コンサドーレ
2022/01/10 14:27

大塚フィジカルコーチ GPS端末導入の先駆け

トレーニング中、大塚コーチ(左端)は選手たちから目を離さない

 指揮5年目を迎えるミハイロ・ペトロビッチ監督(64)を陰で支える男がいる。大塚俊介フィジカルコーチ(39)。データを用いて選手のコンディションをきめ細かく管理し、負荷の高い戦術をサポートする。Jクラブの中で、真っ先に着手した先鋭的な取り組みに迫った。

ミシャサッカー支えるクラブの頭脳

 コンディション調整を担当する大塚コーチの1日は「ピッチにいるより、デスクワークの方が長い」という。シーズン中は毎日3時間以上、取得したデータの分析が日課だ。「統計はもはや趣味みたいなもの」と苦労を感じさせないが、研究者さながらの努力でチームを支えている。
 転機は2016年の開幕前。衛星利用測位システム(GPS)を扱うカタパルト社の営業マンがキャンプ地を訪れた。走行距離やスプリント回数を計測する端末の売り込みだった。
 選手全員分を用意するには「1年間で車が1台買えるくらい」のレンタル料が必要で、当時Jリーグでは全く普及していなかった高価な機材だ。導入は難しいと思いながらも三上大勝GM(50)に相談すると、快諾を得た。そこから大塚コーチの試行錯誤が始まった。
 試合のランニング強度を正確に把握し、1週間の練習を組み立てる。「監督のメニューで足りない部分を補う。試合と同等もしくは高い負荷をかけ、コンディションの維持、向上に努めている」。取得したデータは着実に積み上がり、試合2日前は軽めに、前日は神経系の刺激を入れるなど、徐々に洗練された。
 選手には毎日「練習がどれくらいキツく感じたか」主観的なアンケートを取り、個別に強度を調整する。“守備範囲”はGPSにとどまらず、血液検査の結果から睡眠や栄養面の助言も行う。多面的なアプローチで、けがのリスクを減らす。
 緻密な分析に手応えを得ながらも「積極性や身体のキレは数字には出ない。あくまで一つのツール」と大塚コーチ。名将のチームづくりに、最先端の統計を肉付けする。勝利の確率を1%でも高めるため、裏方も研さんを続けている。(石栗賢)

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