昨秋9人で戦った武修館野球部に新入生12人 JA職員の異色新監督がチーム改革に着手
3年ぶりに伝統のユニホームに回帰した武修館(提供写真)
釧根支部は5月9日開幕
春季全道高校野球の釧根支部は5月9日に開幕する。創部50周年を迎えた武修館は、前任者の退任に伴い2月1日に安藤裕太監督(38)が就任した。昨秋の支部予選で1回戦敗退した際、部員数は9人ギリギリだったが、12人の新入生が入部して一気に2倍以上の所帯となった。9日開幕の支部予選で、新チーム公式戦初勝利へ挑む。
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釧根支部唯一となる私学のプライドを取り戻しに行く。渡辺康靖主将(3年)は「先週、先々週と練習試合をしたが、3試合で合計50点ぐらい取られて負けた。(釧根支部)唯一の私立高校であるにもかかわらず恥ずかしい試合をして、今うちが一番弱いと選手全員思っている。(春季大会で)当たったチームを倒して勝ちに行く」と、自ら認める底辺からの巻き返しへ気合がみなぎっている。
試合に出るのが当たり前→出られないかもしれない危機感
昨夏は13人で北大会に出場したが、秋の新チームは2年生8人と1年生が1人の9人になった。「去年の秋は、自分も含めて試合に出る感覚が当たり前になっていた。いざ12人が入って部員が21人になると、試合に出られないかもしれない。3年生は全員危機感を持ってやっている」。ユニホームも3年ぶりに白地に緑という伝統のデザインに戻し、初心に返って鍛え直す。
白樺3年時にエースとして北大会4強
新指揮官は、異色の経歴の持ち主だ。足寄町出身で白樺高3年時にはエースとして北大会4強入りに貢献。札幌大卒業後は地元の農協で働き、2020年から釧路農業協同組合連合会で和牛振興の部署に勤めている。時間的な制限がある中、球児たちと正面から向き合ってきた。「子供ってちょっとしたことで、メンタルがすごく変動する、と感じました。良い悪い、両方の意味で。褒めすぎてもダメだし、怒りすぎてもダメ」と、試行錯誤しながら最良の道へ導こうとしている。
2月1日に就任した安藤新監督は、普段は団体職員として働く外部指導員=撮影・西川薫
22年5月に前任監督に誘われて外部コーチに就任。昨年6月、教員免許を持つ指導者が前監督しかいなかったため、便宜上、大会には安藤監督が監督として登録し、前監督を責任教師として夏、秋と出場したが、実質的な指揮は前監督が執っていた。その前監督が秋の大会後に退任し、今年の1月から暫定的に練習を取り仕切っていた安藤監督が2月1日に正式に就任。部長には新任で北星大付高出身の東陽太朗教諭(23)が就任し、新米タッグで甲子園を目指す。
改革の第1弾は月曜日をオフに
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すでに改革は始まっている。まずは毎週月曜日をオフにしてメリハリをつけた。頭髪も自由にした。「オフは髪が伸びてだらしなくなったら切りに行くとか。あくまで高校野球って部活じゃないですか。社会に出るためにどういう訓練をするか、みたいなとても大事な時期に野球を選択しているだけだと思ってる。その軸を、僕は外部だから、と言ってぶらす気はなくて、野球だけやれ、とはもちろん全く思ってなくて」。部員に自らが考えて行動することを求めている。
自主性尊重し、自ら考えて行動する能力を
渡辺主将は「1週間、月曜日(オフ)のために一生懸命やっている選手がいて、体が疲れている選手はその月曜日で休んだり、まだやり足りない、という選手は自主練したり、遊びに行ったり、有意義に使っている。(規則に)縛られることがなくなった。前までは何から何までダメというか。今はプライベートはプライベートというか、メリハリを持ってできている」。指揮官の狙い通りの効果が生まれている。
沖縄視察し「衝撃を受けました」
さらに昨年12月、安藤監督は沖縄に赴き、北海道の社会人チームを率いて都市対抗で優勝した経験を持つ我喜屋優監督(74)の興南や、今春のセンバツ甲子園に出場したエナジックスポーツ高校の練習を視察。「飽きさせないメニューに衝撃を受けました」。両チームともいわゆる練習前のキャッチボールはやらないそうで、限られた練習時間を有意義に使うために、すぐに取り入れた。
渡辺主将はガラッと変わった新体制に「前の監督まではやってなかったこと、意識できてなかったことがいっぱいあって、大変なことは多いけど、勝つために当たり前のことをやっているので、それに対しては苦しいとか、やりづらいとかは感じていない」と歓迎する。
昨秋は9人ギリギリだった武修館に12人の新入生が入部した
余計な失点減らすために基礎練習を徹底
春先に行った練習試合は土曜日のみ。日曜日は練習試合に出てきた課題を洗い出し、反省と修正に時間を割いている。練習試合の大量失点の理由もはっきりしていた。「外野に飛べば、ほぼヒットになってしまうのと、ピッチャーの制球力。フォアボールが多かったり、流れを切れなかったりして、50失点してしまった」。練習では7対3で守備に重点を置き、余計な失点を減らすための基礎練習を繰り返してきた。
これまで毎年行っていたゴールデンウイークの札幌遠征も取りやめ、まずは足下を固める。「学校から下ってきたところに銭湯があるんですけど、そこで合宿をやることにしました。銭湯の2階が泊まれるので、そこに自宅生も全員(泊まる)」と安藤監督。保護者の経済的な負担が減る上に、集中して基礎体力を向上させ、さらに選手同士が背中を流し合いながらチームの団結力も養うという。
甲子園は2014年夏の初出場が最後
釧路短大付属時代を経て、創部50年。2014年夏の初出場以来、甲子園から遠ざかっている。渡辺主将は「OBの方たちが気に掛けてくれていると思うので、春、夏と地区で負けてしまうと応援されなくなるかもしれない。まずはしっかりと全道大会を目標にしてやっていきたい。3年生だけの力じゃ絶対に勝てない。春で勝つことは前提として、その中で1年生にもしっかり経験を積んでもらって、夏に生かしてもらいたい」。生まれ変わった武修館が、釧根支部の頂点を目指して奮闘する。