夏季スポーツ
≪記者コラム≫ 福島 忘れられない南部記念陸上
あれから、もう14年…。福島さんといえば、2008年北京五輪代表の座を射止めた、南部記念陸上でのシンデレラストーリーが忘れられない。
女子100メートルを11秒49で初優勝。しかし目標のA標準(11秒32)を突破できなかったため、本人は「ちょっと残念です。タイムが…」と表情を曇らせた。しかし、全レース終了後の午後5時、日本陸連が発表した代表の資料には、堂々福島の名が載っていた。
ここからが大変。報道陣は色めき立ち、20歳のニューヒロインの喜びの声を聞こう、と大捜索が始まった。監督に電話をかけたり、競技場の駐車場へ走っていったり。危なかった。ドーピング検査を終え、会場を引き揚げようとしているところを、記者同士で協力して何とかつかまえた。
「びっくりした。冗談だと思いました」。あのほんわかした笑顔に、取材しているこちらが「本当にこの子が、あんなに速く走っていたのか」とギャップに驚いた。そして翌日、福島の快挙は無事に道新スポーツの1面を飾った。函館千代台の長い1日だった。
走ることが大好きだった福島さん。走る感覚を言葉や理論で説明させられる取材は、苦手だったかもしれない。しつこく質問してごめんなさい。本当にお疲れさまでした。
(2008年北京五輪担当・木村理恵子)