えてこその助っ人 グロスへの反骨心で成長
■オープン戦 ヤクルト3-3日本ハム(3月22日、エスコンフィールド北海道)
迫るリーグ開幕 実りのある好ゲーム
すぐそこにシーズン開幕が迫っている。両チームとも本番を見据えながら、それでいて試す部分は試しながら。非常に実りのある良いゲームだった。今季のファイターズは各ポジションで争いが激化。各所で当落線上にある選手は、より必死だ。そんな立場がぴったりとハマるのが今川だろう。
チーム力を底上げしている道産子外野手
第2グループ、はたまた第3グループに分類されがちだった道産子外野手。今季ここまで、試合に出れば必ずと言っていいほど結果を出している。この日も六回の好機で代打登場した。いい打席をもらった。まさにアピールチャンス。ここでもきっちりタイムリーを放って見せた。
打席ごとの集中力は目を見張る。今年に懸ける思いが強く伝わってくる。その思いが、そしてバットで示す結果が、よりチーム力を底上げしている。
首脳陣の評価がまた上がったであろう野村
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もう1人、いい打席をもらったのが野村ジェイ。こちらも六回。今川の同点打と敵失で試合をひっくり返した後、2死二塁で打席に入った。ここで左前打を放ち、チャンスを広げた。結果的に得点には結びつかなかったが、首脳陣の評価はまたまた上がったことだろう。
圧巻のピッチングを披露したバーヘイゲン
投手陣もそれぞれが意味のある登板を果たした。中でも先発のバーヘイゲンは抜群の一言に尽きる。味方の失策が絡んで1点を献上したが、5回1安打1失点で自責点は0。四回までパーフェクトだ。ファウルを含めて、ファーストピッチから実に13球連続のストライクと圧巻のピッチングだった。
今も昔も特別扱いは当然
外国人投手は別枠。そこは今も昔もハッキリしている。それだけ球団から期待され、高給を手にしている。助っ人なのだから当然だ。だからこそ、バーヘイゲンに言いたい。周囲へ大いに刺激を与えるピッチャーになってくれ!と。彼に求められているのは勝ち星。いかにチームに貯金をもららすか、だ。
助っ人右腕の入団で奪われた1軍枠
私も現役時代、外国人ピッチャーから大いに刺激を受けた。特に印象深かったのがグロス(1994~98年まで日本ハムに在籍し、55勝をマーク)。いや、因縁があった。94年、プロ5年目だった私はキャンプ、オープン戦と結果を残し、当時40人だった開幕1軍枠に入った。ところがグロスがこの年の開幕後に入団。私は1軍のマウンドに立つことなく、若いという理由だけで1軍枠を明け渡した。
グロスのシューズをはいて開幕戦完封
グロスに罪はない。ただ、「チクショー!」と何度も心の中で叫んだ。絶対に負けへんで! これ以上ない反骨心が芽生えた。それから歯を食いしばってトレーニングを続け、徐々に1軍登板を増やしていった。
そして98年、けがをしたグロスが開幕を待つことなく、米国へ帰国した。その際、彼は私に自身のスパイクを手渡した。「同じメーカーを使っている。このシューズをはいてくれ」と。私はそのシューズでこの年の開幕戦のマウンドに上がり、完封勝利を飾った。今では彼に心の底から感謝している。