万波中正ってどんな人?【有料会員限定】厳選エピソード集 選りすぐりの26本!

※文中の肩書きは当時のもの
①今季1号(2022年3月27日掲載)
ビッグボスからの熱い助言が、悩める若き大砲の心を軽くした。12日の広島戦での本塁打以降、オープン戦は19打席連続無安打。開幕後も2試合で3打席全て三振と不調だったが、27日の試合前練習で「悩んでいるの見たくないな。ウジウジやんのは、やめようぜ。何メートル前のボールを振ってもいいから、思いっきりいこう」と背中を押された。「それで本当にちゃんと前を向けた」。指揮官の〝エール〟に、ド派手な一発で応えて見せた。
万波にはプロ野球選手以外に、もう一つ夢があった。「中学、高校時代から、将来は起業したいと思っていました。就職ではなく、自分で何かをしたかった」。口だけではない。パナソニック創業者の松下幸之助ら有名経営者たちの著書を熟読し、知識を吸収してきた。
「考え方やメンタルの部分で、そういう人たちは一貫してトライし続ける」。過去には2軍戦であえて打撃グローブをつけず、素手で打席に立ったこともある。今オフは体の操作性を向上させるため、ウエートトレーニングを一切やめた。さまざまなことに挑戦する姿勢の根底には、偉人たちから学んだフロンティアスピリットがある。
②新庄監督予言通りの4号3ラン(2022年4月22日掲載)
伏線はあった。前カードの楽天3連戦で「高いピッチャーフライを打ちなさい」と指揮官から助言を受けていた。自らも「上から叩こうという意識が強くて肩も体も被っていくような感じだった」とフォームが崩れていると感じていた。外角の変化球に対し、中途半端に手を出す場面も増えていた。
尊敬するボスの教えを愚直に受け入れ、極端なアッパースイングへの矯正を試みた。ためらわず、スムーズにバットが出るようになり「大げさでいいからってアドバイスを受けて、それがいい結果につながった」と感謝した。
予言を完璧な形で的中させた新庄監督は喜びを抑えられなかった。終わってみれば、今季最多12得点。頭脳が冴え渡り「当たったでしょ。僕の勘ピューターがきょうはすごく当たったので、良かったんじゃないかな」とご満悦だった。
21日の試合では、万波が「やることはやってきているはずなので大丈夫です」と励ましの声を掛けていた今川に不振脱却の一発が生まれていた。涙を流すほど感情をあらわにして戦っていた先輩に触発された。
「打った後、(今川は)ほぼ泣いていたんじゃないかな。でも、それくらい思いが詰まっているのは毎打席感じます。刺激になります」。仲間や指導者に支えられながら、ダイヤの原石は少しずつ磨かれ、輝きを増してきている。
③甲子園で自身初2桁本塁打到達(2022年6月3日)
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横浜高時代、この甲子園で勝ち抜くことを目指して汗を流した。3年間、全ての夏で甲子園大会に出場したが、万波自身は0本塁打。「学生時代はやっぱり、甲子園でホームラン打って勝つことを目標にしていたので、素直にうれしいです」と聖地で節目のアーチを架けられたことを喜んだ。
ウオーミングアップ時には、3年夏に甲子園で対戦した吉田と談笑。「懐かしさ? 感じると思ったんですけど、あまりに(期間が)空きすぎて新しいとこに来たような感じでした」と苦笑いしたが、プロ入りから4年が経過し、成長した姿を示すことができた。
波の激しさを小さくすることができれば、さらに相手の脅威となれる。万波も十分に自覚しており、「試合によって、いい時はいい、ダメな時はダメって感じがちょっとする。ヒットを打てなくても打点を挙げられるとか、チャンスで何とか最低限の仕事ができる、みたいなのができるようになりたいと、しみじみ感じています」。将来の主軸候補の一人として、さらなる進化の必要性を感じている。
④2カ月ぶり11号(2022年8月4日)
この日は乃木坂46の金川紗耶が試合前のファーストピッチと、三回終了時には話題の「きつねダンス」を披露した。ベンチから見ていた万波は「めちゃめちゃかわいい。改めて生で見ると、アイドルとか好きになる人の気持ちがわかる」とうなずいた。
万波も2打席目までの登場曲を金川ら4期生メンバーの曲である「I see…」を使用。「浅間さんから『登場曲変えろ』って指示が来まして」という先輩の指令もあり、しっかりと〝おもてなし〟を果たした。
そして、最大の楽しみも帰ってきた。週刊少年ジャンプで連載されている人気漫画「ONE PIECE」だ。作者の尾田栄一郎が最終章に向けて、6月27日から1カ月休載した。休載中は「今1カ月休載なので、月曜日のおっきな楽しみが一つ減ったような、そんな気持ちです」と落ち込んでいたが、7月25日に連載再開。毎週月曜日に訪れる娯楽も、大きな原動力となっているはずだ。
⑤12号(2022年8月12日)
新庄ビッグボスの助言が効いた。チーム屈指の好打者である近藤に「どうやってボールを見逃しているかを聞いてみたらいいんじゃない」と声をかけてくれた。
前日11日の試合前に近藤の元を訪れ、早速実践。「打席の中で真っすぐのライン、軌道をイメージしてつくっておかないとキツい。線を引っ張ってきて、そのイメージを持てるかどうかが大事」。目からうろこの教えを授かり、「試してみたら、きのうから全然違う。アドバイスが生きて、きょうの結果につながったと思います」と感謝した。
⑥年俸倍増の2000万円で契約更改(2022年11月29日)
近い将来、欲しいモノがある。華のある選手にあこがれてきた。「買いたいものはSL63です。ベンツ。新型がめっちゃ格好いいんですよ。SLで球場に行きたいです」と無邪気に笑った。3000万円に迫る高級外車にロックオン。かつて、年俸とほぼ同額のベンツを購入し、税金を払うために借金したという新庄監督の行動にも通じる部分がある。
チームトップクラスのスイングスピードを生み出す身体能力を持ち合わせる。長距離砲として、大化けする可能性を秘めている。「30本、100打点が毎年できるような選手だったら、必然的にそこ(5億円プレーヤー)は見えてくると思う。まだ将来の構想ですけど。そういう数字をクリアできるようになりたい」。覚醒の予感を漂わせる大器は、頂に立つ日を想像しながら、新球場で暴れ回る。
⑦単身渡米。ベッツとの出会い(2022年12月13日)
驚きの出会いもあった。万波が施設で練習していると、すぐ隣で大リーグ・ドジャースに所属するムーキー・ベッツがトレーニングに励んでいたという。ベッツはレッドソックスに在籍していた2018年にア・リーグ首位打者とMVPを獲得。これまで5度のシルバースラッガー賞と、6度のゴールドグラブ賞に輝いたスーパースターだ。
自らもファンの一人である万波は、「すぐ近くにいてヤベーってなった。アップとかを見ると、すごく動きが柔らかい。動きが滑らかで淀みがない。そういう特長のある選手なんだとは思うけど、超刺激を受けた。チラチラ見てしまいました」と、無邪気に笑う。超一流選手の練習を間近で見て、モチベーションは最高潮に高まった。
成長した姿を見せたい人がいる。前日12日に、横浜高の先輩である近藤のソフトバンク移籍が決定した。一報を知った万波は「色々な助言をもらっていた。寂しい気持ちもあるし、僕にとってはチャンスが1個増えた」と、複雑な気持ちを吐露した。
本人には直接連絡を取り、これまでの感謝を精いっぱい伝えた。近藤からの返信は「能力があるんだから自信を持って頑張れ。こちらこそ連絡をくれてありがとう」。憧れの先輩がくれた言葉は、優しさで満ちあふれていた。「本当にすてきな人だと、あらためて思いました。次はレギュラーとして会えるように頑張りたい」。アメリカで得た貴重な経験を生かし、憧れの人へ恩返しを果たすつもりだ。
⑧スラダン・桜木風の赤髪にイメチェン(2022年12月20日)
桜木花道は、お手本とするアスリートだ。「最後まで諦めない。最後までボールを追いますし、やると決めたことをやりきる。男子としてすごい心をつかまれる。僕も球際とか(見習いたい)」。大きなミスを犯す場面は、自身の経験と重ねて、大きく感情を揺さぶられた。「一番大号泣でした」と明かすのは県大会の海南戦。「最後、花道がパスを間違えちゃうシーン。そこで涙が止まらなかったです。スポ根で。超感情移入できる」と熱弁した。
赤髪継続については「一過性のものなので、今が赤のピーク。続けるかもしれないし、とりあえず今はこれを楽しもうかな」とニンマリ。プロ4年目の今季は14本塁打を放ち、ブレークの兆しを見せた。そのポテンシャルの高さは誰もが認めるところ。桜木花道魂で、一流プレーヤーへ駆け上がる。
⑨2号(2023年4月11日)
同学年の仲間の存在が、発奮材料となっている。今季からドラフト1位・矢沢ら大卒組が加入し、2000年度生まれはチームで一大勢力となった。万波が今季1号を放った9日のオリックス戦後には、福岡で同学年が集まり〝祝勝会〟を開催した。
同日の試合ではドラフト2位・金村がプロ初勝利を挙げ、矢沢がプロ初打点をマーク。野村が今季2号となるバックスクリーン弾を放った。「金村におごったりしないですけど、みんなでご飯いきました。ちょうど4人とも試合に出ていた。普通に休み前だし、良い勝ち方だった」。鍋を囲んで、互いの活躍を誓い合った。
2000年度生まれの同学年会には、支払いのルールがある。「僕の同級生はじゃんけんなので」。2月の春季キャンプ中に行われた際には吉田が会計を担い、今回は「矢沢がじゃんけんで負けたので」とドラフト1位ルーキーがごちそうしたという。
11日からドラフト5位の奈良間がプロ初昇格し、1軍登録されている同い年は5人になった。「僕なんかジェームス(野村)とかに負けたくないですし、大卒で入ってきたメンバーも本当に1軍いてすごい刺激になっている。いい意味で、刺激し合っていきたいです」。そう力強く誓った万波が目指すのはミレニアム世代の旗頭だ。
⑩今季初4番で4打点(2023年4月26日)
仲間の表情が、頭に残っていた。この日の練習前に打順を伝えられ、野村を見た。「何かすごい、悔しそうでした。すごい印象的でした」。いつも通りを心がけて試合に臨み、結果も残したが「(4番起用は)結構びっくりしましたし、ちょっとソワソワしました」と、体はいつも以上の緊張感に包まれた。「やっぱりプレッシャーがある打順。ジェイ(野村)は本当に毎試合プレッシャーとか責任を背負ってやっていると感じた。すごいですね、あいつ」。あらためて、高卒同期で入団したライバルのすごさを知った一日だった。
それでもこれから先、チームの〝主人公〟を譲るつもりはない。昨年12月、自主トレを行ったアメリカから帰国する際、必要書類を揃えられず空港で足止めを食らった。予定の便に乗れず、言葉も通じない異国の地でたった一人、夜を明かすことになった。普通ならパニックになりそうな状況でも、万波は「めちゃくちゃ漫画でありそうな展開だなーと思って。楽しめました」と、まるでジャンプ漫画の主人公のように明るく乗り越えた。「HUNTER×HUNTER」や「ONE PIECE」などを愛し、小学生の頃から愛読する週刊少年ジャンプは「死ぬまで定期購読する」と宣言している。
新球場で初めてお立ち台に上がった。「もちろんまだまだ上位、優勝目指して頑張っていますし、本州に比べて札幌の桜は開花が遅かったので、僕らもここから開花していけたらいいな、なんて思っています」と、チームを春の花に例えて逆襲開始を宣言した。まだ、何も諦めていない。シーズンが終わる10月に、満開の笑顔を咲かせてみせる。
⑪5号ソロで北山援護(2023年5月4日)
1学年違いの北山とは、休みの日に洋服を買いに行くなど大の仲良し。「すごくトレーニングのこととか詳しいですし、気になったこととか北山さんにまず聞く。本当に教授ですよ」と公私共にお世話になっている。
シーズン開幕戦前には2人で札幌市内をドライブ。豚骨しょうゆの『家系ラーメン』を愛する万波だが、右腕に誘われて『二郎系』の店へ行くこともあった。
5試合ぶりの一発で、チームの2カード連続勝ち越しに貢献。5日からエスコンフィールド北海道で楽天3連戦に臨む。「僕自身、(5日先発の)田中(将)投手を打つのに苦労しているので、今までの凡退を生かして挽回できるように頑張りたい」。勢いそのままに、新本拠地でも大暴れする。
⑫2戦連続V打(2023年5月5日)
決勝ソロ弾を放った4日の西武戦(ベルーナ)に続き、勝負どころで、集中力を発揮した。昨オフには、メンタル強化のヒントを得る一つのきっかけがあった。つかの間の休息日だった大みそかに、先輩の郡と一緒に埼玉スーパーアリーナに出かけ、総合格闘技イベント「ライジン」を観戦した。国内トップ選手と海外一流選手との対抗戦が行われ「拳や蹴りが当たる音も聞こえる。会場の緊張感がヤバかったです」と興奮を隠せなかった。一瞬の判断が勝敗を分けるのは、野球も同じ。異なる競技から刺激をもらっていた。
⑬15号(2023年7月4日)
パ・リーグ本塁打王争いで、2位の浅村に2本差をつけ、トップに立っている。海の向こうでは、日本ハムから旅立ち、二刀流を実践しているエンゼルスの大谷がア・リーグの本塁打王争いをリードしている。米球界を席巻するスターは、万波にとってあこがれの存在。今年3月、侍ジャパンのサポートメンバーに選ばれ、対面がかなった。フリー打撃を間近で見学するなど、パワーや技術、人柄に触れた。
今季の本塁打はいつも動画でチェックしている。驚異のハイペースでアーチを量産する大谷を見て「ヤベーなと。目指すところは、はるか先だなと見せつけられていますね。80試合くらいで31本ですよね。舞台も違うし、レベルも違いますけど、まだまだだなと実感しています」と素直な心境を口にした。
体つきや実績、経験は異なる。ただ、吸収できる部分があると信じている。最高の教材を自らの成長につなげるつもりで「どうやったらこんな打球を打てるようになるのかと、いつも真剣に考えています」と明かした。規格外の身体能力を持つ男は高卒5年目で、まだ発展途上。今は雲の上の存在でも、大谷の背中を追い続け、超一流スラッガーになる。
⑭山下舜平大からの2安打含むプロ初4安打(2023年7月28日)
初出場でMVPに輝くなど大活躍だったオールスターゲーム。他球団の選手と交流した万波が「一番しゃべったかもしれない」というのが、今季8勝を挙げている高卒3年目の山下だった。
「どんなトレーニングしているのか聞きました」と興味津々。ここぞとばかりに急接近した。食堂では21歳のストイックな姿を目撃し、「ゆでたまご、白身だけをいっぱい食べていました。常にサプリメントドリンクを作ったりしていましたね」と感心。「いろいろ考えているんだなと。すごいっす」と思わず脱帽した。
万波自身も、食トレを敢行中。「僕も脂質がゼロになるので、黄身を食べないのをやっていた。まだ、結論出ていないですけど、いろいろやった結果、いまは黄身を食べています」。ブレーク中の右腕を参考に、いまはベストな形を模索しているという。
⑮17&18号(2023年8月12日)
5年目のシーズンを迎え、初めて1軍でフル稼働している。心身ともに疲弊しているが、リラックス法も確立している。ホテルの自室や移動中の機内で、大好きな漫画を読みふける。現在は、ウェブで連載されている「エックスアッシュ」が一推し。「ジャンルは思い切り王道バトルという感じ。ファンタジー要素もあって面白い」とドハマりしている。
チームはリーグ最下位に低迷している。しかし、マンガの主人公のように試練を乗り越え、成長してきた万波は最後まで諦めない。「まだ40試合近くある。勝ち星は僕ら次第で積み上げられる。自分の結果がチームの勝敗に直結すると思ってやっている。責任感を持って(中軸を)打たせてもらっていることを意気に感じて、もうひと頑張りしたい」。新時代のファイターズの顔は、全身全霊をかけて143試合を戦い抜く。
⑯23号(2023年9月18日)
踏ん張りどころのシーズン佳境を迎え、アーチ量産の兆しが見えた。好調の理由が一つ、ある。先頭打者弾&サヨナラ弾をマークした16日の試合から、バットを変更していた。1学年上の清宮が証言する。「あれ、僕のです。みんな、僕から(運を)吸い取っていくッス」。自身は8月27日の西武戦(ベルーナドーム)で10号を放って以来、本塁打が出ていない。その分、チームメートに幸運が舞い込んでいるという。
すでに効果は立証されている。昨夏のオールスターでは、オフの自主トレでお世話になっている柳田(ソフトバンク)にバットを貸したところ、ホームランが飛び出した。日本ハムではバットを渡した上川畑、野村らが復調のきっかけをつかんだ。縁起物として、重宝されており、清宮は「応急処置的な(効果が出ている)。ちょっと(状態が)悪くなったときにちょうどいいのかもしれない」と苦笑いを浮かべた。
打球が思うように上がらず、試行錯誤する時期もあったが、万波は先輩の優しいサポートを受け、上昇気流に乗った。「いい感じを継続できているので、今後に向けてより勢いがつく内容になっているんじゃないかなと思います」。規格外のポテンシャルを秘める大器は、タイトル争いの重圧も真っ正面から受け止め、フルスイングを貫く。
⑰24号(2023年9月23日)
高卒5年目のブレークは偶然ではない。入団後から、来る日も来る日も鎌ケ谷でバットを振り続けてきた成果だ。時には朝5時から体を動かし、毎日のように夜間練習に励んだ。
「やっぱり今、これだけ試合に出ていても体はすごく元気ですし、5年間、分からないなりにいっぱい練習はやってきたつもり。技術練習もそうだし、ウエートトレーニングだったり、すごく遠回りしたような気はしますけど、そのおがげで1年間戦う体力もついたと思う。悪いことも少しは分かるようになったし、全部の練習に意味があったんだろうなとは思っています」と、研さんの日々を懐かしそうに振り返った。
同じ高みを目指すチームメートとの出会いも、成長を加速させるきっかけになった。今から2年前。21年シーズンはまだ2軍暮らしが長かった。その中で1学年上の清宮、同学年の野村、この年から入団した今川と4人で夜な夜な鎌ケ谷の室内練習場に集まり、「ああでもないこうでもない」と打撃論を交わした。
「今川さんが来てから、みんな今までよりバッティングの話をするようになった感じはしますね。今川さんが本当、いろんな人をよく見ているので。僕はあまり人のバッティング練習を見ていなかったんですけど、例えば人のバッティング練習を見て、『あ、こう振っているから、こういう打球が行くんだな』と考えるようになったり、そういう癖も付いてきたかなと思う。やっぱ野球のことを考えている時間は、巡り巡って自分のバッティングにつながると思う。『あ、今の自分はこうだから、あの人のああいう感じと一緒かな』というのが当然あるので、良いことだと思っています。キヨさん(清宮)には『こうしたら、こうなると思うんですけど、どうですか?』 とか、キヨさんのこういうのってどういう感覚なんですか? みたいなことを聞いたり、みんなでよくそんな話をしていました」
⑱国際大会デビュー(2023年11月16日)
大ブレークを果たし、今大会で自身初の侍ジャパン入り。スターの仲間入りを果たしたが、庶民派な一面は変わらない。パワーの源は、チェーン店の牛丼。大会初戦のこの日の朝は、「昨日、『すき家』に行ったので、今日は『松屋』にしました。ホテルのご飯が11時からなんですけど、朝早く起きちゃうので。テイクアウトかウーバー(イーツ)で頼んでいます」。
初の国際大会に向けた〝勝負メシ〟には、ネギたま牛めしをチョイス。「(緊張は)普通の試合ぐらいです。意外と始まっちゃえば。一打席目は緊張しましたけど、1打席終わってだいぶ落ち着きました」。牛丼で活力を注入し、平常心で臨むことができた。
17日の韓国戦に向けて、「でっかいのを打ちたいっすね。打席を増すごとに良くなって球は見えているので、あとはどれだけ捉えられるか。明日の練習でしっかり詰めてやりたいです!」。充実の表情を浮かべ、球場を後にした。
⑲侍ジャパン1号(2023年11月17日)
宮崎での代表合宿期間中には、野村、小園(広島)ら同学年の選手を中心に、年下の秋広(巨人)、岡林(中日)を交えて食事会を開催。ご当地グルメの地鶏を食べながら、交流を深めた。日本ハムの〝同級生会〟ではじゃんけんで負けた人が会計を担うのがルールだが、勝者が支払う〝男気じゃんけん〟を万波が制し、ごちそうしたという。
今年3月にはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を控えた日本代表にサポートメンバーとして参加。飛躍のきっかけをつかみ、人生初の日本代表入りを果たした。「フル代表に食い込んでいけるように、その第一歩だなと自分で思ってアジア大会に臨んでいるので、まだまだ結果を残していきたいと思います!」。じゃんけんで見せた勝負強さを発揮し、同世代のトップランナー争いも制す。
⑳トークライブで北山と私服かぶり(2023年11月20日)
プライベートでも仲が良い2人は、上下黒のラフな服装で登場した。イタリアの人気ブランド「ストーンアイランド」のトレーナーが示し合わせたかのように、お揃い。北山は「動きやすい服装で行こうと思ったら、まさか一緒でした。楽屋に入った瞬間、笑いました」と偶然の一致を報告。万波は「ちょっと恥ずかしいです。カップルでもなかなかないと思うので、どうなのかなと…」と照れくさそうに頭をかいた。道内各会場をリモートでつないだ際、帯広の上沢から「普通に気持ち悪いなと思います」とツッコまれ、大きな笑いが巻き起こっていた。
㉑侍ジャパンで二塁打(2024年3月7日)
侍ジャパン合流前に「話したい選手」に挙げていたヤクルト・村上とも、じっくり語り合った。「いろんな話をしましたね。言わないですけど」とニンマリ。今シーズン用の〝お守り〟もゲットした。
昨季の交流戦では、1学年先輩からバットが欲しいとねだられ、手渡した。お礼に打撃用手袋をプレゼントされ、「エスコンのロッカーにずっと飾っていました」。2022年の三冠王〝村神様〟の所持品をお守り代わりにして、ビジター遠征にも肌身離さず持ち歩いていた。
その御利益はバツグンだった。シーズン25本塁打を放ち、プロ5年目で一気にブレーク。「去年は1年間、遠征先についてもらってきたのでお守りです。今回は日の丸付き!」とうれしそうに明かした。
今年11月には、第3回「プレミア12」が開催予定。昨年3月に行われたWBC前の強化試合はサポートメンバーだったが、昨秋の「アジアプロ野球チャンピオンシップ」を経て、侍ジャパンの常連になりつつある。「改めてすごい選手がいっぱいいるなと思ったので、まずシーズンで負けない結果を出せるように。結果を出してまた帰ってきたいです!」。〝村神様〟からもらった縁起物のお守りと共にシーズンを戦い抜く。
㉒決勝打(2024年4月20日)
論理的には説明できない現象が起きている。もう3度目だ。万波が再び「教授」を支える有能な助手として機能した。ロッテ先発・小島の立ち上がりを攻めた一回。得点圏に走者を置き、カウント1―1から外低めのフォークを引っ張った。「きょうは真っすぐをしっかり強く振りたいなというのが、大きなテーマでした。真っすぐを右中間方向に強く振っていくという中で、うまく落ちる球に反応できたかな、という感じです」。会心の当たりではなかったが、勝利を呼び込む適時打になった。
北山が先発した過去2試合はいずれも本塁打を放ち、マルチ安打をマークしていた。この日は1安打にとどまったが、価値の大きな決勝点をゲットした。一緒にお立ち台に上がるのも2度目。ずば抜けて相性が良く、万波は「いや、本当に…本当にたまたまなので、何とも言えないですけど、何かあるんですかね。不思議っすよ、僕も」と驚きを隠せなかった。
野手と投手では普段、練習メニューが異なるため、接点が少ない。ただ、考え方や取り組む姿勢に共通点があり、キャンプ中に接近した。いきなりフレンドリーな関係にはならなかったが、少しずつ距離が縮まり「僕も北山さんもキャンプの時に朝早く行って、かなり準備に時間をかけるタイプ。2、3人しかいないような時間に一緒になることが多かった。最初はそんなにしゃべらなかったんですけど、北山さんは『何か気が合うと思った』と言っていました。だからきっかけはそれじゃないですかね。おそらく」と振り返った。
今では遠征中の空き時間を一緒に過ごすこともある。オフのイベントに出演した際には、同じブランドの同じデザインの私服で登場する一幕もあった。感性が似ているのかもしれない。ただ、好みなど、異なる部分も多いそうで「服はたまたまっすよ。あれは割と、個性が強くなくて、そこまで志向は出ていないと思います。僕は趣味とかないですけど、北山さんは、こだわり強めのことをやっている。よく面倒くさくないな、と思いながら見ています」と明かした。
試合では勝ち星に大きく貢献している。北山から感謝の言葉をかけられることはあるのか―。万波は先輩との関係性に触れ「そんな、こっ恥ずかしいこと言います? そんなのないですよ、別に」と笑い飛ばした。これからも息ピッタリのコンビが共闘し、チームの勝利を引き寄せる。
㉓15打席ぶり安打(2024年4月30日)
4月27日のオリックス戦(エスコンフィールド北海道)。八回、トレード移籍したドラフト同期で仲の良い吉田輝星投手(23)との対戦が実現した。
2死一、三塁の場面で打席へ。カーブ2球で2ストライクと追い込まれたものの、じっくりボールを見極めて四球を選んだ。1度もバットを振らず、「時の流れを感じましたね。お互い大人になった気がします」と照れくさそうに振り返った。
どちらかといえば、積極的なスイングが持ち味の万波と、真っすぐでガンガン攻める投球スタイルだった吉田。「1、2年前だったら、あっちも真っすぐエイヤ―で来ていた気もしますけど、全球変化かな。ちゃんと試合の中での勝負って感じですね」
お互いの成長を実感する初対決となった。
27日の試合後には、1学年上の清宮らを交えて、吉田を囲む食事会が開催されたという。1回4失点と散々な結果だっただけに、万波は「アイツ来ないかと思いましたよ」と笑う。大人になっても、苦楽をともにした仲間との絆は強い。
㉔復調の裏に吉田輝星(2024年8月5日)
前カードのオリックス3連戦(エスコンフィールド北海道)では、ドラフト同期の吉田輝星投手(23)を交えた3人で〝プチ同級生会〟が行われていた。
昨年11月、オリックスにトレードが決まった吉田の送別会で、号泣したのが万波と野村だった。敵同士となっても、オリックスが北海道を訪れるたびに、同学年の仲間たちが集い〝吉田輝星を囲む会〟が開催されている。
今回は万波が吉田を食事に誘い、野村も参加することになった。
「アイツ(吉田)がオレに会いたかったスタンスで来ました。相変わらず口が達者で。ジェイ(野村)と輝星はしょっちゅう飯に行っていたので。2年前のキャンプの時とか、休みの日はほぼ2人と行っていた。マジで気を使わない。お互いガンガン何の気も使わないで、言いたいこと言う。そういう関係、なかなかないじゃないですか。楽しいっすね」。そう語る万波は、心の底からうれしそうなキラキラした表情だった。
食事会を開催した7月30日の初戦は、延長十二回の末、引き分けとなった。試合終了が午後11時近くになり、「食べ始めが12時半とかでした」
その日の試合では、九回無死一塁の場面で吉田と対戦し、空振り三振に倒れた。「めっちゃ球、良くなっていますね。衝撃でした。最速も更新したと言っていましたし、明らかに球がいいですよね」と驚かされた。
新天地で奮闘する吉田にとっても、旧知の仲である2人の存在は特別だという。
「今回は行かないかなと思って何も連絡しなかったら、マンチュウ(万波)から来て。(同級生とは)毎カード、会っている気がします」とニッコリ。「(球場で)ジェイに会った時に『マンチュウと飯行くの?』と言われて。『行くけど、行く?』と言ったら、『もう予定入っているから大丈夫』って。ジェイも来るの決まっているから、大丈夫って意味だったんですけど、なんで聞いたんって(笑)」。そんなほほ笑ましいやりとりもあった。
吉田によると、万波が海鮮を苦手としていることもあり「焼き肉っすね」。2000年度生まれの同級生会は、じゃんけんで負けた人が会計を担うのがルール。「じゃん負けでジェイが払いました」。今回は野村が食事代を支払った。
3連戦の最終戦8月1日には、『野村VS吉田』も実現した。シュートで内角を突いてくると予想していた野村に対し、吉田が投じたのはスライダー。初球を打って、二飛に倒れた。
ベンチに戻り、万波と顔を見合わせて「やっぱり変化(球)で来たな」。5月23日以来の対戦に「1球しか(打席に)立っていないですけど、良くなっているんじゃないですか。輝星、頑張っていますよね」と刺激を受けていた。
離れていても、同期の絆は固い。気の置けない仲間の存在を励みに、それぞれがそれぞれの場所で必死に戦っている。
㉕プロ初満塁弾(2024年8月6日)
タイミングの取り方にも変化を加えている。差し込まれ気味だったことを踏まえて、軸足の右足でリズムを取るようにしている。
「ちょっと動きのきっかけづくりみたいなイメージで今やってみてます。まだ、なんとも言えないっていうのが正直なところかなと思います。メリット、デメリットは何でもあると思う。タイミングは特に続いていく課題だと思うんで、一概にあれがどうとか、まだ言えない段階かなと思います」。試行錯誤の段階だが、この日は功を奏した。
また、万波には週の初めに楽しみにしていることがある。毎週月曜日に発売される週刊少年ジャンプで連載中の漫画「ONE PIECE」だ。昔から毎週、欠かさずに買って読んでいたが、プロ入り後に沖縄でキャンプを過ごしていると「沖縄では月曜にジャンプを売っていないことが分かってからは電子派です」と今は電子版を読んでいるようだ。肝心の内容も終盤に差しかかっており「今やばいです」と鼻息は荒い。日程上でも月曜日に「ONE PIECE」を楽しんでから、火曜日からの連戦に入ることがもっぱら。尾田栄一郎先生からパワーをもらって、1週間の戦いに臨んでいる。
㉖さらばと共演熱望(2025年2月12日)
万波の球宴グラブが、意外なところにあった。YouTubeチャンネル「さらば森田の五反田ガレージ」内の動画で、ザ・森東の事務所に飾られている万波のグラブが紹介される一幕があった。万波が森田と交流のある姉を通じて、自ら送ったという。
「ザ・森東側に、あるお願いをして、それのお返しは何がいいかな」と思案し、「YouTubeでエスコンに来てくれた時も(自分の)ユニホームを買ってくださってうれしいし、普通におもろいんで、さらばのYouTube。なんかそこに自分のグラブが映ったらアツいなっていうスケベ心です」。その思惑通り〝采配〟は的中した。
「さらば青春の光Official YouTube Channel」はもちろん、サブチャンネルの「裏さらば」も逐一チェックしている。
「お金がかかってない企画がマジおもろいじゃないですか。裏さらばも、もちろん面白いし」と口調はどんどん熱を帯びた。「さらばの公式に乗ってるコントとかも、ちょこちょこ見て勉強はしてます」と、人気コンビの本職であるコントも勉強中だ。
オススメ回はピン芸人のひょうろくがつくり上げた架空のマネジャー・星満の実態を暴くドッキリ回だ。
「どっから聞いても、ひょうろくさんでしかない。あれは本当に腹ちぎれるぐらい笑ったっすね」と爆笑回を振り返り「全部おもろいですけどね。GPS企画もおもろいし、エロ企画も僕、大好きなんで。エロ企画おもろいとか、声を大にして言えないのがね、つらいですね」と苦笑いした。
贈ったグラブには、もう一つの野望も込められている。「グラブだったら、いつか企画で使えるかな」とYouTubeでの共演を思い描く。「企画的に球団が許可してくれるやつがあるか分からないですけど、いつか出たいっす!」と熱く訴えた。
登録者数140万人超のモンスターチャンネルへの出演なるか。シーズンの成績同様に、注目したいポイントだ。