森高校野球部が4年ぶり活動再開 元オリックス・吉田監督「ゼロから始まったからこそ得られる経験を」
元プロ野球選手の森高校・吉田新監督(中央)の下に集まった1期生の(左から)上出、管井、三上、渡部=撮影・西川薫
4人の新1年生が入部
2021年限りで廃部となった森高校硬式野球部が、4年ぶりに活動を再開した。監督は地元の森町出身で元プロ野球選手の吉田雄人さん(29、北照高出)。今月8日に入学式が行われ、4人の新1年生が入部。5月5日開幕の春季全道高校野球函館支部には八雲と連合チームを組んで出場する予定で、4月19日に合同練習がスタートする
■廃部していた森高校野球部が来春にも復活
グラウンド再整備され、さぁ第一歩
1年間かけて進めてきたプロジェクトがいよいよ本格化する。吉田新監督の下には4人の〝1期生〟が集まった。昨夏、荒れ放題だったグラウンドの土はきれいに入れ替えられ、再整備された。ここから夢の甲子園へ向けた第一歩が再びスタートする。
昨夏、地元企業の協力で荒れ放題だったグラウンドの土の入れ替え作業が行われた=吉田雄人さん提供
目標としていた公式戦の単独出場には届かなかったが、「ゼロからのスタートで、本当にいろんな方の協力のおかげで4名という人数が集まり、本年度から野球部としての活動を開始できることになった。最低限のスタートラインには立てたのかな」と、胸をなで下ろした。
新品のバットを5本購入。寄付で集まったボールや、倉庫に残っていたマシンも活用する。さらには新たなユニホームも作成中だ。
地道な草の根活動がようやく芽吹く 最初は冷ややかな見方も…
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昨年6月に在校生を対象に体験会を行い、7月には第2回を実施。時には車で5時間かけて岩見沢まで大会を視察したり、地元で少年野球教室を行うなど、地道に草の根活動を行ってきた。ただ「(最初の反応は)なかなか冷たかったです。『できるわけない』って、1年間言われてたので。悔しいけど、周りにはよく4人集めたなと言ってもらえた。それに満足してはダメなんですけど、いろいろ言われたおかげで、しっかり反骨心みたいなのがまた芽生えてきて、いい感じです(笑)」と、しっかりと前を向いた。
昨年6月、在校生対象の体験会を実施した吉田さん(左)=吉田雄人さん提供
地元部員なしも他の地域から経験者
新入部員は札幌市から2人、喜茂別町から1人、隣町の八雲町から1人。中学硬式の強豪・余市リトルシニア出身や、昨年8月の全日本少年軟式野球クラブチーム選抜大会で優勝した函館BBCでプレーした選手もおり、4人全員が野球経験者だ。
「すごく良い素質を持った生徒も数名いて、来てくれたら、と思っていたんですけど、道内や道外の強豪校に進学する選手も。ぶっちゃけ私も中学生の時に、森高校という選択肢はなかったので、彼らにとってもそうだったんだろうなと。仕方ない部分ではあると思うんですが、この活動が始まり、早い段階で野球で高い目標を持っている地元の子たちが、森高校に残る選択をしてもらえるような野球部になっていきたい」
在校生にも数人の野球経験者がおり、一日でも早い単独出場に向けて、勧誘は今後も続けていくつもりだ。
吉田監督だからこそ実現した交流
〝初陣〟は今月26、27日の練習試合だ。吉田監督が北照の選手時代に3季連続で全道決勝を戦った駒大苫小牧の1年生チームと森グラウンドで行う予定をしている。吉田監督と同じ年で、当時の正捕手・高橋一真さん(29)が駒大苫小牧のコーチを務めていることから実現した。
また、30日には母校の北照と合同練習をする予定だ。プロ引退後の23年に1シーズンだけ同校でコーチを務めており、「地元に戻って監督をやりたい」と聞いていた上林弘樹監督(45)も「実現したので、僕らも応援したい」と部員35人を引き連れて訪れるという。
吉田監督は「いつも気にしてくれて、うれしい。今、目の前のこの子たちにとっても大事だと思うし、そういうチームが森町で練習する、試合をする。それこそ小学生たちにぜひ見に来てほしい。トップレベルを見てほしい」と心待ちにした。
昨年6月、在校生対象の体験会を実施した吉田さん(手前左)=吉田雄人さん提供
8度の全道出場 最高は南大会4強
森高校は1965年の南北海道大会で4強入りするなど全道大会には3季通じて8度出場したことがある。「高校野球って、大会数が3年間で限られるので、一つも無駄にしないというか。勝ち負けはもちろん度外視してますけども、今からやる高校野球という舞台が、どういうレベルか、というのを肌で知ってもらうためにも、ぜひ(春の大会に)出場したい」と闘志を燃やす。
甲子園で勝利することを夢見て
1年や2年、初めからうまくいくとは思っていない。それでも「やっぱり野球をやる以上、高校野球の勝敗における一番高い目標である甲子園出場、そして甲子園で勝つ、というところを常に野球部の目標として掲げて、活動していきたい」と大志を抱く。
イチから活動していく上で、「状況によって適切な課題設定は必要だと思うので、まずは目の前の単独出場という目標に向けて活動していく。森高校を選んでくれた以上、私立の強豪校とは違うゼロから始まった野球部だからこそ得られる経験を、しっかり与えてあげたい」。1期生4人と苦楽を共にしながら、甲子園という大きな海原を目指し、若き指揮官は船をこぎ出す。
昨夏、土の入れ替え作業が行われたグラウンド=吉田雄人さん提供
【新入部員の抱負】
■三上陽斗外野手(1年、札幌篠路中軟式野球部)
「やっぱり甲子園を目指したいのが一つの大きな夢です。もう一つは、イチから野球部を設立するって、一生できない経験だなと思って、経験してみたいと思った」
■渡部大河捕手(1年、喜茂別中、余市リトルシニア)
「元プロの吉田さんが教えてくれるのが一番大きくて、恵まれた指導環境の中で野球をやってみたかったので(森高校を)選びました。3年間の抱負は、1年目はまだ人数が少ない状態なので、大会で優勝というのではなく、自分たち個人個人がレベルを上げて、3年目には甲子園で優勝を目指したい」
■管井裕哉内野手(1年、八雲中、函館BBC)
「森高校を選んだのは吉田さんが元プロ野球選手ということでイチから指導してもらいたいと思ったから。函館BBCで全国優勝したことがきっかけで、高校でも野球をもっとしたいと思った。もちろん甲子園優勝が目標ですが、自分の技術の向上も目指したい」
■上出蒼空外野手(1年、札幌篠路中軟式野球部)
「普通の人ができないような経験をここの高校ではできる。まだ自分は全然未熟で、1年目から2年目の最初も甲子園優勝できるとは思いませんが、最後の年はみんなで優勝を果たしたい」
■プロフィール 吉田 雄人(よしだ・ゆうと) 1995年4月21日、森町生まれ。森小1年時に森クラブで野球を始める。中学硬式の函館東リトルシニアでは投手。2学年後輩のチームメートには日本ハムの伊藤大海投手がいた。北照高校では100メートル11秒8の俊足と遠投110メートルの強肩を生かし1年夏からベンチ入り。中堅手として2年春、3年春、夏と3度甲子園に出場。3年時にはU18野球ワールドカップ日本代表に選ばれ、2013年のプロ野球ドラフト会議でオリックスから5位指名された。17年に1軍デビュー。18年限りで現役を引退した。178センチ、70キロ。右投げ左打ち。
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