泣けた笑えた!ロコ・ソラーレ誇りの銀に藤沢「金メダル、夢ではなくなった」
英国に3―10完敗もカーリング日本初2大会連続メダル
■カーリング女子決勝
【北京(中国)20日=島山知房】胸を張っていい、殊勲の銀メダルだ。カーリングは女子決勝が行われ、日本代表のロコ・ソラーレは英国に3―10で敗戦。惜しくも頂点には届かなかったが、日本勢で初めて決勝進出を果たし、2大会連続でメダルを獲得した。この日の夜には閉会式が行われ、17日間の熱戦が幕を閉じた。
国内予選は連敗スタート 崖っぷちから何度も這い上がった
4年前たどり着けなかった舞台に立てた喜び、金メダルを獲得できなかった悔しさ、表彰台ではさまざまな感情が入り交じった。メダルセレモニーでは笑顔で銀メダルを受け取った5人。会場に英国国歌が流れると、ほおを涙が伝った。
決勝戦独特の雰囲気に浮足立ち、正確なショットは鳴りを潜めた。狙った位置からわずかに石がずれるミスが重なり、3点ビハインドで前半を折り返した。後半も前回大会4位の雪辱に燃える英国のショットが勝負どころで次々と決まり、劣勢ムードをはね返すことができず。1エンドを残して敗戦を認めた。
平昌大会の活躍で一躍全国区になった。マイナー競技に注目が集まることを喜んだが、メンバーを苦しめたのは銅メダリストの重圧。世間からは当たり前に勝つことを期待され、20年日本選手権で準優勝に終わると、敗戦が大きく報じられることもあった。
その後も戦績は安定せず、5戦3勝方式で行われた昨年9月の日本代表決定戦では北海道銀行に2連敗スタート。2大会連続の五輪出場に暗雲が立ちこめたが、この崖っぷちの状況こそ「ロコ・ソラーレ」の姿を見つめ直すきっかけとなった。
「格好つけていた」と振り返るサードの吉田知那美(30)。泣いて、笑って、感情を爆発させるプレースタイルを取り戻すとともに、緊張、不安といった自分たちの悩みを打ち明ける「弱さの情報公開」を始めた。互いの考えを深く理解することで結束が高まり、その後3連勝で代表権を獲得した。
今大会も1次リーグで5勝4敗。最後にスイスに負け、絶体絶命の状況から一時は予選敗退を覚悟した。当該チームに大会規定のわずかな差で上回り、準決勝進出。どん底からはい上がった。準決勝のスイス戦は吹っ切れたように勝利し、決勝まで駒を進めた。
銀メダル獲得は日本カーリング界の歴史を塗り替える快挙だ。一方、頂点に立てなかったことで“宿題”も残った。藤沢は「五輪で金メダルを獲ることが笑い話ではない、夢ではなくなった。手の届くところまできた金メダルを触ることができなかったので、今後のことを考えながら次の4年間を過ごしたい」。夢の世界一へ。再び挑戦が始まった。
吉田夕&鈴木「クレイジースイーパーズ」相棒に感謝
リード・吉田夕梨花(28)とセカンド・鈴木夕湖(30)の通称「クレイジースイーパーズ」が、相棒の支えに感謝した。
平昌大会後に「フリーガードゾーンルール」が改正され、両チーム4投目までガードストーンをはじき出すことができなくなった。戦略のカギを握る前半4投でより正確性が求められるようになり、リードとセカンドの重要度は増した。
責任が増し、心が折れることもあったが、その時はお互いの存在が支えになった。吉田夕は「夕湖さんがいなければ(競技を)やっていない」、鈴木も「夕梨花がつらいときに支えてくれた。ベストパートナー」と思いを伝え、号泣。激しいスイープで、ひどくほつれたユニホームが2人の活躍を物語っていた。
精神的支柱の石崎が葛西超えの43歳でメダル獲得
リザーブの石崎琴美が43歳1カ月でメダルを獲得。2014年ソチ大会で2つのメダルを手にしたスキージャンプ・葛西紀明(49、土屋ホーム)の41歳8カ月を抜き、冬季五輪の日本勢最年長メダリストとなった。出番はなかったが、精神的支柱としてメンバーを支え、今大会中は深夜に石の特徴を確かめる「ナイトプラクティス」や、戦略面で勝利に貢献。藤沢から銀メダルをかけられ「みんなのおかげでいろんな体験をさせてもらって、メダルまでもらって、本当に本当に幸せです」と声を弾ませた。