上沢 新年の誓い 絶対エース確立で生涯F貫く
エースが新年の誓い―。日本ハム・上沢直之投手(27)が、本紙のインタビューに応じ、『生涯ファイターズ』を宣言した。昨シーズン中に本拠地のある札幌へ引っ越し。新庄剛志監督(49)の下、新体制となるプロ11年目の今季は、投手陣の柱として不動の地位を『確立』してみせる。(取材構成・中田愛沙美)
今季の抱負を問われると、上沢は色紙に力強く『確立』としたためた。プロ11年目を迎え、チームに対する愛着は日に日に高まっているという。
「ずっとファイターズにいたいという思いはあります。自分の立場をチーム内で『確立』させて、ぼくの存在が『確立』されるよう今年は成績を残したいです」
昨シーズン中に家族と共に札幌へ移住した。これまで北海道の冬を乗り切れるか不安でちゅうちょしていたが、先輩の言葉がきっかけだった。
「家族との時間を長く過ごしたいし、シーズンの半分、家にいることができるこっちの方がいいのかな。金子(千尋)さんにも『所属している球団の本拠地に住むことは大事なことだよ』と言われて、そうだよなと思いました」
ナイターの試合前には、2歳の長女と札幌・円山公園を散歩するのが日課となった。自然と緑豊かなこの地に長く住み続けるためには、新庄新体制でしっかり結果を残すことが求められる。
「チームではおじさんというか、ベテランの域に達しています。ぼくとかは絶対に成績を残さないといけないし、やらないといけない。今年はプレッシャーの方が大きいです」
昨季はチーム最多の12勝をマークし、防御率2・81。今季はさらなるキャリアハイを目指し、昨季の投球回数160回1/3を大きく上回りたい。
「180イニング投げることと、防御率しか考えていないです。勝ち星はコントロールできないので、自分でコントロールできるところだけする。そうすれば勝手に白星はついてくると思っています」
昨季は24試合に登板して、21試合でクオリティースタート(6回以上、自責3以下、QS)を達成。QS率(87・5%)はトップのオリックス・山本(88・5%)に次ぐ2位の数字だった。
「毎試合、長いイニングを投げて、7回2失点くらいに抑えられたらいい。完封、完封とかはできないけれど、『試合をつくって、チームが勝てるチャンスを持ってくるよね』という評価を受ければ、ぼくの存在価値も上がってくるかなと思います」
大きな目標は言わない。なぜなら、メジャーで二刀流として活躍する元チームメート・大谷翔平の練習や私生活を間近で見ていて気付いたからだ。
「後輩だけどすごい選手はすごい。翔平のようにはなれないし、派手なピッチングができなくてもいい。能力がそこまで高くなくても、自分のできることで勝負していきたいと思います」
地道にコツコツと信頼を積み上げてきた10年間。派手さはなくたって、上沢はチームに欠かせぬ存在であり続ける。
ドラフト下位から億プレーヤーに
いつだって自然体なのが上沢の魅力だ。実績を残し、エースと称されることが多いが「自分でエースと言いたくない」と謙虚に語る。
後輩の伊藤が、そんな右腕の登板当日の様子について語っていた。「きょう投げるの誰だっけ? と感じさせるほどの雰囲気です。普段から話が面白いんですけど、当日は倍面白い」。周囲が驚くほどリラックスしているそうで、本人は「ピリピリするのが疲れるので、普通に生活しているだけ」とあっけらかんと話す。
ドラフト6位指名から、今季は1億円プレーヤーの仲間入り。「年俸450万円からスタート。まだ、実感が湧かない」。2度の大けがを乗り越えて、一流選手の証しである年俸を手に入れた。
17年に結婚した愛妻と交わした「1億に届いたらプレゼントを買ってあげる」という約束を果たした。何を贈ったかは秘密だというが「簡単に手に入らないものです。実は昨季の開幕前にあげていたので、1億にいかなかったら質屋に行くところでした」と笑う。
10年かけてたどりついた大台。これからも上沢らしく、おおらかにチームを引っ張ってくれるだろう。