ターニングポイントとなる4連戦。大事な大事な1戦目を制したい《河合CRC竜の眼》
1週間で見違える戦いぶりに
価値ある1勝をもぎ取った。札幌は12日の水戸戦で惨敗を喫していた。簡単な失点を重ね、良くない退場シーンもあった。試合後に「非常に情けない」と語った岩政監督の言葉が、全てを表していたように感じられる。
短期間での立て直しは難しいと推測していたが、1週間後の藤枝戦は見違える戦いぶりだった。開始早々の失点にもめげず、鮮やかな逆転勝利を収めた。勝因の一つはMFスパチョークとMF田中克が中盤でタメをつくったこと。味方の上がりを待つ時間を生み出すことで、パターンが単調にならず、リズムとテンポの良い攻撃を展開できた。
決定的な仕事ができる田中克 現役時代に岡田監督から…
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勝利の立役者となった田中克は流れの中でも、セットプレーでも決定的な仕事ができる選手だ。藤枝戦で決めた同点弾は直接FKによるもので、ゴールまでの距離が近く難しいキックだった。私は壁を越える選択をすると見ていたが、スピードあるシュートをファーに沈めた。描くイメージやキックの感覚は、常人離れしたものがある。
優れたキッカーの存在があれば、試合の局面を一気に打開することができる。私は現役時代に岡田監督から、シーズンを通した得点の3割はセットプレーから生まれると教わった。
正確無比な飛び道具を持つメリットは大きく、札幌には一瞬でゲームを動かせる力がある。時にはきれいな曲線を描き、場面によっては強いシュートも放てる。変幻自在に左足を操る田中克は、これからも多くの場面でゴールシーンに絡んでくるだろう。
ピッチに帰ってきた深井
感動的な光景が、価値ある白星を彩った。度重なるケガに見舞われたMF深井が藤枝戦でピッチに帰ってきた。タフなアスリートとはいえ、同じ箇所を何カ月も掛けてリハビリするのは、普通の精神力では持たない。想像を絶する日々を乗り越えてきたはずだ。何度倒れても、くじけずピッチに戻る姿は、チームメートやサポーターに勇気を与えてくれる。
わずかな出場時間の中でも、深井はサッカーIQの高さを証明してくれた。DF西野が足をつっていたため、スクランブル体制でCBを務めた。本職ではないポジションを難なくこなせるのは、豊富な経験とずば抜けたセンスを有するからだ。最後まで危険な場面を招くことなく、きっちりゲームを締めた。ゲームを落ち着かせる能力は、さすがの一言である。
シーズンのターニングポイント
今季のJ2はまれに見る混戦で、10位から17位までの8チームが勝ち点12で並んでいる。上位チームとの直接対決が控える4連戦は、まさに正念場。ゴールデンウイークまでの戦いを、シーズンのターニングポイントと断言したい。
浮上するも、順位を下げるも全ては自分達のデキ次第だ。強敵に勝たなければ当然、昇格は見えてこない。相手はポテンシャルの高い選手を多く抱えるが、札幌も個の力では決して負けていない。2位を走る大宮を叩けば、これまでにない勢いをホームに持ち帰ることができる。勝つか負けるかで、プレドの動員も大きく変わるはず。大事な大事な1戦目を、何としても勝ちきってほしい。
「まちのミライ」の社長就任で
ここからは私事で恐縮だが、4月21日付で北海道コンサドーレ札幌の運営会社が出資する「まちのミライ」の代表取締役社長に就任した。さまざまある取り組みの中でも、26シーズンよりシーズン移行するJリーグの夏季キャンプ道内誘致は、重要な仕事になる。
既にサッカー関係者に対して、興味あるクラブは私に連絡をもらえるよう手配を進めている。今後も先陣を切って、自分のポテンシャルを発揮できればと思い描いている。
サッカー界の未来のために
各地でキャンプを実現できれば、地域の子どもたちや指導者にとって大きな刺激になることだろう。道内在住でも距離やスケジュールの問題があり、プロの練習を見る機会はなかなか訪れないのが現状だ。
誘致に成功すれば、幼い頃に国内トップレベルを肌で感じられる貴重な機会となり得る。北海道サッカー界、ひいては日本サッカー界の未来を思い、任された業務に全力を注ぎたい。