〝不屈の男〟MF深井一希がたどり着いたコンディション調整法
「今、膝の状態はすごく良い。こればかりは謎で、何回も、何年も寄り添っていろいろ試したけど、何が正解か分からないという感じで。でも今のところは順調」
そう話すMF深井一希の表情からは、今季のコンディションの充実がうかがえる。ここまでリーグ戦5試合、ルヴァン杯2試合、チームの公式戦全試合に出場。先発、途中出場問わず課されたタスクを攻守で確実に遂行している。3月2日のルヴァン杯・柏戦では、反撃ののろしを上げるヘディング弾をたたき込み、それが逆転勝利の呼び水となった。
3度の前十字靱帯(じんたい)断裂など、両膝の大ケガを経験してもなお、ピッチに立つ。勇ましい生きざまは、不屈の男と呼ばれている。今でも古傷のケアには細心の注意を払っており「疲れてきて痛むこともあれば、筋トレの負荷のかけ過ぎで痛めることもある。だからといってやらないと筋力が落ちて痛めるし」。膝の痛みと向き合うことをいつしか「研究」と称するまで突き詰めた。
ピラティス導入で身体を正しい位置へ矯正
あらゆる治療やトレーニングを試し、たどり着いたのはピラティスだ。昨季終盤から導入し、週に2~3回、パーソナルトレーニングを受けている。この取り組みが奏功した。
長年、膝に痛みが出ないことを最優先に日常生活でも神経質になっていたことで、深井の肉体のバランスは少しずつ崩れていた。
「ピラティスをやったら、身体の軸が全くズレていた。足のつく場所も、自分は真っすぐついていると思ったけど、ズレていた。何年も膝の事ばかり考えていて、動かし方もぐちゃぐちゃ。バランスも悪かったんだと思う。ピラティスは身体を正しいポジションに戻すのが目的。それが良い方向に来ているのかもしれない」
迎える4月。札幌は公式戦7試合が組まれている。状態が良いからこそ、過密日程では自分を客観視することを忘れない。
「何度もいろいろと経験してきていること。欲が出て、我慢してでもやろうかなというのは誰しもある。それでうまくいくこともあれば、悪くなってしまうこともある。今年も(監督やトレーナーと)話し合って冷静に見極めていきたい」。幾多の困難を乗り越えた全ての経験が、深井の血肉になっている。
ホーム浦和戦へ臨戦態勢着々
万全の状態で臨む2日のホーム浦和戦。今週のトレーニングを見る限り、深井は2戦連続の先発が濃厚だ。
昨年8月9日の札幌ドーム。自身のJ1通算100試合出場に豪快なメモリアルゴールを決めたのも浦和戦で、見事に主役になってみせた。リーグ戦今季初勝利を懸けた1戦を前に「相手もボランチが起点になるチーム。相手のゴールに近いところでプレーさせて、うまくそこをつぶせればゴールに近いところで良い速攻ができるイメージはある。つぶしに行きたい」。札幌が誇るファイターが、中盤を制圧する。