水谷瞬 今季1号の裏に心の進化「不安、不安、不安」から「かかってこいよ」「取れるものなら取ってみろ」
八回2死一塁、今季1号の2点本塁打を放った水谷(中央)=撮影・松本奈央
■パ・リーグ5回戦 日本ハム7-4オリックス(4月19日、京セラドーム大阪)
今季初ヒットはダメ押しの豪快弾!
日本ハムの水谷瞬外野手(24)が「1番・左翼」で先発し、今季初安打で1号2ランを放った。万波の代打3ランで3点をリードした八回、2死一塁から相手の6番手・阿部を捉え、左翼スタンドにダメ押しの一発を見舞った。
今季は左脇腹の違和感で開幕1軍を逃したが、遅れてきたパワーヒッターがチームの勝利に貢献した。
昨季ブレークも満足せず
昨季、一気にブレークを果たしたが、満足はできなかった。
「去年1年間、良かった点よりも、悔しかった方を覚えているんです。今年はそれを繰り返さないように。去年と一緒のことをしていても、良くて一緒の成績にしかならないと思う。それを超えるためには、マインドを変化させないといけない。1年やそこらで、2000本打つような選手ほどの技術を得るのは無理。でも、考え方は変えられるので、そういうところからの変化を求めたい」。現状維持を拒み、心の改革に挑んだ。
八回2死一塁、今季1号の2点本塁打を放つ水谷=撮影・井上浩明
大きなインパクトを与えた2024年シーズン
水谷はまず、自分自身を過小評価することをやめた。以前は常に心に不安を抱え、昨季の好成績にも実感が伴わなかった。ただ、今季は考え方を変え、客観的に自分の成果と向き合った。
「交流戦MVP、交流戦史上最高打率、オールスター出場、侍ジャパンで本塁打…」。誰がどう見ても、並外れた結果だった。
自らを客観視 「天狗になるわけじゃないんですけど…」
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「侍も含めて、簡単にやってこられたことではないと思う。僕の中では、そこまで実感はないんですけど、客観的に見た時に、単純にすごいことをやっているんだなとは思えた。自分が思っている以上に、僕の上を走っていた人たちを、全員じゃないですけど、たくさん抜いてきたのかなと思うので、それは(自分自身に)認識させないといけないことかなと思います。もちろん、そこに慢心するつもりはなく、さらにという気持ちはあります。そこを踏まえて、じゃあ(自分とポジションを)争っている人たちが、簡単にそこまで(成績を上げて)こられるのかと考えたら、それは1日、2日、1週間、1カ月でたどり着けるところではない。友亮さん(佐藤2軍打撃コーチ)にも、『もっと自信を持っていけ』と言われる。天狗になるわけじゃないんですけど、そういう気持ちも5%、10%ぐらいは持って、堂々としていいのかなと。もちろんチャレンジャーなんですけど、『かかってこんかい』、『かかってくるなら、こいよ』、それぐらいの気持ちで構えても良いんじゃないかなと今年は思っています」

足下を見つめ直して再出発
この考え方が英断につながる。開幕直前に左脇腹の違和感を覚えた時、無理をすれば開幕から出場することもできた。それでも長期離脱を防ぐため、小休止を選んだ。
「(昨年の活躍がなく)今年が1発目のチャンスだったら、痛くても行っていた」と認める。ただ、「僕は上(1軍)で出ていなくても、止まっているわけではないですし、鎌ケ谷で過ごしている時間も成長して前に進んでいると思っている。上で結果を出している人たちがいても、僕も進んでいるから、追い付けないでしょ、来るなら来いよ」の精神で、焦る気持ちを抑え込んだ。そして早期復帰と、この日の活躍。決断を正解にしてみせた。
背を押された仲間の励まし
同学年のチームメートからの温かい言葉も支えになった。
「まんちゅう(万波)が『勝つためには(水谷が)必要だから』と言ってくれていたというのも聞きましたし、金村が完封した時に(祝福の)ラインを送ったら、『早く戻って来いよ』と言ってくれたり、そういうところはシンプルにうれしかった。同年代、同世代で活躍して勝ちたいと思いましたし、そこに加わりたいと思いました」と復活を後押ししてもらった。
八回2死一塁、2点本塁打を放った水谷(手前)を迎える万波(右から3人目)ら日本ハムナイン
言霊を実感した松本剛との会話
今でも正直に心と対話すれば、不安が消えたわけではない。だからこそ言霊を信じ、ポジティブな言葉を発するように心がけている。きっかけは、雑誌「an・an」の撮影時に交わした松本剛との会話だった。
「撮影の時に剛さんと話していて、発売される3月26日に2軍だったら嫌ですね、ということを言っちゃったんですよ。(実際に脇腹の違和感で2軍となり)言霊ですよね。言霊、あるなと思ったので、今年はポジティブなことだけ発信していこうと思っています。本当は、来るなら来いよとか、あんまりそういうことを思うタイプじゃないんです。自信はないです。正直、不安です。でも、もっともっとレベルが高いところを目指して、そこに順応できる選手に少しずつなっていった時に、ずっと不安、不安、不安じゃダメだと思う。チームを背負う、日本を背負う選手になった時に、不安、不安、不安じゃダメ。そういう意味で、来るなら来いよ、(自分のポジションを)取れるなら取ってみろよという気持ちを、ほんの少しですけど、持っても良いのかなと。そういうものを、人に気持ちを伝える程度で発信しても良いのかなと。言霊じゃないですけど、(言葉にすることで)自分にかえってくるのかなと思って、今年はここまで来ています」
さあ、開幕だ! 目指すはリーグ優勝&日本一
これまで何度も「復帰して活躍すれば、開幕戦にいなかったことは誰も覚えていなくなる」と言ってきた。
チームの日本一が決まるまで打ちまくり、言葉の力を証明してみせる。
