野村佑希 「ほぼ、殺害予告だった」自身への誹謗中傷より「やめてほしい」こととは
ヒーローインタビューを終え、スタンドにあいさつする野村=撮影・松本奈央
■パ・リーグ3回戦 日本ハム7-5西武(3月30日、ベルーナドーム)
大きな期待の裏で… もがき苦しんできた若き4番
日本ハムの「4番」野村佑希内野手(24)が2本塁打を含む3安打6打点と大爆発し、チームを開幕3連勝に導いた。今季が高卒7年目。入団以来、常に大きな期待を背負い、それに応えようともがいてきた。温かいファンに支えられる一方で、鋭利な言葉の刃を向けてくる〝アンチ〟の存在に悩むこともあった。
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開幕4番に指名されたのは、今季が2回目だ。1回目は2年前の2023年。エスコンフィールド初の公式戦となった開幕戦で主砲を務めたが、SNSで多くの誹謗中傷を受けた。「あの時はいっぱい来ましたね。なんか、ほぼ殺害予告でした」
23年の開幕戦で犠飛を放った野村だったが、試合は1-3
応援メッセージが多数を占めるが…
応援の方が多いことは分かっている。それでも、邪気に満ちたメッセージは心に刺さる。
「目につくんですよね、変なやつの方が、圧倒的に。一部なんですけど。9対1ぐらいなんですけど。『殺すぞ』とか、『死ね』とかもありますよ。ただそういうのは、(言っているのは)ガキんちょだな、変な人が言っているんだろうな、と思えるので、なんか言っているわ、ぐらいなんですけど、変に長文で送られてきたりすると、なんなんだって思いますね」
24年のファンフェスで新庄監督(左)から開幕4番に指名された野村
活躍に比例して増えてきた言葉の暴力
ここ1、2年、野村への期待が膨らむのと比例するように、目を覆いたくなるコメントが増えてきた。心をむしばむ声には、耳を貸さないようにしている。
「基本的に、わざわざ見に行くようなことはしないです。わざわざ受け止める必要もない言葉なので、なるべく目が届かないようにはします」
新庄監督の姿勢が救いに
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新庄監督のスタンスも支えになった。「ボスがあれだけ『俺は(誹謗中傷を送ってくるアカウントを)ブロックしている』と公に言ってくれると、楽だなと思います。全部が全部、ファンなわけじゃないと思いますし、やっぱりわざわざ受け止める必要のないものもあるので」
28日、開幕戦のスターティングメンバー紹介で新庄監督(右)とグータッチをする野村
許されない犯罪行為
例えどんなにチームの好機をつぶし、敗戦につながる失策を繰り返す選手がいたとしても、誹謗中傷が正当化される理由にはならない。まして、死ね、殺すぞといった言葉を他人に向けるのは犯罪だ。それでも野村は、プロ野球選手である以上、自分自身への声はある程度、受け止める覚悟を持っている。
周囲への〝攻撃〟には憤慨と落胆
ただ、どうしても納得できないことがあった。自分を支えてくれている人たちへ向けられた罵詈(ばり)雑言だけは、見過ごせなかった。
「僕に来る分には、僕が結果を出していないからいいんですけど、伊江島自主トレで僕をサポートしてくれているトレーナーのジムに直接、(誹謗中傷の)DMをしたりする人がいる。それは、違うんじゃないかなと思います」。トレーナーからは冗談交じりに報告を受けたというが、「全く(不快に)思わないわけはない」と、やりきれない感情が湧き上がった。
24年オフ、伊江島での自主トレに励む野村
声を大に「やめてほしいなと思います」
「自主トレの環境でいったら、絶対に一番良いレベルなので。そこで僕が結果が出せていないからといって、トレーナーのジムに言ったりというのは、違うんじゃないかなと。全部、自分の責任なので。100%以上のサポートをしてもらって、トレーニングを見てもらって、そういうことを言ってくる人は内情も知らないわけじゃないですか。それは、ちょっとなというのは思います。それはおかしいなと思ってしまいます。やめてほしいなと思いますね。だったら、僕に送ってきてくれた方が、こっちで解決できるので」
結果がすべてのプロの世界
結果が出ている、出ていないにかかわらず、誹謗中傷は許されない。それでも「結果が出なかったら間違いだと言われてしまう世界なので、結果を出すしかないかな。結果を出さないと正解にはならないという感じなんですかね」と現実を直視していた。
アンチを黙らせるためではなく、心から応援してくれている人の期待に応えるために、野村はこれからも打ち続ける。
三回1死一、二塁、3点本塁打を放った野村(右端)をベンチが迎える