クラーク延長に散る…2番手・辻田が聖地に刻んだ11奪三振
甲子園初勝利はお預け 神宮のリベンジとはならなかった
■センバツ甲子園第1日・1回戦 クラーク2―3x九州国際大付(19日、阪神甲子園球場)
初出場のクラークは1回戦で九州国際大付(福岡)と対戦し、延長十回の激闘の末に2―3でサヨナラ負けを喫した。昨秋の明治神宮大会1回戦で敗れた相手へのリベンジと、甲子園初勝利はお預け。二回途中から登板した右腕・辻田旭輝投手(3年)は、最速143キロの直球を武器に8回1/3を投げて11奪三振の力投。相手エースの香西一希投手(3年)と息詰まる投手戦を繰り広げた。
涙のち晴れ晴れ「楽しくて楽しくて仕方がなかった」
アルプススタンドの応援を背に、クラークの辻田が死闘を演じた。延長十回1死一、三塁、最後は左打者の外角に浮いた失投で左犠飛を浴びたが終盤まで球威は衰えなかった。「(相手とは)2回目。絶対に勝ちたかった」と、試合直後には悔し涙を見せたが、「楽しくて楽しくて仕方がなかった」。全国の強豪相手に堂々の投球を見せた。
1―0で迎えた二回1死一、二塁。佐々木啓司監督(66)は「早めの継投は予想していた」と、先発の左腕・山中麟翔投手(3年)に代え、一塁を守っていた辻田をマウンドに送った。「シートノックの時と一回表に肩はつくっていた。練習試合からやってきたので準備はできていた」とスクランブル登板に動揺はなかった。交代直後、3本の安打で逆転を許したが、味方が同点に追い付いた三回以降は一気にギアを上げた。
前日に続く雨で足元の土はぬかり、気温も下がった悪条件。にもかかわらず奪三振ショーは止まらなかった。「甲子園は最初は大きく見えたけど、(打者まで)18・44メートルを投げればいい」と集中。神宮大会の対戦では攻めきれなかった内角を大胆に突いた。「しっかりと直球が低めに投げられて、高めの直球で三振を取ることができた」。三回から九回まではスコアボードにきれいに「0」を並べ、確かな成長の証しを刻んだ。
打線は三回途中から沈黙したものの、守備でエースをもり立てた。神宮大会では2失策が失点に絡んだが、この試合では「特に真輝には助けられた」と辻田が語った通り、九回には先頭打者の難しい飛球を新岡真輝中堅手(3年)がダイビングキャッチ。グラウンドコンディションが悪い中、無失策と最後まで集中力を切らさなかった。
夏への課題は打線の再構築だ。昨秋の神宮大会とは打順がガラっと変わった。佐々木監督は「まだまだ研究の余地が残っている。甲子園に育てていただいた。次が楽しみ」と収穫を得た様子だ。
一躍、全国区の投手に名乗りを上げた辻田は「変化球の精度を上げて、体を強化して、監督の3元号勝利と初勝利を絶対に取りたい」。さらに磨きをかけた投球で聖地に戻るため、北の豪腕は再び一から腕を振る。
チア部「レイヴ」もスタンド応援
クラークのアルプススタンドには控え部員、保護者、生徒ら約1000人が全国から集まった。昨年10月に結成されたチアダンス部「レイヴ」は35人が駆けつけた。札幌白石キャンパスから参加した早坂まりなさん(2年)は「一生に一度あるかないかの経験をさせてもらい光栄でした。夏に向けてもっと練習します」。また、同キャンパスの浜香凜さん(同)は「いろんな人の思いが詰まっているのを感じました。また甲子園に連れて来てください」と期待を込めた。
深川キャンパスではPV実施
深川キャンパスの体育館では女子バレーボール部を中心とした約20人がパブリックビューイングで応援した。同部の久保花音主将(1年)は「辻田投手の力強い投球が印象的でした。負けてしまいましたが、粘り強い試合を見せてもらい感動しました。守備が勝負の要になるところがバレーと共通している。野球部は夏の甲子園、バレー部は春高を一緒に目指していきたい」と誓った。
■校長・OBからもねぎらいの声
◆冒険家でクラーク高の三浦雄一郎校長(89) 「最後まで手に汗握る素晴らしい試合でした。粘って粘って、粘り抜く戦いぶりはまさに、あっぱれでした。これだけの試合ができるのですから、次のチャンスは必ずつかめると確信しています」
◆2016年夏の甲子園に出場したOBの福田健悟さん(23) 「こうしてスタンドから見る後輩たちの姿は頼もしかった。夏は甲子園初勝利を監督と一緒につかんでもらいたい」
◆同OBの伊藤将司さん(23) 「すごい。僕たちの時より圧倒的に強い。スタンドから後輩の姿を見られたのはうれしかった。残念ですけど、夏に向かってまた力をつけて、今度は甲子園初勝利をつかんで、監督に3元号勝利をプレゼントしてほしい」