【’25ドラフト道産子有望株】④北海学園大の146キロエース左腕・木村駿太 ライバルの背中追う
北海学園大のエース左腕・木村駿太=撮影・西川薫
高校時代は無名も大学で球速14キロアップ
今秋のプロ野球ドラフト会議で指名が期待される選手を先取りする「’25ドラフト道産子有望株」。第4回は札幌6大学通算10勝を誇る北海学園大のエース左腕・木村駿太(4年)。札幌国際情報高時代は無名だったが、大学3年間で球速が14キロもアップ。セ・パ5球団が注目する存在に成長した。
まだ立てていない神宮球場のマウンド
野球人生初の全国の舞台へ、いよいよラストイヤーが幕を開ける。過去3年間、神宮切符を逃し続けてきただけに「学生野球も終わるので、最後は絶対優勝したいし、自分が先発した試合は、とにかく1人で投げ切れるように頑張りたい。自分は全国大会を経験したことがないので、大学生として神宮で1度投げてみたい」。3月末の巨人と西武の3軍とのオープン戦では、合計5回を投げ無失点。卒業後の進路は「このリーグ戦次第で決まってくる」。5月1日に開幕する春季1部リーグ戦は、左腕一本で自らの将来を切り開く覚悟だ。
【2000円お得! 年払いプランはコチラ】
チームには工藤、高谷と150キロを超える速球派がいるが、島崎圭介監督(53)は「エースは木村」と断言する。理由は「フォームはそんなにいじるところはなかったので、体に力がついた分、球速に反映されている。コンスタントに良いところが、やはりエースにふさわしい。練習態度も行動も発言も、常に安定している」と全幅の信頼を寄せている。

木村は3年間で12試合に先発して完封が3試合。通算防御率は1.30。奪三振率は10.58をマークする。「自分は実戦で球速を求めて投げると、あまり良くないと感じている。気がついたら(球速が)出ていた、ぐらいの感覚で、球速以外の部分を考えて投げた方が自分は結果がついてくる。コントロールと配球。相手が待っていないタイミングで、球種を選んで抑えるのが自分のスタイル。防御率は一番大事にしている。結局、フォアボールとかヒットを打たれても、点を取られなければ試合には勝てる」。球速が遅かった高校時代に生き残るために編み出した投球で、アウトを一つずつ積み重ねる。
本人も島崎監督も想像できなかった(投球動画あり)
この記事は有料会員限定です。
登録すると続きをお読みいただけます。
本人も指揮官も、高校3年の時点では、いまの姿を想像できなかったという。 高校2年時にチームは2年連続で南大会決勝に進出。木村も3番手で登板したが、甲子園には届かなかった。3年時は背番号10。エースナンバーは、当時投手だった侍ジャパン大学代表候補の仙台大・平川蓮外野手(4年)に譲ったが、4強入りした南大会はほぼ1人で投げ切った。当時の最速は132キロ。「もちろんプロ野球選手を目指していましたが、高校の時は現実的ではないと思ってました」。母校の恩師で元日本ハム投手の有倉雅史監督(57)の勧めもあり北海学園大に進学。島崎監督も「入ってきたときは、もちろんここまでになるとは思っていなかった。ただピッチングのリズムだとか、バランスはいいなと思ったので、体に力がついたら良くなるだろう」と伸びしろは大いにあったという。
「自分の意思を持ったボールを投げなさい」
転機は2年の春。オフの地道な筋トレの成果で、体に分厚さが増し「急に球速が上がった」と木村。さらに島崎監督はマウンドさばきを「おとなしく見えて、すごく我は強い。駿太が首を振ったときのボールは極めてベストボール」と証言する。それは木村が高校時代、有倉監督から「自分の意思を持ったボールを投げなさい」とずっと言われていたから。「いまでも違うと思ったら首を振るようにしています」。捕手と合わないときは、サインが1周することも。「なんとなく投げたボールは、結局打たれることが多い。違うと思った球は投げない」という強いこだわりがある。
木村投手の投球フォーム
昨春実現しなかった約束を今年こそ
今年こそ〝ライバル〟との約束を果たす。昨春のリーグ戦中に、全日本大学野球選手権の組み合わせが決まり、1回戦で木村が所属する札幌学生連盟と仙台大の平川が所属する仙台六大学連盟との対戦カードとなり、「どっちも勝ち上がろう」と誓い合った。仙台大はリーグ優勝を果たしたが、北海学園大は優勝した星槎道都大との直接対決で2連敗し、2位に甘んじた。いまも仲は良く平川が帰省したときは母校で一緒にトレーニングする。現時点の知名度は平川の方が「ちょっと先に行ってる感じはします」。今年こそ優勝を成し遂げ、ライバルに追いつき、追い越す。
■木村駿太(きむら・しゅんた)2003年5月26日、札幌市生まれ。札幌稲穂小1年時に稲穂ホークスで野球を始める。札幌稲穂中では硬式の札幌西リトルシニアで投手。札幌国際情報高では1年秋の全道大会でベンチ入り。2年夏の南北海道大会では準優勝。北海学園大では1年春にデビュー、リーグ戦通算10勝。最速146キロ。変化球はカーブ、スライダー、チェンジアップ。178センチ、81キロ。左投左打。家族は両親と兄、弟。