≪道産子F戦士北広島で俺は⑥≫大海 開幕投手は23年だけでいい
鹿部の魂受け継いだ新時代のエースが“最初で最後”の大役名乗り
道産子F戦士が2023年3月開業の新球場「エスコンフィールド北海道」について語るインタビュー連載の最終回は、プロ1年目に10勝を挙げた鹿部町出身の伊藤大海投手(24)が登場。前例のない挑戦を盛り込んだ「世界がまだ見ぬボールパーク」には、たくさんの夢と希望が詰まっている。新時代の幕開けに黄金ルーキーは、開幕投手の座を是が非でもつかみ取ることを誓った。(この企画は日本ハム特別取材班が担当しました)
ドラフト指名時からの絶対目標
昨秋のドラフト会議で指名を受けた時から、伊藤には絶対にかなえたい目標ができた。新球場の開幕投手を務める―。鹿部町出身の道産子右腕は、ことあるごとにその強い決意を口にしてきた。
「新しい球場ができること自体、なかなか経験できることではない。自分から目標を話すことでのプレッシャーもありますが、口に出していけばなれると思う。開幕投手は2023年だけでいい。後は開幕3戦目とかでもいいので、再来年だけはやりたいです」
18年にSNSを通して新球場建設のニュースを目にした。「縁があればいいな」。その思いが通じ、日本ハムに入団。昨年12月の新入団選手発表会見では建設地を訪れた。
「北海道で生まれて育って、北海道のチームに入れたぼくは恵まれている。一緒に球場を造り上げるみたいな気持ちもあります。去年、見た時は形が漠然としていましたが、今は球場全体の形も見えてきて、どんどん実感が湧いています」
先月30日には「建設地バーチャルツアー」にゲストとして登場。現在の工事の進展状況を映像で見ることができた。
「座席も工夫されていて、どこから見てもプレーが見やすいし、迫力がある。野球を知らなくても見に来ると、すごく興味が出ると思う。メインの入り口に立てば球場全体が見渡せる。ダンスイベントができるホールもあるそうです」
ホームチームのベンチは一塁側。選手が長い時間を過ごすロッカーには、こだわりが詰まっているという。
「ロッカールームが円形になっていて、丸い部屋からいろんなところにつながっているそうです。『思いは一つ』がコンセプト。柱が一本もなくて、見えないところがない。みんなが同じところを見ることができると聞きました」
完成予定図を見ながら気持ちは高まるばかり。真っさらなマウンドに立つイメージは、すでにできている。(終わり)
「タイトル総なめ」苫駒大で再出発
駒大苫小牧高、苫駒大出身の伊藤にとって、〝第2の故郷〟苫小牧にあるとましんスタジアムは特別な場所だ。「7年間ですから。一番、思い出深いですかね」としみじみと語る。
高校卒業後、駒大に進学。1年秋に中退を決意し、苫駒大に再入学した。「(駒沢)大学を辞めて帰ってくると、きれいになっていました」。大規模改修工事により両翼が拡張され、さらに電光掲示板を備えた球場に生まれ変わっていた。
規定により1年間、公式戦には出場できなかったが、2年春にリーグ戦出場解禁。同球場で行われた開幕戦の函教大戦で、10者連続三振を含む1安打完封勝利を挙げた。その春は6勝0敗と圧巻の成績でチームを優勝に導いた。
「(2年春に)優勝した時の記憶が強いです。タイトルを総なめしました」。最優秀投手賞に加え、ベストナイン、MVPを受賞。人生初の胴上げも味わった。その後、全日本大学野球選手権での活躍が認められ、大学日本代表入り。苫小牧・とましんでの好投が、プロへの道を切り開いた。
■プロフィール
伊藤 大海(いとう・ひろみ) 1997年8月31日、鹿部町生まれ。鹿部小2年時に鹿部クラップーズで野球を始め、鹿部中では函館東シニアに所属。駒大苫小牧高に進学し、2年春のセンバツ甲子園に出場した。駒大を退学し、苫駒大に再入学。20年ドラフト1位で日本ハムに入団し、今季は10勝9敗、防御率2.90の好成績を残してパ・リーグ新人特別賞に選出された。今夏の東京五輪では侍ジャパンの一員として金メダル獲得に貢献。176㌢、82㌔。右投げ、左打ち。家族は両親と姉、弟。