上沢チームトップタイ9勝 エースの執念8回1失点
■日本ハム3-1西武(16日、メットライフドーム)
エースが3年ぶりの2桁勝利に王手だ! 日本ハムは16日、敵地で西武と対戦し、3―1で快勝した。先発の上沢直之投手(27)は前回登板の反省から攻めの投球へと転じ、8回131球を投げて5安打1失点。打線の援護は3点だったが、少ない点差を八回まで守り切って勝利を呼び込み、チームトップタイの9勝目を挙げた。5位・西武とのカードは1勝1敗1分け。最下位脱出へ、ゲーム差「2」とした。
131球目。上沢は持てる力を振り絞って、腕を振った。渾身の147キロ直球が外角低めに決まり、西武・源田のバットは空を切った。八回2死一、二塁のピンチを切り抜け、エースはほえた。
最後は力で押した。前の打席でナックルカーブを適時三塁打とされていた源田に対し、勝負球は直球を選択。「ああいうところで、あえて真っすぐを投げられたのは良かった」と胸を張った。
前日15日に「ベース板の中で勝負できるようにしたい」と話していたように、序盤から強い球をストライクゾーンに投げ込み、8回5安打1失点の好投を呼び込んだ。「それが良い結果につながっているので。次の試合もベース板で勝負していきたい」
高卒でドラフト6位指名。歴代のエースを務めたダルビッシュや大谷、有原ら“ドラ1組”とは違う道を歩んできた。2年目まで1軍登板はゼロ。当時の上沢を知る加藤2軍投手コーチは「器用でセンスはあったし、いい投手になるとは思ったけど、ここまでは想像できなかった」と素直に驚きを口にする。
チャンスが少ない下位指名だったからこそ、ハングリー精神が養われた。「1軍で投げられるようになってからも、1回の登板を誰よりも大事に、絶対に結果を出すんだという気持ちで臨んでいた」と同コーチ。そんな右腕の姿勢を、今は2軍の若手投手陣に伝えている。
逆に上沢も若手からヒントを得ている。12日ソフトバンク戦で2勝目を挙げた立野の堂々たる投球に刺激を受けた。「どんどんストライク先行で投げているのを見て、思い切って勝負しないといけないなと、改めて若いピッチャーから気付かされた」と、結果を恐れない強い気持ちを取り戻した。
9勝目を挙げ、3年ぶりの2桁勝利に王手をかけた。「1年間投げさせてもらったので、しっかりそこは達成できるように頑張りたい」。背番号63から始まったプロ野球人生は、2度の大きなけがにも見舞われた。何度も立ちふさがる壁を乗り越えた背番号15は、誰もが認めるエースまで成長した。(十島功)