札幌が三上GMの退任発表 石水社長「影響力がすごく大きい。クラブとして甘えがあった」
会見に出席した三上GM==撮影・北波智史
4月24日株主総会で任期満了
北海道コンサドーレ札幌は25日、札幌市内で会見を開き、三上大勝代表取締役GM(53)の退任を発表した。菅原均専務取締役COOと池端一樹取締役執行役員も任期満了のため、定時株主総会が開かれる来月24日付で退任となる。
クラブに尽力した26年間に感謝
札幌の歴史を紡いだ功労者がクラブを去る。会見に臨んだ三上GMは、晴れやかな表情を浮かべ「本当に多くのサポーター、パートナー企業、クラブに関わる皆様、チームスタッフ、選手に育ててもらったという思いでいっぱい。石水社長から誠心誠意、嘘偽りなくお話いただいた。僕自身も納得した形で卒業するべきと判断しました」と、クラブに携わった26年間の日々に感謝した。

開幕4連敗は人事に影響なし
会見に同席した石水創社長は、退任の理由について「1月に私が社長に就任し、三上さんの影響力がすごく大きいと感じました。組織の中で何か物事を決めるときに、私自身も含めて三上さんに確認しないと決められないというのを感じました。クラブとしての甘えがあった」と説明。開幕4連敗を喫した今季の成績が、今回の人事に影響していないことも併せて明言した。
後任は置かずGMの役職は当面の期間、空位となる。チーム編成については竹林強化部長が中心となって進める予定で、同社長は「三上さんが日本一のGMだからこそ、強化がブラックボックス化していた。三上さんの過去の経験や実績に頼り、クラブの資産として残りづらかった。今後はガバナンスをオープンにして強化を進めたい。GMがいないクラブもあるので、そこは全員でカバーしたい」と強調した。
■会見の主な一問一答は以下の通り。
―石水社長から
「昨日(24日)取締役会が開かれ、その中で三上GMが来月、4月24日の株主総会をもって退任することになりました。この件につきましては昨年、最終戦が終わった段階で、私のスピーチの中で『三上さんは日本一のGMです』と言い、今季については代表権を2人が持った形で進めると話しました。1月に私が社長に就任し、三上さんの影響力がすごく大きいと感じました。どういうところで感じるかというと、何か物事を決めるときに、私自身も含めて三上さんに確認しないと決められないというのを組織の中で感じました。何かにつけて『大勝の確認取った? 大勝なんて言ってた?』とクラブとしての甘えがあった。これからコンサドーレが生まれ変わり、新しいことにチャレンジする中で、三上さんの存在が大きくなりすぎてしまったと感じ、私の意思で今回の人事を決断しました」
会見で経緯を説明する石水社長
―三上GMから
「会見準備をしていただき、大勢の方に来ていただいて感謝申し上げます。26年。僕は54歳なので人生の半分をコンサドーレというクラブに携わって、本当に多くのサポーター、パートナー企業、クラブに関わる皆様、チームのスタッフ、選手に育ててもらったという思いでいっぱいです。そういった中で今回、このような決断をクラブとしてしました。あえて僕の方から話すと、自分はチームという領域の中で本当はこの選手を残したい、残さないといけないという思いがあっても、次のチームの進化のために、目指さなければいけないチームのために苦渋の決断をしてきました。石水社長からもあったように僕の存在自体が多くの社員、スタッフへの依存度が高くなっている。僕がコンサドーレを卒業しないといけないという思いで、今回は石水社長から誠心誠意、嘘偽りなくお話をいただいた。僕自身も納得した形で卒業するべきと判断しました。監督やスタッフ、選手にも伝えたましたが、26年間でうれしかったビジョン、シーンはホーム、アウェー関わらず選手たちが躍動し、勝った後、ゴール裏を中心にサポーター、選手、関係者が喜び合い、それをフロントスタッフが当然のようにうれしく思っている。そういうシーンを見るのが大好きでした。自分ができることは、そのシーンを1試合でも多く、1日でも多くつくることだと思い、僕なりに26年間やらせていただいた。至らないことがある中でも、サポーター、パートナー企業、クラブに関わる多くの方々に育ててもらった。感謝の思いで今日を迎えている。メディアの皆様も含め、僕自身が成長する良い機会をいただいた。僕も今後はコンサドーレサポーターになってクラブを応援したい。引き続き新体制でやりたいことやクラブの方向性を、みなさまの力をお借りしながらサポーターや道民、市民にお伝えいただけると嬉しいです。26年間お世話になり、ありがとうございました」
―石水社長へ。昨季最終戦の発言や就任後も代表2人体制というビジョンだった。覆した最大の要因は
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「三上さんは代表権を持っていた。そういう意味では経営責任があり、6期連続赤字やJ1からJ2に降格した責任は重い。とはいえ、これまでの功績もあり、今でも私は日本一のGMと思っている。すごく評価して、昨年末の時点では継続という話をしました。1月から私が社長に就任し、いろいろなスタッフ、もちろん三上さん自身ともコミュニケーションを取って、すごく感じたのは組織として三上さんへの甘えがあった。さまざまな意思決定をする中で、三上さんがいれば何とかしてくれるという甘えがあった。これから新しい役員人事、幹部、組織のシャッフル、スリム化を進める中で、三上さんがいることで今後も甘えてしまうと感じた。それが今回の決断に至った最大の理由です」

―26年間在籍した三上さんがいなくなった先に描く未来は
「強化は竹林強化部長にやってもらいます。また鈴木智樹も引き続きトップチームの強化をやってもらう。これまでの三上さんへの甘え、依存で言うと、今後は強化の部分のガバナンス、外の目からトップチームの評価や意見が必要になると思う。それは来月以降の役員人事を含めて検討している段階です」
―他に取締役の退任予定は
「現役員、昨年までの社内の役員ですね。三上さん、菅原さん、池端役員が任期満了で退任となります」
―三上GMへ。1月から短期間で方向性が変わった。どんな状況で伝えられた
「誠心誠意です。石水社長から数日前に直接お話をいただいた。嘘、偽りなく、依存度を含めて話をいただいた。僕自身が卒業することがクラブの新しい発展につながると思ったので納得感を持って話を聞きました。昨年末から僕自身が責任を取るべきと決意があった中でも、石水社長から続ける責任をと、当時は言っていただいた。社会も企業も我々スポーツクラブも一緒で、すごく速いスピードで変革しなければいけない。このような大きな変更があるというのは当然のことと思っています。僕としては納得感を持っている。個人的な話で申し訳ないのですが、石水社長からは社員に色々な話を聞いて、嬉しかったこととしては、社長をはじめ新しい執行体制の中で評価をしてもらって、その得点が対象者の中でもトップクラスでしたという言葉をいただいた。自分がやってきたことは今までクラブの大きなマイナスになってなかった、と。ただこれからのクラブの運営にはマイナスになるかもしれないと僕自身が思えたので割り切りできた。このクラブのためになることだけを考えています」
会見を行う三上GM(右)と石水社長
―今後は
「まずはコンサドーレのサポーターとして、いることです。本当に最近のことなので、しっかり次のチャレンジをできるかどうかを含め、今回得たものと反省点もある。一度外からクラブやフットボールを見て、勉強しながら英気を養いつつ、次またチャレンジできるのであれば前向きに考えたい」
―石水社長へ。シーズンが始まって6節が終わった段階。なぜこのタイミング
「1月に社長就任して、新しい組織を組み立てるにあたって2カ月間を要した。もう一つは来月の4月24日にコンサドーレの定時株主総会がある。新しい役員人事を含めて、会社として新たなことを決めていく。そういうタイミングだったことで今回のタイミングになりました」
―新しく組織を作る狙いは
「以前から社外取締役として見た中で感じていたことで、現在は社内外を含め13名の取締役がいる。その数が多いと思っていました。来月からの役員人事は、約半分に減らてスリム化して運営していきたいと考えています」
―日本一のGMと評価していた。チーム強化への影響は
「強化への影響は、今季というよりも2、3年後に影響が出てくると思っています。26年という長い間やっているので、すごく影響があると思う。一方で強化でいうとブラックボックス化していたところもある。これは三上さんが日本一のGMだからこそっていうのはあるけど、いろんなところで三上さんの過去の経験や実績に頼っていた。クラブの資産として残りづらかったところがある。ガバナンスをオープンにして今後は強化を進めたい」
―決断に至るにあたってチーム成績の影響はあったか
「ここまでの成績の影響は全くありません。開幕4連敗が引き金になったとかは一切ありません。先週の土曜日、愛媛戦の前日に私と三上さんから選手、監督、スタッフに伝えましたが、選手も監督もプロなので、結果が出なければ辞めないといけないのは当然のことと切り替えて試合に勝ってくれた。そういう意味では開幕6戦の実績や今後の強化への影響はないかなと考えています」

―伝えた時期は
「先週の金曜日です」
―2連勝中。サポーターはJ1復帰を願っている
「クラブとして今季の最大の目標はJ1昇格です。まだ開幕したばかり。これからだと思うので、岩政監督を支えていく姿勢は変わらないので、サポーターの皆さんも応援していただけたらと思っています」
―GMはクラブのあり方やビジョンを決める。後任は
「後任は強化でいうと竹林強化部長になります。竹林さんには竹林さんの良さがある。三上さんには三上さんの良さがある中で、新しいコンサドーレの形をつくっていきたい。強化だけでなく経営のところも三上さんに関わってやっていただいていた。来月は新しい幹部、役員を含めて幹部合宿というものを開きながら、クラブのフィロソフィーをつくっていきたい。人というのはずっとクラブにいるのは、なかなか難しい。監督も選手も私自身もそう。いつまでもクラブに関わっていくと保守的な状況にもなりタイミングが難しい。その中でフットボールフィロソフィーが大事になる。会社でいうところの経営理念、ミッション、ビジョン、バリュー。我々はそこを見ながら仕事をする。きちんと策定してやっていきたい」
―GMは置かない
「そうですね。いろいろなクラブがあってGMがいないクラブもある。そこは全員でカバーしたい」
―組織改革を進めたいと話した。クラブの課題、問題点は
「組織的な課題で言うと幹部社員、マネジメント層が多いかなと感じている。役職の数が多い。本来は役割の中で仕事をするのが普通ですが、役職に引っ張られるあまり本来の役割をしなければいけないポジションに人がいない。それは現場を含めて多々見られた。そういったところが今までのコンサドーレの課題だったと感じています」
―三上さんが培ってきたものが下の世代に伝わっていない部分もあるか
「これは三上さんだけの問題ではなくクラブ全体に言えること。今季のスローガン、フルコミットにも込められているが、誰か1人でなく全員が責任を持ってクラブの目標、目的に沿って意思決定をすることが大事。そういうクラブにしたい」
―三上GMへ。これまでの思い出とサポーターへ向けてコメントを
「思い出は数多くあります。2007年に僕自身が強化責任者になったときに、当時の役員から今季J1に上がれないと、クラブがなくなるかもしれない。そういった覚悟を持ってやってほしいと伝えられ、できる限りのことをやって、何とかその年にJ2で優勝して、クラブを続けられて良かったという思い出があります。他にも数多くの思い出があり、全てが良い思い出。失敗も含めて良い思い出です。サポーターの皆さんが力をくれたことで、クラブは一定のサイズまで来た。ご存じのようにJリーグ全体が共存から競争に入ってきた。もう一伸びするのはクラブだけではできない。サポーターの力が大きな物になると思っている。引き続きクラブの支援、叱咤激励を含め、一緒になってクラブをつくる今まで通りスタイルを続けていただきたいと思っています」

―社長は今季の成績は関係ないと話した。三上GMの受け止めは
「常に成績いかんによって責任がある。昨年もそうですし、今年の開幕も4連敗で責任を感じています。責任を果たさなければいけないと思っていました。幸いにもクラブとして勝つということを重要視しながらも、そこで躍動する選手が実際に楽しみ、成長できるサッカーかつ、見ている人も魅了する。少なくとも先日までは、クラブとして方向性、一体性を持ってやらせてもらった。開幕4連敗で皆様にご心配させましたけど、やっていけるという手応えがある中での1カ月でした。昨年の時点で責任を取るべきというところから、継続することでの責任に変えたこともあって、どうやってこの状況を打破するかを考えていた1カ月でした」
―石水社長へ。三上GMはマチノミライ子会社社長を務めている。そちらの肩書きは
「マチノミライの社長もやっていましたが、そちらも抜けていただく形になります」