美帆1500銀 「悔しい思いだけ残った」
【北京(中国)7日=島山知房】またもや女王の壁に阻まれた。スピードスケートは女子1500メートルが行われ、高木美帆(27、日体大職、帯南商高出)が1分53秒72で銀メダルを獲得。連覇を果たしたオランダのイレイン・ブスト(35)にあと一歩及ばなかったが、冬季五輪の日本勢で単独最多の4つ目のメダルを獲得した。
平昌から4年 またもブストの壁
金メダルは近いようで遠かった。ゴール後、タイムを確認した高木美は、天を見上げてリンクを一周した。今季、国内外無敗で迎えた1500メートル。まさかの敗戦にショックを隠せなかった。
中学3年、15歳で出場した10年バンクーバー大会。0・2秒差の銀メダルだった18年平昌大会。いずれも表彰台の頂点に立ったのは、五輪レコードをマークして個人種目5個目の金メダルを獲得したブストだった。
「悔しい思いだけが残った。前回はメダルを獲れたことのうれしさが入り交じった。今回は金メダルを逃した悔しさがすごい強い。自分の実力が彼女より劣っていた」と敗北を認めた。
惜しくも金メダルを逃した平昌大会の後、次の五輪を目指すべきか否か、葛藤する自身の気持ちと向き合いながら日々を過ごしてきた。
ソチ大会の代表落選から競技に全てをささげてきたからこそ、すぐに北京大会に向けて歩むことはできなかった。「平昌までの4年間を越える覚悟、時間を過ごさないと、北京に向かっていっても(結果を残せない)と理解はしていた。でも、理解している部分と気持ちがマッチしなかった」と振り返る。
苦悩の日々は2年ほど続いた。それでも、月日を重ねるごとに、こみ上げてきたのは「個人の金メダルを獲れていない」という心残り。「五輪で戦いたいという気持ちが芽生えてきた」。コロナ禍で国際大会に出場できない異例のシーズンも乗り越え、着実に進化を遂げた。
そして今季W杯3戦3勝で勢いに乗り、もう一度、勝負を挑んだ。だが、大一番にピークを合わせてきた宿敵にまたも敗れた。
5種目出場という過酷な挑戦を選択した今大会。初出場の500メートル、2連覇を狙う団体追い抜き、前回銅メダルの1000メートルと、この雪辱を果たす機会は残されている。
「残りのレースも懸ける思いは変わらない。気持ちを修正して、まずは最初のパシュートに向かいたい」。このままでは終わらない。残り種目に全力を尽くす。
高木 美帆(たかぎ・みほ) 1994年5月22日、幕別町生まれ。幕別札内中3年時にバンクーバー五輪に出場。帯南商高から日体大に進学した。18年平昌五輪では1000メートル銅、1500メートル銀、団体追い抜きで金メダルを獲得。18年世界オールラウンド選手権では総合優勝を果たした。家族は両親と兄、日本代表の姉・菜那。164センチ、58キロ。
■佐藤健闘4位
メダルにあと一歩だけ届かなかった。佐藤綾乃(25、ANA、釧北陽高出)が1分54秒92で4位入賞。表彰台(3位)に0・1秒迫った。それでも満足げに笑顔を輝かせた。
「もちろんメダルを獲れなかったのは悔しいです。悔いが残らなかったと言ったら、うそになる。でもそれよりもはるかに楽しいレースでした。こんな大きな舞台で楽しめた。スケート人生の大きな宝物」と声を弾ませた。
“夢舞台”は続く。今大会、まだまだ出場種目を残している。中でも団体追い抜きでは2大会連続の金メダルを狙う。「断然、力がついてきている。私が引っ張っていくんだくらいの気持ちで」。25歳は本命の1500メートルで自信を深めた。(共同)
◆1分55秒34で8位入賞した高木菜那(29、日本電産サンキョー―帯南商高) 「悪くはなかったので、最後の1周でしっかり戦えれば、3位争いができるところにいたと思う。悔いが残るレースになってしまった。団体追い抜きでは頑張りたい。この種目で妹に金メダルを獲ってほしかった」