《人ほっとコーナー》沢田京介 5度のお預け乗り越えた新チャンピオン
念願叶った
不屈の男がついに日本の頂点に立った。今月上旬に行われた日本バンタム級王座決定戦。同級2位の大嶋剣心(26、帝拳)を5回負傷判定で下し、念願の新王者となった。「当然、喜びもありました。それ以上に安堵感ですかね。ホッとしました」と息をついた。
ベルトの重みを誰よりも知っている。同級1位に登り詰め、初の王座挑戦が決まったのは2019年10月。翌20年4月にタイトルマッチが組まれた。そこから予期せぬ事態に次々と襲われた。
コロナ禍での度重なる延期、王者の引退。昨年7月に王座決定戦という形でやっとゴングが鳴ったが、負傷判定によるドローで勝敗はつかなかった。ダウンを奪いながらあと一歩のところで勝利を逃した。
その再戦も相手の計量キャンセルで消滅した。実に5度の“お預け”の末に今回、チャンピオンとなった。「くじけそうな時もありました。自分一人だったら、ここまでたどり着けなかった。家族や周りの方々に支えられたおかげです」と声を弾ませる。
ただ、すんなりいかなかったのも事実だ。3、4回に両側頭部と右まぶたを切った。その結果、負傷判定となった。「前に引き分けがあったのでヒヤヒヤでした」と振り返ったが、2回にはしっかりダウンを奪い、力の差を見せつけていた。
家族の喜びを目の当たりにし、実感が湧いてきた。6歳の長男・直央(なお)くんが保育園で誇らしげにパパの話をしていることを知った。「踏ん張ってきて良かった」と心から思う。
すでにトレーニングを再開させている。「防衛を重ねて実力を証明したい。さらに上を目指したい」。東洋太平洋、さらには世界へ。まだまだリングに上がり続ける。
■プロフィール 沢田 京介(さわだ・きょうすけ)1988年2月16日、石狩市生まれ。中学3年の春、札幌市のK&Kボクシングクラブで競技を始める。札工高3年時に全国選抜、インターハイでともに準優勝(ライトフライ級)。日大に進学し、3年時には国体でベスト4(バンタム級)。プロデビューは2013年4月。プロ19戦15勝(6KO)2分2敗。右ボクサーファイター。167センチ53キロ。血液型AB。家族は妻と2男1女。