大学・社会人野球
2022/03/29 14:10

《人ほっとコーナー》伊藤優希 社会人野球トランシス加入の元駒苫戦士

先輩・本間監督からオファー 病床の母に元気なプレー届ける

 家族や先輩との不思議な縁が重なり、再び故郷でプレーすることになった。「都市対抗に出たい。企業チームの選手にも負けない結果を出したい」と心に決め、5月のシーズン開幕へ向けて着々と準備を進めている。

 各世代の代表を経験し、プロ入りを目指していた北海道ガス2年目の2020年。「スカウトからもいい話が来ていた」。しかし突然、原因不明のめまいや、立ちくらみが伊藤を襲った。「体重が1カ月で10キロも落ちた。正直、野球をやめようと思っていた」と、野球人生を明るく照らしていた光に影が差し込んだ。

 それでも現役続行へ踏み切った。背中を押したのは父・真介さん(59)の「上を目指すには若いうちしかない」という言葉だった。「もう1年、25歳までしっかり後悔のないようにやっていこう」と、トライアウトを経て、独立リーグの徳島に入団した。

 ところが昨年8月、道内在住の母・美由起さん(55)が病床に伏した。「親孝行がしたい。もう一回、北海道で野球をやって元気なところを見せられたら」。伊藤のプレーを楽しみにしていた母のために独立Lを諦め、退団が頭をよぎった。

 そんな矢先の同12月、駒大苫小牧高、亜大の先輩で今春、道内の社会人野球クラブチームであるトランシスの監督に就任した本間篤史さん(33)からオファーを受けた。「気持ち的には即答だった」。徳島での職場に一区切りをつけた今年2月下旬、北海道に戻った。

 現在のチームメートからは亜大や徳島時代の経験談やアドバイスなどを求められるという。「厳しい環境でやってきた自負もある。若い選手が多いので、いい意味で利用してほしい」と、還元することを惜しまない。
 応援してくれる母のため、必要としてくれた先輩、チームのため、グラウンドで全力を尽くす。

■プロフィール

伊藤 優希(いとう・ゆうき) 1996年8月31日、苫小牧市生まれ。中学時代は苫小牧クラブでプレー。U16日本代表に選出された。駒大苫小牧高では、3年春の選抜甲子園に現日本ハムの伊藤大海投手(当時2年)とともに「1番・中堅」で出場。U18日本代表1次候補にも選出された。亜大を経て2019年に北海道ガスに入社。21年は独立リーグの徳島インディゴソックスに所属。今季からトランシスに加入し、北海道建設サービス(千歳)に勤務する。右投げ右打ち。外野手。176センチ、76キロ。50メートル走は5秒8。家族は両親、兄。

関連記事一覧を見る

あわせて読みたい