≪三上GMインタビュー㊤≫何かを捨てないと何かに集中できない
「人数」を捨て少数精鋭でJ1上位狙い続ける
北海道コンサドーレ札幌の三上大勝GM(50)がこのほど、道新スポーツのインタビューに応じた。ミハイロ・ペトロビッチ監督(64)体制で臨んだ4年目シーズンの評価、2年連続となったエースの流出やコロナ禍でのクラブ経営などについて語り尽くした。きょう29日から2回に分けて掲載する。
(聞き手・石栗賢)
タイトル奪取には戦略が必要 戦える18人揃える
―今季を振り返って
「ここ数年、(試合の中で)積み上げてきたものを表現できる時間が非常に増えてきた。一方で結果に関しては、良い内容なのに負けてしまうゲームがまだ多い。チームとして、しぶとく勝ち点1を取っていかなければ、最低限の目標である1桁順位は難しいということを改めて気付かされた」
―シーズン終盤は負けないことを意識して戦った
「ラスト5試合ぐらいから取り組んだ。ただ、選手への伝え方によっては、自分たちが積み上げてきたものが影を薄めてしまう。プラスに考えれば、『バランス良く戦っている』ということだが、消極的になってしまう部分も垣間見えた。チームとして工夫しなければならない」
―2020年には鈴木武蔵、21年にはアンデルソン・ロペスと、2年連続で夏にエースが引き抜かれたが、今季は失速しなかった
「Aロペスは間違いなく大きな柱で、多くの得点を取ってくれた。それでも失速しなかった要因として、一番大きかったのはワイド(WB)の選手が得点に絡めるようになってきたこと。青木や菅、金子、ルーカスの成長が大きかった」
―Aロペスの移籍金を大きな補強には使わなかった
「一つはAロペスがいなくなっても、新たな選手の成長で1桁順位を十分狙えると判断した。もう一つは、コロナ禍でのクラブ全体の経営を考えて。今季も赤字は間違いないが、想定の50%以下に抑えられる。戦力とクラブ経営を両輪で考えての判断だった」
―コロナ禍での外国人補強は難しいか
「それは率直に感じている。普段から、現地に見に行かないクラブもあるが、うちは基本的には選手を直接、視察するスタイル。プレーや練習、マインド、ご家族の日本に対する考えまでリサーチして獲得してきた。クラブスタッフが現地に行って直接選手とコミュニケーションを取れないこの1年半は、非常に難しかった」
―近年、少数精鋭のチーム編成が続いている。来季も継続か
「あと数年は、このような編成になる。J1で安定した戦いをして、1桁順位という目標を狙い続ける。タイトルを獲るには『戦略』が絶対的に必要で、『やらないこと』を決めることが大切。何かを捨てないと、何かに集中できない。全てに集中できる体力があれば、ぜひやりたいが、現状、われわれのクラブはそうではない。今の札幌では“人数”は思い切って捨てるもの。まずは18人、しっかり戦える選手をどれだけ揃えられるかが重要」
■プロフィール
三上 大勝 (みかみ・ひろかつ) 1971年9月17日生まれ、室蘭市生出身。選手としては室蘭大谷高(現道大谷室蘭高)、札大を経て、94年からNEC山形で2年間プレー。現役引退後はモンテディオ山形の設立に携わり、99年7月から北海道フットボールクラブ事業部へ。00年から強化部スカウト担当、強化担当、強化部長を経て、13年に現職のGMに就任。14年からは一般社団法人コンサドーレ北海道スポーツクラブ代表理事も務める。