《岩本勉のガン流F論》伊藤よ、君はエースだ 思い出す尊敬する野球人からのゲキ
■オープン戦 ヤクルト4-7日本ハム(3月23日、エスコンフィールド北海道)
諦めない雰囲気が漂っている
オープン戦を首位で終えた日本ハム。結果よりも内容がいい。この日の試合にも凝縮されていた。点の取り方と場面が実に良かった。逆転されても決して諦めない。その雰囲気がチーム内にも球場内にも存在し、その通りに終盤で試合をひっくり返した。
しかも決めたのは激しいレギュラー争いのまっただ中にいる石井。ドラマも存在している。
出来上がった戦うチーム
オープン戦を通じていえば、下位打線でチャンスをつくり、上位が決める展開も多かった。昨季から続いているファイターズの強みを今季も継続できている。多少のけが人はいるが、キャンプから〝ヌルヌル〟〝ぬくぬく〟な練習をしてきた上での「大きな負傷者なし」ではない。しっかりと、やるべきことを遂行した上で、戦うチームが出来上がった。
打たれて良かった!? 伊藤のピッチング
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そして伊藤。6回4安打2失点。ソロ本塁打を2本打たれたのが実に良かった。投手コーチもホッとしたことだろう。
打たれて満足? そうなのだ。ここまで順調に来ていた。ましてやこの試合、9奪三振もマークしていた。慎重かつ大胆なピッチングが伊藤の良さであり持ち味。それが、慎重かつ大ざっぱに変わりつつある可能性もあった。そこに来ての2発。しっかりとシーズンを見据え、最終確認することができる。オープン戦を使った調整はこれで100点満点と言えよう。
修正すべき投げ急ぎとアウトの取り急ぎ
ただ、反省は当然、必要だ。六回のあの2連発。赤羽に食らった直後、長岡へ不用意なストレートを投げ込んだ。キャッチャーが慎重にアウトコースを要求していたが、真ん中に入った。シーズン中であれば、投手コーチは言っただろう。「なにを勝ち急いでいるんだ」と。まさに投げ急ぎ、アウトの取り急ぎ。しっかりと修正してペナントレースに臨んでもらいたい。
エースとは周りが決めるもの
彼はエースだ。それは周りが決めること。私も現役時代、そう言ってもらえることがあった。「自分がエースになった」と自負したことはないが、「そのポジションに近づけたかな」と感じたことはあった。初めて指名されて開幕投手を務めることとなった1998年だ。
片岡篤史さんからのゲキで芽生えた責任感
布石はその前年、信頼するプレーヤーから受けた一言が私の中に強い責任感を芽生えさせた。(96年に2桁10勝をマークしながら)97年はふがいないピッチングが続いた。迎えた6月、いや7月だったかな。サードを守る片岡篤史さんからゲキを飛ばされた。「みんな、おまえの背中を見て守ってるんやで!」。フラフラしていた自分へのありがたい叱咤(しった)激励だった。
一生続いていく付き合い
若い頃はよく先輩野手から「俺たちが背中を押してやる」と言われたものだ。片岡さんの一言は大きかった。チームを勝たせなきゃいけない。勢いづかせなきゃいけない。そう思わせてくれた。
尊敬する野球人とのお付き合いは一生もの。片岡さんとは酒を飲むペース、酔っ払うペースも同じ。酒席となれば、最初から最後までゲラゲラ笑わせてもらっている。ゴルフの腕前も同じレベルで、いつも激しく競い合っている。
伊藤に求める「さすが」の投球
伊藤よ、君はエースだ。さあ、いよいよ開幕する。「さすが」という言葉を何度も言わせてや! 実績、力のあるピッチャーがその通りのパフォーマンスを披露した時に出る言葉こそが「さすが」。凜(りん)としたエースの姿を存分に見せてや!