《ヴォレアスV1昇格へのキーマン②》MB後藤 チームの高い壁になる
バレーボールのV2男子で道内クラブ初の優勝を果たしたヴォレアス北海道が、4月9、10日に神奈川・小田原アリーナで行われるVC長野(V1最下位)との入れ替え戦に臨む。2020年はコロナ禍でリーグが打ち切りとなり、入れ替え戦は中止。昨季の入れ替え戦は1勝1敗ながらポイント差で悔し涙をのんだ。三年越しの挑戦となる大一番へ、鍵を握るキーマン3人に意気込みを聞いた。
第2回は、山形県出身のミドルブロッカー(MB)、後藤万澄(25)。選手兼営業マンとしてもチームを支えている異色のプレーヤーだ。
勝負の時を心待ちにする―。
「僕はヒーローになれるポジションじゃないけど、チームにとって大事な存在になりたい」
忘れられない光景がある。昨年2月の練習中に、右足第5中足骨を骨折して戦線離脱。入れ替え戦はスタンドで見守るしかなかった。
「惜しいところまでいきましたけど、力負けしたと感じた。コートに立てなくて、本当に悔しかった」。やり場のない思いをパワーに変え、今季はMB陣の中で最多セット数に出場。確固たるポジションを確立した。
ポジションの役割は、文字通り相手のアタックをブロックすることが一番の仕事だ。エド・クライン監督(40)が今季、MB陣へ与える使命は「1個のシャットアウトよりワンタッチ」。派手なブロックポイントに注目が集まりがちだが、相手のスパイクに指一本でもいいから触れて勢いを殺せば、レシーブにつながる。そこでマイボールになれば、攻撃の起点になる。そのため、確率的にワンタッチが多い方が重要視される。
後藤は今季、チームトップタイとなる330㌢のブロックジャンプ到達点で、自己最多25試合、76セットに出場と、キャリアハイをマークした。「チームでは、グッドタッチがいくつできたか数字に出してもらえる。今季はすごく良かったし、僕に向いていた。僕の武器は動きの速さ。その積み重ねが圧になって、相手が嫌がるんですよね」。入れ替え戦では、V1レベルのアタックに、どこまでついていけるかが勝負の鍵を握る。
山形・米沢中央高ではバリバリの元高校球児だった。大型右腕の後藤は、2年夏に山形県大会で準優勝。目指していた甲子園出場まであと1勝だった。
バレーボールと出会ったのは、3年の県大会1回戦で敗退した夏休みだ。卒業後も、野球の強豪が集う関東の大学に進学が決まっていたが、193㌢の長身を見込まれ、バレー部から助っ人のオファーが届いた。当時、「山形城北高に、今V1のウルフドッグス名古屋にいる高梨健太選手がいて、(対抗するために)駆り出されたんです」。ここで人生が一変した。見学2日目には「こっちの方が絶対に向いている。本能的にこれはやれる」と確信した。
進路もバレーが強い大学に方向転換。当然、周囲は猛反対した。それでも一度決めたらもう止まらなかった。「当時、東北では一番強くて、指導者もいた」と、仙台大のトライアウトを経て、バレーボーラーとしての人生が幕を開けた。
ヴォレアスではクラブの営業の仕事もこなす。チームが掲げる「デュアルキャリア」を実践し、「ファンの方々の気持ちはもちろん、営業としてパートナー企業さんの思いも感じている。その分、ほかの選手よりも力が出たり、ありがたみを身近に感じている自負がある。僕にしかできないことや、僕にしか伝えられないことがある」。
今年こそ悲願の昇格をつかみ取り、チームの仲間とコートの上で思いっきり喜びを爆発させる。