稲葉GMチームに求める3つの公約 ビッグボスとチーム再建へ
日本ハムのゼネラルマネジャー(GM)に就任した侍ジャパン前監督の稲葉篤紀氏(49)が本紙の新春インタビューに応じた。3年連続Bクラスから再建を託され、編成トップの要職を任された。共闘するビッグボス・新庄剛志監督(49)との絆は強い。新体制で挑む2022年。実現を目指す三つの公約を掲げてもらった。(聞き手・榎本真之)
一.リーダーをつくる
現状、中心的な役割を担う人材を増やす必要があると考えている。自らの現役時代に触れ、構想の一端を明かした。
「僕がファイターズでキャプテンになったのは36歳。隣にはマック(金子誠)がいて建山がいて。(武田)久も。投手と野手が、気兼ねなく話ができる。若いダルビッシュ投手に声を掛け『一緒にメシ食いにいこう』と誘ったり。投打の中心メンバーがタッグを組めば、まとまると思う」
すでにリーダーはいるが、彼らを見習い、追随する選手を求めている。柱が増えることで、土台はより強固になる。
「宮西投手は経験もあって、後輩たちにどんどん意見を伝えている。金子投手も誰かが困っていたら、ポッとアドバイスができる。それは一つの資質です。野手は近藤選手がいます。若いうちは自分のことで精一杯なので酷ですが、自然とそういう選手が出てくれば」
二.スカウトと育成で強化
スカウトの眼力と首脳陣の指導力を信じ、ドラフトで獲得した選手をベースに戦う。理念を変えず、再建につなげる。
「昨年のヤクルトを見ても、外国人野手2人はここぞというときに頼りになりますし、補強は大切かもしれません。ですが、僕はドラフトで獲ってきた選手をまず、育てたい。今年は伊藤コーチが育成コーディネーターを兼任します。アナリスト、トレーナーを含めてみんなで育成します」
秋季キャンプなど現場を視察し、指導も買って出た。芽が出ていない若手も多いが、磨けば光る原石だと、確信した。
「みんな、考えがしっかりしていますよね。もちろん今年も勝ちにいくのですが、3年後、5年後を迎えたときに、若い選手が経験を積んで出てくることになるので、すごく楽しみです」
三.12球団一魅力的なチームに
勝つこと以外にも重要な役割がある。魅力を高めること。選手が誇りを持ち、ファンがひかれるチームを理想とする。
「日本一を目指すのは当たり前ですが、結果だけではなく、12球団一になりたい。選手は大きなエネルギーを持っています。どれだけみなさんを元気にできるか。ビッグボスが注目されますが、実行するのは選手です」
北海道移転直後に味わった感動を再び、選手、ファンと分かち合いたい|。そのために、大役を引き受けた。
「選手がどれだけ躍動するか。ポテンシャルは全員が持っています。北海道を元気にするんだ、という気持ちが集まれば、すごいチームになる。そのためには責任と覚悟が必要。熱い戦いをしていきます!」
「新」庄ビッグボスと「新」たなチームづくり
1学年上の新庄監督から現役時代と同じく「アッちゃん」と呼ばれている。「ジーエム」と呼ばれるよりも、堅苦しさがなく、うれしいそうだ。対して稲葉GMは、現役当時の「ツーさん」ではなく、「カントク」でもなく、本人の希望に沿って「ビッグボス」と呼んでいる。
実は人知れず、苦労があるという。「違和感ありますよ。違和感だらけですよ。そもそも『ビッグボス』って言いづらいですからね。カントクとは違う。これは、慣れていかないといけないから」。会話の途中でかみそうになり、ヒヤヒヤすることもあるようだ。
普段から、パフォーマンスを含め、斬新な発想に驚かされている。内容が過激で「それはちょっと考えましょうか」と止めに入ることも。ただ、指揮官への信頼は揺らがない。「私たちがワクワクするということは、見ている方はもっとワクワクするんじゃないですか。楽しみにしていてください」
自ら選択した今年の漢字は、監督の名前にちなんで「新」。フロントと現場の力を結集し、生まれ変わろうとするファイターズを支えていく。