山本拓実 2軍で新境地を開拓 金子コーチから授かった「ハッとするアドバイス」とは
19日のイースタン・リーグ、オイシックス戦で九回から登板し、3者凡退に抑えた山本拓=撮影・中田愛沙美
〝新スタイル〟確立へ着々
2軍調整中の日本ハム・山本拓実投手(25)が新境地を開拓している。
金子千尋2軍投手コーチ(41)の助言もあり、シンカーの投球割合をアップ。それに伴い、プレートの踏む位置を三塁側から一塁側に変更した〝新スタイル〟に手応えをつかんでいる。
本調子にはほど遠い防御率7.71
大胆〝イメチェン〟のきっかけは、金子コーチの言葉だった。
「ハッとするアドバイスって、なかなかないんですけど、久しぶりにそういうことを言われましたね」。中日から移籍して3年目の今季は開幕1軍入りを果たしたが、4試合に登板して防御率7.71。調子が上がらず、今月6日に出場選手登録を抹消された。
投球の幅を広げる落ち球
最初の1週間はファームの遠征に帯同せず、鎌ケ谷での残留練習に参加していた。山本拓といえば、ストレートとカットボールのコンビネーションが持ち味。新たな引き出しとして提案されたのが、落ちる変化球だった。
「シンカーをもっと使って良いよと。今までは落ちる球は空振りを取らないといけないイメージ。金子さんが現役時代に投げていたスプリットと僕のシンカーの球質が似ている。空振りじゃなくて、振らせてゴロを打たせるイメージで投げていたと。その1球で結果を出させるくらいの。それだったらストライクゾーンの中で強く投げるというイメージ」

「宝の持ち腐れ」だったシンカー
投球割合は少ないが、シンカーは武器にしたい球種の一つだった。
「ボールのデータはいいんですけど、なかなか使いづらい。宝の持ち腐れって言ったらアレですけど、もうちょっとうまく使えたらなと、ここ2、3年は思っていました」。金子コーチが後押ししてくれたことで、決心がついた。
新たな挑戦 勇気ある決断
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ブルペンでの投球練習中には、もう1つアドバイスを授かった。
「シンカーをストライクゾーンに投げていきたいんだったら、サード側より一塁側に立って投げた方が、シンカーだけを考えると良いかもしれない」。左打者の内角へ角度のあるボールを投げるため、右投手はプレートの三塁側を踏むのが一般的。「僕はなんとなく三塁側で投げていました。プレートの幅って、61センチあるので、単純に60センチずれる。なかなかその勇気は1軍の試合では出せない」。新しいことに挑戦する機会と捉え、プレートの踏む位置を変えた。

金子投手コーチ 「タイミング的に良かった」
発案者の金子コーチは意図をこう説明する。
「もともと、シンカーいいんですよ。そのシンカーを生かすためにこういう考え方もあるよと話した。やるかどうかは、拓実くん次第なので。もともと、持っている能力が高いので、シンカーをメインで考えたところで他の球がダメになることはない。落ち球がより安心感を持って使えると、バッターに的を絞られづらくなるのではないかと思います。プレートの位置をずらすというよりは、リリースの位置をずらす。2軍だからこそ、できると思います。1軍にいたままだと、なかなかできない。タイミング的に良かったと思います」。最終判断は本人に委ね、背中をそっと押したという。
2軍戦でシンカー中心のピッチング
新たなチャレンジは、驚くほど山本拓にフィットした。2軍戦ではここまで2試合に登板し、シンカー中心の投球を実践した。
「(捕手の)進藤、梅林さんに受けてもらって、2人とも使えると言ってもらえた。今は積極的に(サインを)出してもらっていますけど、信頼できる球種になっていますね。多めに投げているんですけど、他の球種にも影響が出ていない」

無駄にはしないファームでの時間
金子コーチといえば、ベテラン左腕の宮西にチェンジアップを伝授し、復活に導いたことで知られる。
「常々、そういううわさは聞いていたので。違う視点でアドバイスをもらえる人だなと思っていた。今回、自分の中ではいいタイミングでいいアドバイスをもらえました。これが1軍でも使えれば、また反応も違うと思う」。昨年も春先に2軍降格があっただけに「去年もそうですけど、ファームで手応えつかんで、というところがある。この時期に自分を見つめ直して、今年もいいきっかけをつかめています」と言葉に力を込めた。
ファンの期待も上昇中! 再出発へ気持ち新た
うれしい出来事もあった。このほど「ファイターズかわいいシリーズ」総選挙の結果が発表され、山本拓はタオルの対象選手に選ばれた。かねてから単独グッズの登場を熱望。ファンに呼びかけていたこともあり、「投票ありがとうございます」と感謝する。
同シリーズの開催は7月で、自身も「気温が上がってくると調子も上がってくるタイプ」。1軍再昇格を果たし、〝金子塾〟での学びを最大限に生かす。
