冬季スポーツ
2022/02/14 15:50

森重 天国の母に捧げる銅メダル

銅メダル獲得!! レース後、日の丸を掲げ、満面の笑みを浮かべる森重。自身初の五輪舞台で輝きを放った(撮影・野沢俊介)

■スピードスケート 男子500メートル

【北京(中国)12日=島山知房】亡き母にささげる銅メダルだ。スピードスケート男子500メートルが行われ、別海町出身の森重航(専大3年、別海上風連中出)が34秒49で銅メダルを獲得。日本勢として同種目では2010年バンクーバー大会以来3大会ぶりに表彰台に上がった。

3大会ぶり表彰台「自分の力は出し切れた」

 淡々とレースを振り返っていた森重が少しうつむき、言葉をじっくりと選んだ。「こういう結果を届けられて、喜んでいるんじゃないかな。帰ったら、しっかりと報告したい」。19年7月に他界した母・俊恵さんの姿を思い浮かべながら、語った。

 地元中国の高亭宇が34秒32の五輪レコードをマークするなど、好記録が連発した500メートル。「2本目のスタートは緊張感もあって思うようにいかなかった」と同走者のフライングが影響し、最初の100メートルは全体5位と出遅れた。
 それでも、持ち味のコーナーワークで差を詰めてトップとの差はわずか0秒17。98年長野大会の清水宏保以来、日本勢24年ぶりとなる金メダルには届かなかった。だが、レース後は充実の表情を浮かべた。

 「レースが終わった段階ではもうちょっと(足りない)かなというタイムだったけど、(3位が)決まった瞬間はうれしかった。自分の力は出し切れたので悔いはないです」と喜んだ。

 13年に乳がんを発症し、7年間病と闘った俊恵さん。体調が悪くても息子のレースには足を運んでいたが、病状は回復しなかった。入退院を繰り返して治療を続けるも、がんが転移。亡くなる1カ月前には「わた(航)の誕生日まで生きる」と、父の誠さん(68)と約束していた。

 迎えた誕生日の7月17日。すでに会話すらできない状態だった俊恵さん。だが、誠さんが耳元に携帯電話を持っていくと、気力で言葉を絞り出した。「スケート頑張って」。かわいい末っ子に生前最後の言葉を残し、4日後、57歳で天国へ旅立った。

 母からのエールを胸に森重は今季、飛躍のシーズンを迎えた。昨年10月の全日本距離別選手権で当時2強と言われていた新浜、村上を下して初優勝。W杯でも初勝利を挙げ、一気に五輪の表彰台まで上り詰めた。

 まだ大学3年生。伸び盛りの21歳だ。「去年の自分からは想像できないですけど、今年1年きつい練習をやってきて結果にあらわれた。4年後、8年後も(五輪を)目指していこうという気持ちになっている」。日本の短距離界を引っ張る真のエースになってこの舞台に戻ってくる。

■プロフィール 森重 航(もりしげ・わたる)2000年7月17日、別海町出身。別海上風連小2年時に競技を始める。別海上風連中から山形中央高へ進学。同2年時の全国高校選抜で短距離2冠。専大1年時のジュニアW杯(オランダ)で500メートル優勝。今季からナショナルチームで活動。

メダル候補が力出し切れず…村上8位 新浜は20位

 メダル候補だった村上右磨(29、高堂建設)は8位、新浜立也(25、高崎健康福祉大職、釧商高出)は20位だった。

 ロケットスタートが持ち味の村上は「構えてから(スタート合図が)鳴るまでがちょっと長かった」。タイミングが合わず、わずかに出遅れた。9秒40台を想定していた100メートルを9秒54で通過し、その後もタイムを伸ばすことができなかった。

 新浜はスタート直後にバランスを崩した。その後に挽回したものの、スピードに乗り切れなかったミスが最後まで響いた。「ベストレースができなかった。未熟な部分があった」と唇をかんだ。

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